人間が普段食べているものでも猫が食べると命の危険があるものもあります。どのようなものを食べさせてはいけないのか知って大切な猫の命を守りましょう。また、仮に食べさせてはいけない食材を食べてしまったらどうしたらよいのでしょうか。
猫が食べてはいけないものは?
野菜類
ネギ類(タマネギ、長ネギ、ニンニク、ニラなど)
ネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物という物質によって赤血球が破壊され、溶血性貧血を起こします。有機チオ硫酸化合物は加熱しても分解されないので調理済みのものも食べさせてはいけません。猫がネギ類を生のまま自分から食べるということは基本的にありませんが、ネギが含まれたハンバーグやシチュー、肉じゃがなどは注意が必要です。重症化した場合はけいれんや呼吸困難を起こして死に至ることもあります。
銀杏
銀杏に含まれるメチルピリドキシンと呼ばれる成分によってビタミンB6の作用が阻害されて中毒症状を引き起こします。中毒症状としては下痢や嘔吐、呼吸困難、けいれん、めまいなどが現れます。銀杏は人間も大量に摂取すると中毒症状を起こします。猫がどれだけ食べたら中毒症状を起こすかは個体差がありますが、特に小猫などは1個でも食べたら危険なことがあるので注意が必要です。
アボカド
アボカドに含まれるペルシンという成分が猫にとって有害に働くと言われています。猫に対してどの程度の毒性があるのか正確なことはわかっていないのですが、アボカドを食べることによって下痢や嘔吐などの中毒症状を起こす場合があります。重症化すると呼吸困難やけいれんを起こし、命にかかわることもあります。また、ペルシンの毒性のほかに、種の誤飲の危険性もあります。
果物類
ぶどう・レーズン
猫がぶどうやレーズンを食べた場合、食べてから数時間後に嘔吐や下痢、腹痛、乏尿(排尿量の低下)などの症状が現れ、重篤な場合は急性腎不全を引き起こします。何が原因となって中毒症状を引き起こすのかはまだ解明されていませんが、命にかかわることもあるので猫にぶどうやレーズンは食べさせないようにしましょう。
イチジク
イチジクに含まれるソラレンやフィシンという成分が悪影響を与えます。ソラレンを大量に摂取した場合、下痢や嘔吐を引き起こし、重篤な場合には脱水症状を起こします。フィシンはタンパク質分解酵素で、口腔内や食道の粘膜のただれや口内炎を引き起こします。また、ゴム製品へのラテックスアレルギーを持っている場合、イチジクにもアレルギーを起こしやすいです。
ナッツ類
ナッツ類は中毒を引き起こす物質が含まれていないものでも消化に悪かったり高カロリーであったりするため、食べさせない方が無難です。
ビターアーモンド
ビターアーモンドにはアミグダリンという青酸配糖体が含まれ、猫が口にすると呼吸困難やけいれんを引き起こして死に至ることもあります。ただし、ビターアーモンドは人間でも一定量以上摂取すると危険なため、日本への食品としての輸入は認められておらず、ビターアーモンドそのものを食べることはまずないと思います。香料やオイルなどの加工品として用いられていることがあるので、そちらには注意が必要です。
マカダミアナッツ
猫が食べたときに中毒症状を起こすかは解明されていませんが、犬では中毒症状を引き起こすことが知られています。猫と犬は異なる動物ですが、積極的に食べさせるべきものでもないので避けておいた方が無難でしょう。また、中毒症状が起こらないとしても、体内でうまく消化できずに腸閉塞を起こす危険性もあります。
お菓子
チョコレート
犬にチョコレートを食べさせてはいけないということはよく知られていますが、猫にも同様に食べさせてはいけません。カカオに含まれるテオブロミンによって嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こします。大量に食べた場合には中枢神経や心臓に作用し、震えやけいれん、不整脈などを起こし、最悪の場合には死に至ることもあります。カカオに含まれる成分が原因であり、カカオ含有量が多いチョコレートほど危険性が高いです。また、ココアやチョコレートを含んだアイスクリームや焼き菓子などにも注意しましょう。
キシリトール
キシリトールは虫歯対策としてよいイメージがあるかもしれませんが、猫には大変危険です。猫がキシリトールを摂取するとインスリンが大量に放出され、低血糖症を引き起こしたり、肝不全を引き起こしたりします。血糖の低下により、意識の低下や脱力、昏睡、けいれんなどが起き、死に至ることもあります。キシリトールガムを数粒食べただけで中毒を起こすこともあるので、誤って与えてしまわないように注意しましょう。
飲み物
アルコール
猫の肝臓はアルコールを分解することができず、体内に残り続けてしまいます。飼い主が積極的に飲ませるものではないと思いますが、もし飲んでしまったら嘔吐や下痢、尿失禁などを起こします。多量に飲むと呼吸障害を起こしたり死亡したりする危険性もあります。
コーヒー(カフェイン)
コーヒーなどのカフェインを含んだ飲み物を大量に飲むと、中枢神経が刺激されてめまいや震え、下痢、嘔吐などの症状が引き起こされます。人間もカフェインを大量に摂取すると中毒症状を起こしますが、人間よりも体が小さく感受性が強い猫にはより注意が必要です。
牛乳
人間でもそうですが、猫の場合も乳糖を分解できずに下痢を起こしてしまうことがあります。乳糖の分解酵素ラクターゼは成長すると少なくなってしまうので、子猫のころに飲ませて問題なかったという場合でも成猫になったら下痢を起こす可能性があります。また、人間用の牛乳はカロリーが高く、肥満につながりやすくなります。猫にミルクをあげたいのであれば猫用のミルクを与えるようにしましょう。
魚介類
アワビやサザエの肝
昔から「猫がアワビを食べると耳が落ちる」と言われていますが、これはあながち間違いではありません。アワビやサザエの肝に含まれるピロフェオホルバイドaなどの物質が光過敏症を引き起こします。光によって活性化された酵素が細胞膜を構成している脂肪酸などを酸化して過酸化脂質を作り、この過酸化脂質が皮膚の腫れやかゆみなどを引き起こすのです。日光にさらされやすい耳は症状が出やすく、症状が重い場合は皮膚が壊死してしまうこともあります。つまり、「耳が落ちる」こともあるのです。
青魚
某国民的アニメのオープニングでドラ猫が魚をくわえている様子が歌われていますが、長期間食べ続けていると不飽和脂肪酸により体内の脂肪が酸化して黄色くなる「黄色脂肪症」になってしまいます。変質した部分に硬いしこりや炎症が生じ、発熱や痛みを引き起こします。一度食べてしまったくらいでは問題ありませんが、日常的に食べさせ続けることはないようにしてください。
生のイカやタコ、甲殻類
過剰に食べ続けるとビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがあります。ビタミンB1が不足するとふらつきや歩行障害、けいれんなどが起こります。また、イカは消化に悪く胃腸に負担をかけてしまうのと、寄生虫のアニサキス中毒を起こす可能性もあります。
その他
ユリ科の植物
飼い主が積極的に与えることはないと思いますが、ユリ科の植物を食べた場合、大変危険な中毒を引き起こします。少しかじっただけでも急性腎不全を引き起こして死に至ることもあり得ます。ユリは仏花として使われることもあるので、目を離したすきにかじったり食べたりしてしまったということがないように注意してください。
生の豚肉
生の豚肉にはトキソプラズマという原虫が潜んでいることがあり、生の豚肉を食べることで感染してしまう恐れがあります。猫がトキソプラズマに感染したとしても症状が現れないことが多いですが、発熱やリンパ節の腫れ、下痢などを引き起こすこともあります。そして、感染した猫の糞便などから人間に感染することもあります。妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合では、胎内感染によって子供に眼や脳の障害が生じたり、流産や死産をしてしまったりすることがあります。
もし食べてしまったら?
もし猫が食べてはいけないものを食べてしまったらすぐに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。家庭であたふたしていても猫の命を危険にさらすだけです。いつ、何を、どれくらい食べたのかを分かる限り正確に獣医さんに伝えるようにしましょう。また、吐かせるにしても素人考えの方法では症状を悪化させてしまったり、猫の体力を無駄に消耗させてしまったりする可能性もあります。まず食べさせないことが大切ですが、食べてしまった場合は次善の策として獣医さんの指示に従い、大切な猫の命を守るようにしましょう。
まとめ
猫とともに食卓を囲むとついつい人間の食べ物をあげたくなってしまいますが、人間と猫では食べられるものが異なり、人間が普段食べるものでも猫が食べると命の危険があるものもあります。キャットフード以外のものを猫に食べさせたいと思っても安易に与えずに、食べさせても大丈夫なものなのかよく調べてから与えるようにしましょう。また、誤飲を防ぐためにも猫の届く範囲に危険な食べ物は置かないようにしましょう。そして、万が一食べてしまったという場合には、すぐに動物病院に連絡して、いつ、何を、どれくらい食べたのか伝え、指示を仰ぐようにすることが大切です。素人考えで処置をしてより危険な状態にしてしまうということがないように注意しましょう。