犬には換毛期があるため、時期によっては大量に毛が抜けることがあります。しかし、毛の抜け方や皮膚の状態によっては病気が隠れていることもあります。愛犬の病気を早期発見するためにも、注意したい抜け毛を知っておきましょう。
抜け毛の原因
美しい毛並みを持っている犬ですが、多かれ少なかれ定期的に毛が抜けるものです。特に換毛期は大量に毛が抜けるため不安になってしまうかもしれませんが、新しい毛に生え替わるために必要なことなので心配いりません。しかし、病気によって毛が抜けることもありますので、愛犬の様子には注意しましょう。
換毛期
普段生活している中でも毛が抜けることがありますが、特に毛が抜けて夏毛や冬毛に生え替わる時期を換毛期といいます。換毛期は春(5~7月頃)と秋(9~11月頃)の年2回あります。ダブルコートの犬種には換毛期があり、主な犬種としては柴犬、コーギー、パグ、ポメラニアン、ゴールデン・レトリーバーなどです。逆にシングルコートの犬種は換毛期がなく、トイ・プードルやヨークシャーテリアなどは抜け毛が少ないのが特徴です。
室内飼いの犬で温度が一定に保たれた環境で過ごしている場合は換毛期がずれたり、換毛が中途半端になってしまったりすることもあるようです。
また、抜け毛をそのままにすると毛玉ができやすくなり皮膚炎につながる可能性があります。換毛期を迎えたらこまめにブラッシングをし、シャンプーで抜け毛や汚れを洗い流すなどお手入れをしてあげましょう。
ストレス
犬はストレスを感じると体を掻く、自分の足を舐めるなどのストレス行動を起こし毛が抜けることがあります。犬がストレスを感じる原因は、運動不足や長時間のお留守番、同居のペットが増えることなどによる環境の変化等様々です。ストレスを感じると攻撃的になる、食欲がなくなるなど抜け毛以外の症状が出ることもあります。散歩を増やして運動不足を解消したり、スキンシップや遊びを増やしたりして愛犬のストレスを発散させ、ストレスのない環境を作ってあげましょう。
注意したい抜け毛の症状
換毛期は体全体の毛が生え替わりますが、体の一部分だけ毛が抜ける場合や換毛期以外に大量に毛が抜ける場合は病気の可能性があります。以下のような症状が出ている時は特に注意が必要です。
- 皮膚が見えるほど脱毛している
- 体の一部分だけ脱毛している
- 左右対称に脱毛している
- 皮膚に赤みがある
- フケが出ている
- かゆがっている
換毛期でも抜け毛が体にまとわりついたり毛玉ができたりしてかゆがることはありますが、皮膚を激しく搔きむしる場合や特定の部位だけ脱毛している場合は病気のサインかもしれません。日頃のスキンシップで皮膚の状態をチェックし、抜け毛の症状に気付けるようにしておきたいですね。
抜け毛の原因となる病気は?
抜け毛が原因となる病気は、感染症、アレルギー性疾患、ホルモン性疾患、遺伝性疾患などがあります。感染症やアレルギー性疾患皮膚炎はかゆみを伴うため犬が皮膚をかいて抜け毛が出ることもありますが、ホルモン性疾患や遺伝性疾患はかゆみが出ないこともあります。病気によって治療法も異なるため、愛犬の様子に気になるところがあれば動物病院を受診することをおすすめします。
感染症
膿皮症
犬の皮膚にはもともとブドウ球菌などの細菌が常在していますが、免疫力の低下などで細菌が異常増殖すると皮膚炎を引き起こします。発症すると皮膚に湿疹や黄色っぽいフケが出ます。痒みを伴うため、掻きむしると脱毛やかさぶたができることもあります。抗生物質による内服薬で治療を行う事が一般的です。
マラセチア皮膚炎
マラセチアというカビが過剰に増えると、皮膚の赤みや痒み、色素沈着などの症状が出ます。マラセチアは皮脂をエサにしているため、高温多湿な環境や脂っぽい皮膚の犬種(シーズー、ミニチュア・シュナウザーなど)に起こりやすい皮膚炎です。殺菌作用のある薬用シャンプーや塗り薬を治療に使用することもあります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌というカビが皮膚や爪、毛などに侵入し増殖することでフケや脱毛、皮膚の赤みなどの症状が出ます。皮膚糸状菌症に感染しても自然治癒していく可能性が高いですが、皮膚の深部までカビが侵入して炎症が慢性化している場合は抗真菌薬や抗生剤で治療します。感染部位に接触すると他の犬や猫、人にも感染する可能性があります。抜け毛やフケからも感染するので部屋をきれいに保つことも大事になります。
ニキビダニ症
ニキビダニはほぼ100%の哺乳類に寄生しているダニですが、通常は害のないダニです。しかし、免疫力の低下などの要因でニキビダニが増殖すると、2~3cmほどの脱毛や皮膚の痒みやフケ、発疹を引き起こすことがあります。
アレルギー性疾患
食物アレルギー
食物アレルギーは食物中の主にタンパク質に対して過剰な免疫反応が起こり、顔周りなどに皮膚の痒みや赤みが出るのが特徴です。下痢や嘔吐などの症状が出ることもあります。1歳未満の若い犬に発症する事が多いです。食物アレルギーの原因となる食べ物を特定し、除去食を与えていくことで対処していきます。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎はダニやハウスダスト、花粉、特定の食べ物などの環境中のアレルゲン(抗原)に対する過剰な免疫反応が原因で皮膚に痒みが生じます。1歳~3歳程度の犬が発症する事が多く、強い痒みから皮膚を掻きむしったり、痒い場所を舐めたりすることで皮膚に炎症や脱毛、色素沈着などの症状が出ます。
ホルモン性疾患
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
クッシング症候群は副腎から出るホルモンが必要以上に分泌されることによって発症します。症状としては水を飲む量が増えて尿の量も増えるのが特徴ですが、皮膚が薄くなって痒みや炎症が起き脱毛が見られることがあります。原因によっては摘出手術や放射線治療を行うことがあります。
甲状腺機能低下症
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが少なくなることによって起きるのが甲状腺機能低下症です。全身の代謝を促進する甲状腺ホルモンが少なくなると、元気がなくなる・疲れやすくなるなどの体の変化が出ます。また、皮膚の初期症状として色素沈着や脱毛、ベタつき、フケ、毛ツヤが悪いなどといった異常が見られるようになります。甲状腺機能低下症と診断された場合、甲状腺ホルモンの投薬で治療を行っていきます。
遺伝性疾患
淡色被毛脱毛症/黒色被毛形成異常症
淡色被毛脱毛症はブルーやフォーンなどの淡い色の毛の部分だけ脱毛し、黒色被毛形成異常症は2色以上の被毛がある犬の黒い色の毛の部分だけ脱毛する病気です。
どちらも遺伝性の疾患で、毛の中のメラニンが過剰になった部分が脆くなるため、折れやすくなり脱毛する病気ですが痒みはありません。比較的若い年齢の犬に発症する事が多く、該当の色の部分だけ完全に脱毛するのが特徴です。
パターン脱毛症
パターン脱毛症は左右対称性の脱毛が起こりますが皮膚の痒みや赤みはありません。比較的若い年齢の犬に発症し、年々脱毛が進行していくことが多いようです。
脱毛症X(アロペシアX)
脱毛症Xは毛が生え替わるサイクルが止まり、頭と足以外の毛が抜けてしまいますがかゆみを伴いません。ポメラニアンに多く見られる病気ですが、脱毛以外の症状はなく、健康に影響はないと考えられています。原因不明のため「脱毛症X」と呼ばれています。
まとめ
一口に脱毛といってもその原因は感染症やアレルギー、ホルモン性疾患など様々です。換毛期が終わっても抜け毛が多い、体の一部分だけ抜けたりかゆがっている様子がある場合は病気の可能性が考えられます。原因を突き止めて治療するには飼い主の判断だけでは難しいため、愛犬に気になる様子があったら獣医さんに相談しましょう。病気の原因によっては手術をしたり長期間病院へ通院して治療をするケースもありますが、愛犬の治療のためにかかるお金は全額飼い主の自己負担となります。治療によっては高額になる可能性があるため、愛犬に何かあった時でも金銭面の不安を減らしたい場合はペット保険の加入を検討してみましょう。
ペット保険とは
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。一定の限度額以内であれば保険対象の治療費の100%を補償するというプランもありますが、多くのペット保険では治療の70%や50%を補償するという形になっています。さらに、ペット保険は基本補償である「通院補償」「入院補償」「手術補償」の組み合わせで選択し加入します。