マンチカンは足の短い猫種で北アメリカに起源がある猫の一種です。突然変異によって生まれたとされる足の短いこの猫は世界中で確認されており、1980年代ごろから独特の容姿のかわいらしさから繁殖が行われ人気の猫となっています。足が短いことで有名な犬種のダックスフンドやコーギーは背骨に負担がかかりやすいことからヘルニアなどの病気にかかりやすいです。ダックスやコーギーのように足が短いことが特徴のマンチカンの気を付けたい病気には何があるのでしょう?また、平均寿命はどのくらいなのでしょう。
目次
マンチカンの特徴
マンチカンは足が短い事が特徴の猫です。突然変異によって自然発生的に誕生したと考えられており、足が短いことによる不便などは特にありません。健康状態も普通の猫と変わらず猫の特徴であるジャンプも得意です。足が短くても木に登る事も出来ますし筋肉が発達しているため日常生活に支障を及ぼすといったことはありません。
突然変異で産まれたとされる足の短いマンチカンは新しい品種として様々な猫種の猫と交配が行われてきたという歴史があります。そのため毛色や長さ、柄、目の色といくつか種類があります。暑さ寒さに強いことでも環境を選ばないタフさを持った猫です。
マンチカンは足が短いことが特徴の猫ですが、短い脚の猫を産み出すための危険な繁殖が行われるリスクの高い猫種でもあります。ACCのホームページ内でマンチカンの繁殖に関しては下記のように記述されています。
現在マンチカンの短足同士の交配において胸浅や背骨の湾曲など奇形が出やすい事などの問題があり、国内では一般的に短足同士の交配は禁止となっています(国内独自ルールとなります)。
マンチカンとドメスティックキャットとの交配は遺伝子プールの拡張により奇形発生の減少に寄与し、マンチカンのスタンダード(細身のドメスティックボディー)に近づける上でも効果的であると考えられます。
これらの理由により、2021年11月1日以降の申請分よりアジアキャットクラブ(ACC)へのマンチカンの一胎子申請においてマンチカンとドメスティックキャットの交配が許可されることとなりました。
【マンチカンの規定(TICA)】
TICAの記述によるとマンチカンの成猫の体重は、5~9ポンド(約2~4kg)で小型から中型程度の猫です。
TICA・・・The International Cat Association(純血種およびハウスホールド・ペット(HHP)猫の世界最大の血統登録機関)
ACC・・・ASIA CAT CLUB
マンチカンの性格
見た目の可愛いらしさの他にマンチカンの性格も人気の理由です。足の短い小型の猫がおもちゃを追いかけたり遊んだりする様子がとても愛らしく遊び好きというところも魅力の1つでしょう。
好奇心旺盛で遊び好きであり人に良く懐きます。人と遊ぶことが大好きで、子供や犬などの他のペットとも共に暮らすことができる社交的な猫のため家族に迎えやすい猫と言えるでしょう。家族だけでなく、一人暮らしで猫を飼いたいと考えている人にも飼いやすい猫です。
マンチカンの平均寿命
マンチカンの平均寿命は、10~13年程度のようです。ペットフード協会が発表する「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」による猫の平均寿命は15.66歳のため、他の猫と比較するとマンチカンの平均寿命は短いと感じるかもしれません。ただし、マンチカンでも15歳を超えても元気に暮らす長寿のマンチカンもいます。愛猫にとってストレスのない環境で良好な健康状態で日々を過ごすことができれば我が家のマンチカンがマンチカンの長寿記録を作る事ができるかもしれませんよ。
マンチカンは食欲旺盛な個体が多い猫と言われており、太りやすい猫種です。もともと足が短い体格の猫が肥満になると骨格への負担も大きくなります。また、人間と同じく肥満からくる病気のリスクも増えます。愛猫の健康のためにも猫の体重管理(ボディコンディションスコア)には気を付けてあげましょう。
マンチカンが気を付けたい病気
椎間板ヘルニア
マンチカンの足の短さは突然変異によって自然発生的に産まれたもので障害ではありません。更に、足が短い犬種で有名なダックスやコーギーと比べると猫の背骨は構造が異なるため足が短いために犬にみられるような背骨の問題は生じないとされています。そのため、ヘルニアなどの障害の心配はあまり生じないと言われることもあります。
しかし、既に前項で紹介している通り、マンチカンは食欲旺盛で食べることが大好きなタイプが多いです。可愛い愛嬌で飼い主に食べものをねだったりします。マンチカンはもともと足が短くコロっとした丸みのある体格のため、気が付かないうちに肥満体型になっているようなことがあります。特に現代の家庭で飼育されているマンチカンは注意する必要があります。肥満になると骨格への負担が大きくなることで椎間板ヘルニアのリスクがありますので注意しましょう。
【椎間板ヘルニアの症状】
- 足を引きずる
- 運動しなくなる
- 歩行障害
- 麻痺
- 失禁する
治療法
重度の場合:外科手術
毛球症(もうきゅうしょう)
マンチカンは毛が短い短毛種と毛が長い長毛種がいます。特に毛が長い長毛タイプのマンチカンで気を付けたいのが毛球症です。
猫はグルーミングを行って自分の体をきれいに保っています。グルーミング(毛づくろい)の時に自分の毛を飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は吐き出したり便と一緒に体外へ吐き出されますがさまざまな要因で胃や腸で絡まり合って大きな毛の束(毛球)となってしまいます。毛球は食べ物とは別のものなので消化されることなくグルーミングによって新たに体内に取り込まれた被毛や舐めたり噛んだりして体内に入ってきたタオルや毛布のような繊維が絡まって更に大きくなります。
猫は体の中に溜まった毛球を出そうと嘔吐を繰り返します。毛球が全て吐き出せればよいですが体の中で絡まった毛球を全て出し切るのは難しく何度も嘔吐を繰り返していると胃液が食道を刺激し逆流性食道炎を誘発することになってしまいます。逆流性食道炎を引き起こしてしまうと胸やけや胃のむかつきなどで食欲低下、嘔吐などを繰り返すような症状となってしまいます。これのような状態が「毛球症」です。
治療法
重度の場合:内視鏡や開腹手術を行って毛球を取り出す
猫伝染性腹膜炎(FIP)
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫がもともと持っている猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異によって強毒性の高いウイルスに変化してしまう病気です。1歳前後の幼い猫に発症することが多く発症すると高い致死率の怖い病気です。猫伝染性腹膜炎は、雑種の猫より純血種に多いとされており、その中でもマンチカンの発症率は他の猫種に比べて高い傾向にあります。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状とタイプ
猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症した猫は、症状によってタイプが分かれます。FIPウェットタイプ(滲出型)とFIPドライタイプ(非滲出型)と症状が異なりますが、両方の症状がみられるタイプもあるようです。一般的にFIPは、抗生物質に反応せず、食欲の減退、体重減少、元気の消失、嘔吐、下痢、発熱、発熱からぐったりして寝てばかりいるなどの症状があります。
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、「腹膜炎」という名称ですが、腹膜に炎症が起きる症状だけでなく、他の症状もみられる病気です。
FIPウェットタイプ(滲出型)
FIPを発症した猫でウェットタイプの症状がみられるのは、全体の60%~70%程度のようです。腹部または胸部内に水が溜まり、下記のような症状がみられるのが特徴です。見た目に変化が確認できるため異常を発見しやすいです。ただし、進行がはやいこともあり、症状が出てからFIPであることの診断を受けると急激に悪化していくこともあるため注意が必要です。
- 腹水
- 胸水
- 呼吸困難
- 黄疸
FIPドライタイプ(非滲出型)
ドライタイプは見た目には判断が難しく発見が遅れるケースがあります。ドライタイプの症状を発症する猫は、FIP発症猫全体の30%~40%程度とされています。
- 肝臓や腎臓などの臓器に硬いしこり(肉芽)ができる
- 目や脳などの神経系に異常が出る(神経症状)
治療法
- ステロイド剤の投与
- 抗生剤の投与
- 腹水や胸水を減らすための利尿剤の投与
- 猫インターフェロンオメガ
- 輸液療法 など
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慢性腎臓病
猫は腎臓病になりやすい動物でマンチカンも例外ではありません。慢性腎臓病とは、腎臓の機能が時間をかけて徐々に低下していく病気です。慢性腎臓病で腎臓の機能が低下するとこうした機能が衰えていき、最終的には機能しなくなります。徐々に機能が低下していくので初期のうちはほとんど症状が現れませんが、一度悪くなってしまった腎臓を元に戻すことはできません。
慢性腎臓病の主な症状と治療法
慢性腎臓病では以下のような症状が現れます。初期の段階ではほとんど症状が出ず、目に見えてわかる症状が現れたときには病状がかなり進行していることも珍しくありません。見てわかるものの中で早期に現れる多飲多尿が見られたら様子見をせずに早めに動物病院に連れていくようにしましょう。
【主な症状】
- 水をたくさん飲むようになる
- 尿の量や回数が増える
- 臭いの少ない薄い尿が出る
- 食欲が低下する
- 体重が減少する
- 嘔吐の回数が増える
- 活力が落ちる
- 毛づやが悪くなる
- 口臭が気になるようになる
- 歯茎が白くなる
治療法
予防法
猫は少ない水分で生きられるように腎臓での尿の濃縮率が高い動物で腎臓への負担がかかりやすいという性質があります。ですから、若いうちから腎臓に負担をかけないような生活を送ることが大切となります。塩分が多い食事は避け、猫に必要な栄養素がバランスよく含まれた総合栄養食を与えるようにしましょう。また、新鮮な水をいつでも飲める環境を整えてあげることも大切です。そして、壊れてしまった腎臓は元に戻せないので慢性腎臓病は早期発見が重要です。定期的な健康診断を心掛け、特にシニア期には検査の頻度を上げるなど早期発見に努めましょう。
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その他の注意したい病気
上記で紹介した以外にも猫がかかりやすい病気にマンチカンも注意する必要があります。猫がかかりやすい病気を紹介します。
糖尿病
マンチカンは食欲旺盛で太りやすい特徴があることは既に紹介済みですが、肥満になりやすい体質ということは糖尿病のリスクも高いです。
猫が発症する糖尿病は生活習慣の乱れなどが原因のⅡ型の糖尿病で7歳以上の高齢猫や去勢済みのオス猫の発症率が高いです。糖尿病と診断を受けたら、インシュリンの投与や食事療法などによる治療が必要になります。猫は食事の変化や治療を行う理由を理解する事は出来ず、治療は猫のストレスを増やすことにもなります。糖尿病予防には、飼い主の健康管理が重要です。
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尿石症(尿路結石)
尿が体外に排せつされるまでの尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)に結石ができる病気です。膀胱炎や尿道閉塞の原因ともなるので早めの治療が大切です。あまり水を飲まずに濃度が濃い尿が常態化してしまうと膀胱内に結石ができやすくなってしまいます。結石ができると、結石が膀胱や尿道を傷つけるため、排尿時に痛がったり血尿が出たりします。症状が軽い場合は数回の通院で治療できますが、結石が大きくなると尿道が詰まって排尿できなくなり、毒素を体外に出せずに命の危険にかかわることにもなります。
歯周病
猫の口腔内は弱アルカリ性の性質を持っています。口の中がアルカリ性であると、口腔内が酸性の場合になりやすい虫歯のリスクは低いですが、歯周病菌はアルカリ性の環境を好むため、猫は虫歯より歯周病になりやすい動物です。
猫の歯磨き
猫もデンタルケアが必要です。猫の歯みがきは大切な健康管理の1つです。猫用のデンタルケア用品もペットショップなどで多くの種類が販売されています。歯ブラシだけでなく歯磨きシートや歯磨きおやつなどもあります。愛猫とのスキンシップの一環でもありますので、しっかりお口のケアをしてあげましょう。
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歯石や歯垢(プラーク)などが原因で歯の根っこや歯肉が細菌に感染し歯周が炎症を起こすことによって起こる歯周病は、犬や猫などのペットであっても心配な病気です。さらに ...
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我が家のマンチカンは丈夫?
上部でACCによる交配可能種の記述を紹介しましたがマンチカンは比較的新しい描種であり、描種として認めていない団体も多くあります。足は短いことが特徴ですが、本来であれば、環境適応能力が高くどのような環境でも馴染むタフさがあります。しかし、人間の手によって足の短いタイプを作り出す繁殖が行われたために残念ながら病弱な個体として生まれてきてしまう子もいます。
短足のマンチカン同士の交配は推奨されていません
マンチカンは足が短いことが特徴の猫ですが、足が短くないマンチカンもいます。実は、短足で産まれてくるマンチカンは全体の2~3割程度と言われており、足長のマンチカンの方が多いです。足の短いマンチカンの出生のために短足のマンチカン同士の交配をすると奇形が生まれる可能性が高くなると言われています。
スコテッシュフォールドやアメリカンカールなどとの掛け合わせ
垂れ耳の足が短いマンチカンが人気となったことがありました。しかし、耳が垂れる遺伝子は奇形遺伝子であり、生まれてきた子猫は年齢が若いうちに重篤な病気を引き起こす可能性が高いとされており、望ましくない交配です。
マンチカンはまだ、新しい猫種のため、見た目重視のモラルを欠した交配が行われることも問題視されています。見た目重視の交配による障害を抱えて生まれるリスクが高い状態で誕生してしまった子も少なからずいるようです。足の短いマンチカンを家族に迎えたいと考えている人はブリーダーさんから直接子猫の両親を見せてもらったり、飼育方針、子猫の性格や特徴を見せてもらうとよいでしょう。
マンチカンの医療費
本来、マンチカンは比較的丈夫な体質の猫で、環境適応能力も高いです。マンチカンだから特別かかりやすいという病気もあまりないことが特徴ですが、可愛らしい風貌から好ましくない交配により若いころから病弱な体で産まれてきてしまう子もいるようです。
また、もともとのマンチカンは食欲旺盛で太りやすいという特徴があることから肥満による病気も心配です。体調管理に気を使っていても予期せぬケガで動物病院への通院が必要になる場合もあります。マンチカンに関わらず猫がかかりやすいとされる病気になってしまう可能性もあります。そのような経緯からマンチカンを家族に迎い入れる際には必要になるかもしれない医療費についても考えておきましょう。
猫の医療費には、ペット保険で備える事ができます。猫伝染性腹膜炎(FIP)はペット保険の補償対象外となっており、動物病院で診察を受けた全ての病気が補償対象ではありませんが、ペット保険で愛猫の突然のケガや病気に備える事ができます。本来であれば、飼い主の全額自己負担となるペットの医療費ですが、ペット保険の加入があれば、補償の対象となる診療についてその費用を限度額や一定割合の範囲内で補償してもらう事ができます。猫の治療費でも手術や入院が必要となれば数万円から数十万円かかってしまう事があるためペット保険の加入も検討しておきましょう。