「ストレス」、「運動不足」、「暴飲暴食」、「肥満」などのライフスタイルの乱れが原因で起こるとされ生活習慣病のひとつである糖尿病ですが、人に飼育されている犬や猫などのペットが糖尿病になってしまうことも増えているようです。糖尿病は人間だけの病気ではなく人間と一緒に暮らすペットたちもなってしまうことがあるペットの現代病でもあるようです。犬や猫などのペットが糖尿病になると人間同様にインスリン治療や食事管理などが必要になります。インスリン治療が必要となると医療費も高額になりそうです。犬や猫の糖尿病はどのような病気でペットの医療費に備えて加入するペット保険は糖尿病の治療費も補償対象となるのでしょうか。
犬と猫の糖尿病について
糖尿病とは、膵臓から出るインスリンで血糖を一定の範囲に収める働きが十分にできなくなり、血液中を流れるブドウ糖が増えてしまう病気です。犬や猫の糖尿病も血液中のブドウ糖をインスリンが細胞内に取り込み細胞が糖を代謝してエネルギーに変える働きができなくなり、尿から糖が代謝してしまっている状態です。
人の糖尿病は大きく分けて「Ⅰ型糖尿病」と「Ⅱ型糖尿病」に分けられます。人の糖尿病は肥満や暴飲暴食など生活習慣の乱れが大きく関係するⅡ型糖尿病が95%以上を占めると言われています。犬や猫も人と同じように「Ⅰ型糖尿病」と「Ⅱ型糖尿病」とあるようですが、糖尿病になる事情は人とは少し異なるのかもしれません。
Ⅰ型糖尿病 | 膵臓がインスリンを作る事ができない状態です。 インスリン注射が必要となり、糖尿病にかかりやすい体質であるなど先天的な要因が原因とされています。 |
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Ⅱ型糖尿病 | 膵臓でインスリンを出していますが、排出される量が不十分で十分な働きができていない状態です。 生活習慣の乱れなどが原因で発症することが多いとされています。 |
犬の糖尿病の場合
犬の場合は、Ⅰ型の糖尿病が多いとされています。犬の場合は、7歳を超えたあたりの中高齢での発症が多く、オスよりもメスの方が糖尿病になりやすいと言われています。メス犬の方が糖尿病になりやすい理由には、ホルモンが関係しており、女性ホルモンの一つであるエストロゲンがインスリンの作用を弱らせる働きを持つとされているからです。そのため、避妊をしていない中高齢のメス犬が糖尿病になるリスクが高いとされています。
その他、他の疾患の合併症として糖尿病を発症してしまう事もあります。
糖尿病の主な症状と治療法
下記の症状が見られるようならすぐに動物病院で検査をしてもらいましょう。糖尿病と分かればすぐにインスリン投与の治療を開始する必要があります。動物の場合は放置していると容態が急変し死亡に至ってしまうケースもあります。食べ物を欲しがることが増え、いつもより食欲が増加しているのに体重が減っていたり、水飲む回数、トイレの回数が増えたなどのいつもと様子が違うといった異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
犬が糖尿病と診断されたら治療法は毎日1回~2回のインスリン注射と食事療法です。インスリン注射も食生活に気を付けることも糖尿病になってしまうと生涯必要になります。
【主な症状】
- 多飲多尿
- 体重減少
- 食欲増加
- 食欲不振
- 元気がない
- 脱水
- 嘔吐
- 下痢
- 尿の臭いがいつもと違う
- 毛づや悪くなった
【治療法】
1日1回~2回のインシュリン注射と食事療法(一生涯)
予防法
犬の場合、遺伝的な要因が大きいⅠ型糖尿病が多いとされていますが、中高齢での発症が多いことからも発症させないように飼い主が犬の健康に気を付けてあげることが大切になります。
予防法
- 肥満予防と体重管理
- 適度な運動
- ストレスを与えない
- 出産予定のないメス犬は避妊手術をする
糖尿病になりやすい犬種
糖尿病になりやすいと言われている犬種を紹介します。ただし、全ての犬種において糖尿病になってしまう可能性はゼロではありません。愛犬に異変を感じたら早めに動物病院で検査をしてもらいましょう。
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- ゴールデン・レトリバー
- シュナウザー/ミニチュア・シュナウザー
- ジャーマンシェパード
- ジャックラッセル・テリア
- ダックスフンド/ミニチュア・ダックスフンド
- ビーグル
- プードル/トイ・プードル
- ミニチュア・ピンシャー
- ラブラドールレトリバー など
猫の糖尿病の場合
猫の場合は、Ⅱ型の糖尿病が多いとされています。肥満や運動不足などが原因として多いと考えられているインスリンを出すことができていても働きが不十分になってしまうタイプです。猫の糖尿病も遺伝的な要因で糖尿病にかかりやすい体質であった猫が肥満や運動不足などを理由に発症してしまう事が多いようです。7歳以上の高齢の猫が発症する場合が多く、去勢済みのオスの方が発症率が高いとされています。
また、猫は膵炎になってしまうことも多い動物です。猫が膵炎になってなってしまう理由はよくわかっていませんが、膵炎が原因で糖尿病を発症することもあるようです。特に高齢の猫が膵炎を発症しやすいとされており、膵炎は嘔吐や腹痛、下痢などが見られます。慢性的に膵炎を発症しやすい慢性膵炎の症状がある猫は定期的に病院で健康診断を受け体調管理に気を付けるなど注意してあげましょう。
糖尿病の主な症状と治療法
猫の場合はⅡ型糖尿病であるケースが多く、糖尿病を発症したためにインスリン注射を開始してから膵臓機能が回復し治ることもあります。ただし、猫の糖尿病は治る事があるといっても治療は必須で自然に治る事はありません。普段の生活で異変を感じたら早めに動物病院を受診し、糖尿病と診断を受けたらインスリン注射や食事療法などの治療をスタートさせることが重要となります。ただし、治療を行えば必ず治るという事ではありません。また、治っても再発することもあります。
普段と違う異変が見られるようならすぐに動物病院で検査をしてもらいましょう。猫の場合も糖尿病と気づかず放置していると、突然、容態が悪くなり死亡に至ってしまうケースがあります。猫は体調が悪くても隠す習性があるため、なかなか体調の変化を態度に表してくれません。いつもより食欲が増加しているのに体重が減っていたり、水飲む回数、トイレの回数が増えたなどのいつもと様子が違うといった異変に飼い主がいち早く気づいてあげることが重要になります。
猫も犬と同様に糖尿病と診断されたら基本的な治療法は毎日1回~2回のインスリン注射と食事療法です。
【主な症状】
- 犬の場合と同じ
- ジャンプが出来ない
【治療法】
1日1回~2回のインシュリン注射と食事療法(猫は腎臓機能が回復して糖尿病が治る場合があるが、治らない場合は一生涯インスリンの投与が必要)
予防法
猫の場合、肥満や運動不足などの影響が大きいⅡ型糖尿病が多いとされています。
猫種ごとに違いはありますが、猫の一般的な平均体重は3.5kg~4.5kg程度とされています。飼い主は、猫のボディコンディションスコアを意識した体重管理で肥満予防に気を付けてあげましょう。猫は、完全室内で飼育されているようなケースも増えていますが部屋の中でも適度に運動できる環境を整えてあげるなど運動不足にも注意してあげましょう。
また、猫はタンパク質を栄養源とする肉食動物です。猫が食べても大丈夫な食べ物でも炭水化物が多い食事をしていると食後の血糖値が上がりやすく糖尿病になるリスクも高くなります。エサやおやつは猫の特性を考えて与えるようにしましょう。
予防法
- 肥満予防と体重管理
- フード選びに気を付ける
- 適度に運動をできる環境を整える
- ストレスのない環境作り
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犬や猫の糖尿病検査と治療費
動物病院で行われる主な糖尿病の検査について紹介します。血糖値の上昇が見られるだけの判断で糖尿病の治療を行ってしまうと危険ですから、さまざまな検査を行って糖尿病と診断します。
糖尿病と診断を受ければ、状態によりしばらく入院が必要なケースもあり、入院となると治療費は十数万円程度必要になってしまうと想定しておきましょう。
検査内容 | 治療費 | |
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血液検査 | 血液中の血糖値を調べます。 | 数万円 |
尿検査 | 尿に糖が出ていないかを試験紙で調べます。 | |
眼科検査(犬の場合) | 糖尿病を発症すると白内障を発症する確率が高く糖尿病性白内障と診断されることがあります。 | |
超音波検査 | 他の病気が隠れていないかの検査を行います。 糖尿病は他の疾患から糖尿病に至る事もあれば、糖尿病が進行すると起こる合併症などもあります。 | |
ACTH試験 | ||
膣スメア検査 | ||
膵特異的リパーゼ | ||
画像検査 | ||
X線検査 |
愛犬や愛猫が糖尿病と診断を受けると血糖値のコントロールが必要になります。食事療法も大切になりますが、犬や猫の状態に合わせたインスリン投与が必要になります。インスリンは自宅で飼い主が1日に1回~2回行う事になります。そのため、毎日のインスリン代が必要になります。インスリンは投与量を間違えるわけにはいけないため愛犬や愛猫にあった量を的確に投与することとなり費用も病院によって異なります。
糖尿病になれば、インスリン代に加え、定期的な通院も必要になります。1回の治療費ではとどまらず、糖尿病になっていますと毎月の通院費も必要になるのでペットの医療費が高額になってしまう心配があります。これらの医療費は全額飼い主負担となります。ペットは人のような医療費補助の制度がないため基本的には飼い主が全額負担することになります。
糖尿病はペット保険の補償対象になる?
犬や猫といった動物も人間と同じくケガをしてしまったり、病気になってしまう事があります。動物病院で診察を受ければ通院費や入院費、手術代、薬代(医薬品)などが必要になります。これらの医療費は全額飼い主の負担となるため、高額な医療費がかかってしまうリスクに備えてペット保険に加入しているという人もいるでしょう。
糖尿病がペット保険の補償対象となっているかどうかは加入するペット保険によります。多くのペット保険で補償対象となっているようですが、中には補償対象外になっているものや糖尿病を発症すると翌年度から保険の更新ができないといったペット保険もあるようなので、加入するペット保険の補償内容を確認しておきましょう。新規で加入する場合も何が補償対象となり、どういう場合が補償対象外となるのか理解してから契約することは大切なことです。ペットの高額な医療費に備えてペット保険に加入していても補償が受けられなければ意味がありません。補償となるケース、ならないケースを理解せずに加入していてトラブルとなってしまう事もあるようです。ペット保険の補償内容はしっかり確認しておくようにしましょう。
また、ペット保険に新規で契約する場合、ペット保険には新規加入できる年齢に条件が設けられています。多くのペット保険では新規加入できる年齢の上限を8歳~12歳としています。犬や猫の糖尿病の発症リスクが高くなるのは7歳ごろからとされています。ペット保険の加入については、愛犬や愛猫に高額な医療費が発生した場合に家計への負担を考えて加入の有無を決めることが判断基準の一つとしてあります。糖尿病だけでなく病気のリスクに備えてペット保険に加入したいと思っても既に加入できない場合があるのです。もちろん、糖尿病に限らず、既に発病している病気(既往症)がある場合は、ペット保険に加入できてもその病気は補償対象外です。糖尿病になってから医療費の補助のためにペット保険の加入を考えてもペット保険に加入できなかったり、ペット保険では補償してもらう事は難しいです。医療費に備えたペット保険の加入はペットが若い時に検討しておきましょう。
まとめ
犬や猫も人間同様に糖尿病を発症してしまう事があります。糖尿病には大きく分けて「Ⅰ型糖尿病」と「Ⅱ型糖尿病」があり、犬の場合はⅠ型糖尿病が多く、猫の場合はⅡ型糖尿病が多いとされています。糖尿病は、犬であれば生涯インスリンの投与など治療が必要な状態となり、猫も多くの場合、生涯付き合っていかなければいけない病気です。犬の場合も猫の場合も遺伝的な要因が関係するようですが、肥満などの食生活に気を付け、適度な運動でストレスのない環境を作ってあげることが予防方法になります。
愛犬や愛猫が糖尿病になってしまうと医療費が高額になってしまう事が予想されます。ペットのケガをしてしまったり病気になってしまった医療費に備えて加入するペット保険は、糖尿病も補償対象となっていることがほとんどです。ただし、一部補償対象外となっていたり、更新に制限があるものなどありますので、補償内容をしっかり確認しておく必要があります。