ダックスフンドはドイツ原産でアナグマのような巣穴に潜むタイプの獲物を狩る猟犬(狩猟犬)です。巣穴に潜む獲物を狩りやすいように少しずつ体型が胴長短足になっていきました。その後、イタチやウサギなどを狩るために小型化されたのが現在のミニチュア・ダックスフンドです。現在の日本で飼育されているミニチュア・ダックスフンドは、ペット(家庭犬)として迎い入れられている事がほとんどですが、ペットとしても長く人気の高い犬種になります。ここでは、ペットとして飼育する上で知っておきたいミニチュア・ダックスフンドの特徴や気を付けたい病気について紹介していきます。
目次
ミニチュア・ダックスフンドの特徴
特徴のある体型
ダックスフンドは、巣穴に潜むタイプの獲物を狩る狩猟犬として改良されました。巣穴の獲物を狩りやすいような猟に適した体格になるようにと改良を重ね、現在のような体型になりました。獲物を狩ったり、獲物のニオイをかぎ分けたりハンティング気質が強い犬種です。独特の体型であるダックスフンドは体長が体高の2倍ほどあるほど胴長短足です。これはミニチュア・ダックスフンドも同様です。日本ではミニチュア・ダックスフンドを飼育している人が多いですが、ダックスフンドはサイズによって3種類に分けられます。
【ダックスフンドの種類】
種類 | 体重 | 胸囲 |
---|---|---|
スタンダード・ダックスフンド | 9~12kg | 35㎝以上 |
ミニチュア・ダックスフンド | 5kg以下 | 30~35㎝ |
カニヘン・ダックスフンド | 3~3.5kg | 30㎝以下 |
好奇心旺盛な性格
ミニチュア・ダックスフンドは、好奇心旺盛であり、陽気で非常に活発な性格であるという特徴があります。全てのミニチュア・ダックスフンドがそのような性格であるわけではありませんが、比較的フレンドリーで遊び好きであり人に馴れやすいと考えられています。人と共に暮らしてきた歴史が長くしつけや訓練も受け入れやすい飼いやすい犬種であり、賢く順応性が高いため飼いやすい犬種です。ただし、もともと狩猟犬であったことから自立心が強く頑固な一面があることから甘やかしすぎて問題犬になってしまわないよう飼い主が責任を持って飼育しましょう。
家族に対して愛情深いですが、他人や他の犬に対して警戒心が強く神経質な態度を見せることがあるのもミニチュア・ダックスフンドの特徴です。子犬の頃から社会性を育み、愛情を持ってしっかりと躾を行う事で飼い主との信頼関係も築けることでしょう。
ダックスフンドの毛質は3種類あり、違いによって性格に違いがあるとされています。それは、それぞれの掛け合わせによる影響が大きいかもしれません。
【ダックスフンドの毛質と性格】
毛質 | 特徴 | 性格 |
---|---|---|
スムースヘアード | ミニチュアピンシャーとの交配で誕生。 密に生えた短毛、硬い毛質。滑らかで光沢感のある毛並みが特徴です。抜け毛が多いが短毛なためお手入れが簡単。 | 好奇心旺盛で明るく活発。猟犬時代の特徴が一番残っている。 |
ロングヘアード | スパニエル系の犬種との交配で誕生。 長毛でかたい毛質、ふわっとやわらかく光沢感のある毛並みが特徴です。ウェーブかかった毛質タイプ、ストレートタイプの毛質の犬など個体差があります。耳の先端や首の下に飾り毛があり優雅な雰囲気があります。 | 温厚でフレンドリー、甘えん坊で猟犬よりペットの要素が強い。 |
ワイヤーヘアード | シュナウザーとの交配で誕生。 全身に太く硬いごわごわとした剛毛が生えています。耳は短毛で硬い毛質です。眉毛がチャームポイントとなる。 | 勝気で頑固な面があるが愛情深く遊び好きで活発。 |
ミニチュア・ダックスフンドが気を付けたい病気
ミニチュア・ダックスフンドはその特徴的な体型から椎間板ヘルニアになりやすい犬種です。その他にも遺伝的な疾患などミニチュア・ダックスフンドがかかりやすい病気を紹介します。
ミニチュア・ダックスフンドの平均寿命は約13年程度と考えられていますが、病気に気を付けて健康長寿を目指して体調管理には気を付けてあげましょう。
椎間板ヘルニア
ミニチュア・ダックスフンドは胴長短足の体型をしており、背骨に負担がかかりやすいため椎間板ヘルニアの発症率が高いです。椎間板ヘルニアは、脊椎を連結している椎間板が突出してしまうことで脊髄の神経を圧迫し痛みや麻痺がおこる病気です。
症状
腰や背中、足に痛みや麻痺がおこる。発症すると足を引きずるなど歩行異常が見られる。痛みのため抱きかかえられることを嫌がったり、ソファに飛び乗らなくなった、動きがおかしいなど行動に変化が見られます。
- 歩くことを嫌がる
- 抱きかかえられるのを嫌がる
- ソファーに飛び乗らなくなった
- 歩行に異常が見られる
- 足が麻痺しており、起き上がれない
- 排泄がスムーズに行えない など
治療法
【症状が軽い場合】
注射や内服薬の投与、ケージレストによる安静、コルセットの装着などによる内科的な治療が中心になります。
【症状が重い場合】
麻痺があるなど重傷の場合は外科手術を行う必要があります。
原因と予防
ミニチュア・ダックスフンドは、体型的に普段から背骨に負担がかかりやすく椎間板ヘルニアになりやすいです。遺伝や加齢が原因で発症することもありますが、激しい運動や肥満などでより背骨に負担がかかってしまうような生活を送っていると椎間板ヘルニアのリスクは高くなります。室内で飼育されている場合に滑りやすい床も脊髄に負担がかかるため椎間板ヘルニアのリスクは高くなります。
- 遺伝
- 加齢
- 肥満
- 激しい運動
- 滑りやすい床
椎間板ヘルニアの予防には肥満にならないように体重管理をしっかり行う事と脊髄に負担がかかるような激しい運動をできるだけ避ける事です。肥満はさまざまな病気の原因になってしまいます。欲しがるままにかわいいからとおやつをあげてしまい太らせることのないように気を付けましょう。犬の健康的な食生活と適度な運動は愛犬のQOLには重要です。また、愛犬の暮らすスペースが滑りやすい床材であれば絨毯を引いたり、マットを引いたりなど滑り止めの対策を行うようにしましょう。
目の病気
ミニチュア・ダックスフンドは、目の病気にかかりやすい犬種です。目の病気は遺伝性の病気と後天性の病気の場合があります。
白内障
白内障は、目の水晶体が濁り(白濁)視力が低下していく病気です。白内障には先天的な場合と後天的な場合があります。ダックスフンドは、遺伝性の病気も多いため先天的な白内障の場合もあります。
原因 | |
---|---|
先天性白内障 | 生まれつき水晶体が濁っている |
後天性白内障 | 外傷・糖尿病・加齢など |
【症状】
白内障の症状は4つのステージに分けられます。白内障は徐々に視力が低下し失明してしまう病気です。初期の段階で飼い主が見分ける事はなかなか難しいため定期的な健康診断などで動物病院で確認してもらうことにより早期発見、早期治療が可能となるでしょう。
- 目が白い
- 物にぶつかる
- つまずく
- よろける
ステージ | 症状 |
---|---|
1.初発白内障 | 白濁が水晶体のふちにみられる状態です。視力低下などの自覚症状はまだ感じられません。 |
2.未熟白内障 | 白濁が水晶体の中に見えてきている状態です。視界がかすんだり、ぼやけたり、視覚障害が現れ始めるころです。 |
3.成熟白内障 | 白濁が水晶体全体に及んでいる状態です。このころになると視力の低下が著しい状態です。 |
4.過熟白内障 | 失明してしまう前の状態です。 |
【治療】
症状を抑える目薬の点眼による内科的治療、手術による外科治療がある。治療方針は、症状のステージにより獣医師と相談してきめましょう。
緑内障
緑内障は、何らかの原因により眼圧が高くなってしまうことで視神経を圧迫し目に痛みを伴う病気です。緑内障の原因ははっきりわかっていませんが、ダックスフンドも遺伝的になりやすい犬種となっているため注意しましょう。
【症状】
目に痛みがでるため元気がなくなったり、涙が増えたなどの症状があります。症状が進行すると目が充血し角膜に濁りが見えるようになり失明してしまう危険性のある病気です。
- 元気がない
- 涙が増えた
- 充血している
- 目が濁っている
【治療】
眼圧が高くなっていることが原因のため、眼圧を下げる治療がメインとなります。点眼薬や点滴で眼圧を下げる内科的治療や手術による外科治療があります。
進行性網膜萎縮症
進行性網膜萎縮症は、網膜細胞が萎縮する目の病気で次第に光を感知できなくなっていきます。遺伝性の病気のため発症すると完治が難しく最終的には失明してしまう怖い病気でもあります。ダックスフンドは進行性網膜萎縮症になることが多い犬種であることが分かっています。進行性網膜萎縮症の原因は常染色体劣性遺伝で起こります。従って、この遺伝子を持つ犬同士の交配を行わないことです。
【症状】
犬の網膜は人とは異なり暗い所でも物が見えるように眼底にタペタム(輝板)という構造があります。人とは異なる網膜構造となっている犬の網膜に障害を及ぼし光を感知できなくなってしまうため、初期症状としては、夜になるとよく物にぶつかるようになったなどの症状が見られます。症状が進行すると昼間も光を感じなくなり失明していきます。
【治療】
発症した犬に有効な治療方法は見つかっていません。進行を遅らせるための栄養補助食品の投与など悪化のスピードを遅らせる治療が中心となります。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、副腎(腎臓の側にあるホルモンを分泌する臓器)から分泌されるコルチゾールの作用が過剰になる事でさまざまな身体的負担を発症する病気です。
症状
犬のクッシング症候群は食欲の低下や下痢、嘔吐などの異変があまり見られず飼い主が気付きにくい病気です。皮膚のトラブルや多飲多尿などで動物病院を受診した際に診断されることが多いようです。
- 多飲多尿
- お腹の垂れ
- 皮膚のトラブル(毛が薄くなる、感染症、脱毛など)
- お腹の垂れ(丸みを帯びている)
- 呼吸の乱れ(パンティング)
- 歩行障害(歩きたがらない)など
クッシング症候群は高齢の犬が発症する事が多く、いずれの症状も老化現象と同じようにも思えます。体力の衰えによる変化だとして動物病院への受診が遅れてしまう事も考えられます。愛犬の異変を早期発見するためにも定期的な健康診断を行ってあげるとよいでしょう。
原因
【自然発生の場合】
- 脳下垂体腫瘍によるもの
- 副腎自体に腫瘍ができた場合
【医原性の場合】
クッシング症候群は1.や2.の原因で自然発生した場合の他に、治療のために行っていた医療行為が原因でクッシング症候群と同じような症状が出てしまう場合があります。症状はクッシング症候群と同じですが医原性の場合の治療は治療のために行っていた医療行為を考慮して判断されます。
予防と治療法
犬のクッシング症候群の予防法は現在見つかっていません。
【脳下垂体腫瘍によるものの場合】
早期発見の場合は、内服薬による内科的な治療がメインになります。腫瘍が大きい場合は、放射線治療が中心となります。
【副腎自体に腫瘍ができた場合】
腫瘍が良性で外科手術が可能であれば外科手術で切除を行います。悪性の場合も手術で除去を行いますが、予後が悪い場合があります。外科手術が難しい場合は内服薬の使用で治療を行っていきます。
【医原性による場合】
医原性の場合は、治療のために行っていた医療行為が原因でクッシング症候群と同じような症状が出てしまっているため、治療のために行っていたステロイド剤の投与を少しずつ減らしていくなど行う事で自然に改善していきます。
犬の治療費は全額飼い主負担
犬には人間のような公的医療保険はないので、治療費は全額飼い主負担となってしまいます。そのため、長期間の通院が必要になったり入院や手術が必要になったりすると、治療費として数万円、数十万円とかかってしまうこともあります。十分な収入・貯蓄があるので問題なく払えるという場合はよいのですが、そうでないのであればペット保険の加入を検討しましょう。
ペット保険に加入していれば、補償の対象となる診療についてその費用を限度額や一定割合の範囲内で補償する保険です。限度額は通院1日あたりいくら、年間いくらまで、手術1回あたりいくらまでというような形で決められていて、補償割合は50%や70%を選択肢として選べることが多いですが、中には80~100%の補償割合を選択することができるものもあります。例えば、補償割合が70%のペット保険に契約していて、治療費として10,000円かかった場合、保険金を請求することで7,000円受け取れるというような形です(免責金額の設定がある場合はこれより少なくなる場合があります)。
ペット保険は基本的に加入できる年齢に上限があり、多くは8歳~12歳で設定されています。また、人間の保険と同じように、病気になったらペット保険には加入しづらくなったりその部位の補償を受けられなくなったりしてしまいます。選択肢が多くなる若くて健康なうちにペット保険の検討をすすめましょう。
先天性の病気はペット保険の補償対象外のことが多い
ミニチュア・ダックスフンドのかかりやすい病気には先天性と考えられる病気も多くあります。ペット保険では、既往症、先天性疾患やワクチンなどの予防接種により予防できる病気などは補償の対象外となっています。ペットに先天性の疾患がある事が分かっているのであればこの時にその内容を申告しなければいけません。飼っているミニチュア・ダックスフンドに先天的な疾患があり、医療費をカバーするためにペット保険に加入しても先天的な疾患での医療費は補償されないことがほとんどでしょう。
ミニチュア・ダックスフンドが注意したい主な病気をいくつか紹介しましたが、愛犬がどのような病気になってしまうかは分かりません。ペット保険はペットが健康な時に将来大きな病気やケガで必要になるかもしれない医療費に備えて加入するものです。後天性の病気は人間同様に将来どのような病気になってしまうかという事は分かりません。将来、必要になるかもしれない医療費については、総合的に考えペット保険が必要かどうかを選択しましょう。
まとめ
犬は犬種によってかかりやすい病気が異なります。ミニチュア・ダックスフンドは、目の病気に注意する必要がありそうです。ミニチュア・ダックスフンドの平均寿命は10歳以上とペット保険の加入条件とされている年齢を約5年超えています。老齢期の犬はケガや病気のリスクも高くなり、医療費の負担も多くなる事が予想されます。犬には公的医療保険がないので治療費は全額飼い主の負担となってしまいます。何度も通院が必要になったり、入院・手術が必要になったりした場合には数万円、数十万円といった額がかかることもあります。老後のことも考え、こうした負担に耐えられそうにないのであれば、若く健康な時にペット保険に加入して自己負担額を抑えることを検討しましょう。