猫はもともと砂漠に住む動物が起源と言われています。その名残もあり、少ない水で生きられるように肝臓での尿の濃縮率が高く、腎臓に負担をかけやすい動物だと考えられています。そのため、高齢の猫の大半が腎臓病になると言われているほど猫は腎臓病にかかりやすい動物です。その他にも猫は尿路疾患も多いです。猫に多い腎臓病や尿路疾患といった病気の完全な予防は難しいですが、水分をしっかり摂取することは病気の予防に重要です。しかしながら、好きな時に水分を摂取できる環境で生きる現代の猫もあまり水を飲まなかったりします。自ら水をあまり摂取しない猫に水を飲ませるためにはどうしたらよいのでしょう。
目次
猫に水を飲ませる方法
猫も1日に適切な水分をしっかり摂取することが健康に生きるためにも病気の予防にも重要です。愛猫があまり水を飲まず水をのませるために苦労している飼い主は多いですが、水の飲みすぎもよくありません。まずは、猫の適度な水分の摂取量はどのくらいなのか紹介します。
理想の水分摂取量
水の摂取方法には飲水で水を摂取する方法と食事に含まれている水分から摂取する方法があります。愛猫の体重によって理想の水分摂取量も異なります。直接、水分を飲水したり、食事(餌)に含まれている水分から摂取したりといった方法で、体重1㎏あたり約50ml/1日程度の摂取が必要と考えられています。
【1日の水分摂取量】
猫の体重 | 水分摂取量 |
---|---|
子猫(1㎏未満) | ~50ml |
1㎏~2㎏ | 50ml~140ml |
2㎏~3㎏ | 140ml~190ml |
3㎏~4㎏ | 190ml~240ml |
4㎏~5㎏ | 240ml~280ml |
5㎏~6㎏ | 280ml~320ml |
6㎏~7㎏ | 320ml~360ml |
7㎏~8㎏ | 360ml~400ml |
8㎏~9㎏ | 400ml~440ml |
9㎏~10㎏ | 440ml~470ml |
環境省自然環境局より
子猫は、生後4週間ごろまではミルクを与えるため、ミルクの他に別途、水分を与える必要はありません。ミルクの時期が終わり子猫用のフードに切り替え始めた頃からフードと水分摂取を意識してあげるようにしましょう。子猫は水分をうまく蓄積できず、水分不足で脱水症状になりやすいです。子猫専用または子猫からシニア猫まで与えることができる水分補給フードなどもさまざまな形態で販売されていますので活用し子猫の時期の成長に気を付けてあげましょう。
子猫の時期を卒業すると猫用のフードに切り替える人が多いかと思います。食事(餌)一般的なドライフードに含まれている水分はわずか10%程度です。食事からも水分を摂取することができますが、ドライフードだけでは必要な水分量を摂取することはできませんので、食事以外でどれだけ1日に水分を摂取したかは観察しておくことが望ましいでしょう。
また、猫に与える水は衛生的な水道水で問題ありません。カルシウムイオンやマグネシウムイオンの入った市販されているミネラルウォーターのような硬水は、尿石ができやすくなるため好ましくありません。愛猫にミネラルウォーターを与えたいという人はペット用のミネラルウォーターが販売されていますので、そちらを選んで与えるようにしましょう。
猫が水を飲まない原因と水を飲ませる方法
「猫はあまり水を飲まない動物」と言っても水分を摂取しなければ猫だって生きていけません。水分が不足してしまうと脱水状態となってしまったり、結石や腎臓病の発症を早めてしまうことになるため適度に水分補給を行う必要があり、猫も全く水分が欲っしていないというわけではありません。そんな猫が必要な水の量を水をあまり飲まず、水分の摂取が足りていないような場合、その理由には何があるのでしょう。
1.水の好みが合わない
猫は水の味や温度などそれぞれ好みが異なります。新鮮な冷たい水が好きな猫もいれば、少し時間が経過したぬるい水が好きな猫もいます。また、新鮮できれいな水をあげていても、流しのたまり水や水槽の水、プランターの受け皿にたまった水など水を飲んでいる場合もあります。そのような場合は、その場所にたまった水の味を好んでいるという場合も考えられます。きれいな水を用意していてもあえて人が見て少し汚れている水を好んで飲んでいる場合は、水道水が嫌いということも考えられます。汚れた水を飲ませたくない場合は飲めないように工夫しましょう。愛猫がどのような状態の水が好みなのかということは普段、水を飲んでいる様子を観察するしかありません。
塩素臭を嫌う猫
猫は臭いに敏感で水道水の塩素臭を嫌う猫がいます。新鮮な水を用意しているのに飲まないといった場合は水道水の塩素臭を嫌っている場合があります。そういった場合はペット用のミネラルウォーターを活用してあげるという方法で試してみましょう。
清潔できれいな水を好む猫も多くフィルターを通して水を循環させきれいにしてくれる猫用の自動給水器などが販売されています。水飲み用のさまざまなグッズが販売されていますので、愛猫の好みを探してあげましょう。
2.器が気に入らない
水の入った器が気に入らないために水をあまり飲まないということもあるようです。猫は神経質で基本的に憶病な生き物ですから、器に入った水にひげが触れてしまうことが気に入らず水を飲まないなどといったようなこともあるようです。猫のひげはとても繊細で平衡感覚を保つことに大きな役割を担ったり、状況を察知するために重要な役割があります。ひげがお皿に当たって不快な思いをしているのが原因であれば、お皿を変えたり、水を与えている台の高さを調節してみたりして問題が解決しないか試してみましょう。
また、器に残った洗剤の臭いを嫌がってあまり水を飲まなくなっているということもあります。食器用の洗剤は柑橘系のニオイの物も多く猫は柑橘系のニオイが苦手なタイプもいるのでお皿に残った洗剤の臭いを嫌って器の水を飲んでいない可能性も考えられます。
3.水飲み場の位置
食事の際に新鮮な水も一緒に与える飼い主が多いと思いますが、食事と水の飲み場所を分けている猫もおり、そういった猫には、食事をする場所と水を飲む場所は分けて配置した方がよいです。食事の場所と水を飲む場所は50㎝以上離した方がよいともいわれています。これは、野生の猫は仕留めた獲物の肉が時間が経過し腐っていくと、近くの水が汚染されていく可能性があるため、捉えた獲物の近くの水は飲まないという習性からきているようです。
水飲み場が1か所しかない場合、その場所が気に入らなければ水を飲まなくなってしまうため、複数個所に設置してあげるとよいでしょう。
4.夏バテ(熱中症)の可能性
夏バテで体力が落ちていると、水を飲まなくなることがあります。水を飲まなくなると、脱水症状へとつながっていきます。猫は人と比べて汗腺が発達していないため、汗をかいて体温調節を行うことが苦手です。日本のような高温多湿の気候の中では特に夏バテになりやすく、水分補給を行った方がよいですが、もともと水をあまり摂取しない動物ですから夏バテ(熱中症)の予防をしっかり行って夏を乗り切ることが重要です。
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5.病気の可能性
病気やケガなどを理由に体調が悪いために水を飲んでいない可能性が考えられます。今まで水を飲んでいたのに急に水を飲まなくなった、などの変化がある場合は早めに病院の獣医師に相談しましょう。猫は病気やケガなどを患っていても隠す習性があります。そのため、普段と変わらず一見元気な様子であっても実は重大な病気を抱えているといった場合もあり病気の発見が遅れてしまうようなことがあります。
猫の水分補給方法
愛猫が水を飲まない理由にはその猫なりの理由があります。言葉でコミュニケーションが取れない猫の心理を読み取るのは難しいですが、水を入れていたお皿や場所を変えたなど以前と環境の変化があり、そのタイミングで水を飲まなくなったのであれば、環境を戻してみましょう。また、上記で紹介した理由に当てはまらないか探ってみましょう。原因を見つけることから対策がスタートします。まずは、さまざまな対策を試してみてください。
- 常に新鮮な水を用意する(冷たい水が好きな猫)
- ぬるま湯で与える(ぬるい水が好きな猫)
- 水飲み場を複数設置する
- 水を入れる器を複数用意する
- ペット用のミネラルウォーターを試してみる
- 水を入れる器は食器用洗剤を使用せず、水洗いする
- 木炭や竹炭を水道水に入れて塩素臭を消す
- 魚や鶏肉などのゆで汁を与える(塩分を含むものは与えない)
ココがおすすめ
愛猫が生水をあまり飲んでくれない場合は、ウェットフードや水分補給を兼ね備えたフード、猫用のスープなどを活用する方法もあります。どうしても水分をあまり摂取しないタイプの猫の場合は水分補助食品なども活用してみましょう。
猫の水分不足と病気
猫の身体も人と同じように60%~80%が水分を占めています。あまり水分を摂取しなくても生きていけるよう肝臓での尿の濃縮率が高い構造になっている猫ですが、水分を全く摂取しなくても生きていけるというわけではありません。あまりにも摂取しなさすぎると猫も水分不足で脱水症状になり、腎臓病や尿路疾患といった病気になりやすいです。
脱水症状
猫も水分不足で脱水症状を起こします。脱水状態になる主な原因には、下痢や嘔吐をしたために体の水分が奪われた状態になったり、熱中症や腎臓病などが原因で水を飲まなくなり脱水状態になっていることがあります。脱水状態になると皮膚の弾力が失われ、歯茎が乾いていたり、反応が鈍くなるといった症状が出てきます。早めの対処が必要です。猫の下痢や嘔吐にはさまざまな原因が考えられます。病気が原因で下痢や嘔吐がある場合は、感染性腸疾患や炎症性腸疾患、消化器系疾患、中毒、食物アレルギー、腸閉塞などのさまざまな理由が考えられます。脱水状態が疑われるようであれば早めに動物病院を受診しましょう。
慢性腎臓病(腎不全)
慢性腎臓病とは、腎臓の機能が長い年月をかけて徐々に低下していく病気です。腎臓が炎症を起こし徐々に腺維化していってしまいます。腎臓は一度壊れてしまうと再生しない臓器です。それは猫も人間も同じです。高齢の猫の大半が腎臓病になると言われているほど猫にとってはポピュラーな病気なため気を付けてあげなければいけません。症状が進行すると末期の腎不全となり死に至ってしまいます。なぜ、猫が腎臓病を患いやすいのかという事は正確には分かっていません。しかし、猫は砂漠に住む動物が起源であり、その名残としてあまり水分を摂取しなくても生きていけるように腎臓の負担をかけやすい構造をしていることは分かっています。腎臓が働きすぎるあまり、平均寿命も長くなっている現代の猫は年を取ると腎臓機能が低下していくため腎臓病になりやすいのだと言えるかもしれません。
そのため、腎臓をいたわるためにもいつでも水を摂取することができる現代の猫は、普段から適度な水分摂取が健康に生きるために重要となります。
多飲多尿
一番初めに現れる症状になります。水をたくさん飲むようになり、臭いの少ない薄い尿をたくさんするようになります。それは、腎臓での水分の再吸収が不十分になるためですが、食欲も元気もあるため異変を見逃しがちになります。しかし、この時点で腎臓機能が衰えているため現れる症状になりますので毎日の猫の様子を注意深く観察することが大切です。
脱水
腎臓機能が低下する腎不全が進行してくると食欲が低下し体重も減少します。毛づやが悪くなるなどの症状も出てきます。尿量はさらに増えてきますが自分の力では水が飲みづらくなるため体内の水分が補えなくなり、脱水状態となります。
尿毒症
脱水状態が続くと尿毒症となります。腎臓で分解できない老廃物が蓄積することでおこります。食欲がまったくなかったり、嘔吐をする回数が増えます。脱水症状もあるため症状は徐々に悪化していきます。
貧血・高血圧
腎臓で作られる造血ホルモンが欠乏するため貧血状態になります。腎機能の低下で老廃物を体外に排出することができない状態のため、老廃物を体外に排出しようと血流の流れが活発になることにより高血圧になります。
尿路疾患(下部尿路感染症・尿路結石・膀胱炎)
水分不足により尿が濃くなると膀胱炎や結石などの病気のリスクが高くなります。また、膀胱炎や結石以外の尿路疾患リスクにも気を付ける必要があります。
尿路結石は、尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)に結石ができる事です。細菌感染が原因で起こる場合や肥満や運動不足などにより水をあまり飲まずに排尿する回数が少ないと尿路結石になってしまう事があります。オスの猫の方が尿道が細いため尿路閉塞を起こしやすく尿管結石になりやすいようです。
下部尿路感染症は、膀胱や尿道に細菌感染が起こった状態になります。猫が下部尿路感染症になってしまうことはあまりないようですが、免疫が低下していたり、細菌が感染しやすい状況でなってしまう事があるようです。
膀胱炎は、膀胱の粘膜に炎症が起こる病気で細菌感染や尿路結石などが原因で起こります。猫の場合、原因が特定できない膀胱炎も多くみられるようです。膀胱の腫瘍や外傷などから膀胱炎を引き起こしている場合もあるため病院で検査してもらいましょう。
ペット保険で愛猫の医療費に備えておこう
万が一、可愛がっている猫が腎臓病や尿路疾患といった病気になってしまったら、医療費がどれくらいかかるのかという心配があります。腎臓病は完治することがない病気なため定期的な動物病院への通院が欠かせなくなるなるでしょう。尿路疾患の病気を患ってしまった場合も完治のための通院代や薬代が心配になります。場合によっては手術費用や入院費用が必要になるかもしれません。猫には人間のような公的医療保険はないため、医療費は全額飼い主負担となってしまいます。急に大きな出費となってしまえば家計への負担も心配です。そんな時のためにペット保険の加入があれば愛猫が病気になってしまった時の医療費を軽減することができます。愛猫が病気になり急に大きな金額の出費が必要になった時に十分な収入・貯蓄があるので問題なく支払えるという場合はよいですが、そうでないのであればペット保険の加入を検討しましょう。
猫も人間と同じくケガをしてしまったり、病気になってしまう事があります。家の中で遊んでいる時にケガをしてしまい病院での治療が必要になったり、病気になってしまい病院で通院や手術が必要になれば治療費がかかります。猫も家族の一員ですが、人間と違いペットにかかる医療費は全額飼い主が負担しなければいけません。手術が必要なケガや長期にわたって通院が必要となる病気になってしまう可能性もあります。高額な医療費を負担しなければいけなくなるリスクに備えるためにはペット保険で備えるという方法があります。猫も家族の一員としてケガや病気になってしまったらどのように対応するかという事を考えておきましょう。病気の予防と病気になったときの備えはセットで考えておく必要があると思います。ペット保険には加入条件が設けられていることが多いです。高齢のペット、傷病歴があるペットは加入が難しくなってしまう事もあります。愛猫の病気に備えたペット保険の加入検討は猫が若く健康なうちに行いましょう。