愛犬が体をかゆがって頻繁に皮膚を肢でカキカキしていているような様子があるとかわいそうですよね。犬は体毛があるため皮膚の変化になかなか気付きにくいですが、フケも多く臭いも気になるようになってきたといった時には皮膚トラブルを抱えているのかもしれません。皮膚がベタベタしている様子があれば「マラセチア性皮膚炎」という皮膚炎を患っているために体にかゆみが出ている可能性があります。マラセチア性皮膚炎とはどのような病気なのでしょう。原因や予防法についても紹介します。
目次
「マラセチア性皮膚炎」とはどんな病気?
マラセチア性皮膚炎は犬の病気の中で一般的で犬がかかりやすい皮膚の病気です。発症すると体のかゆみでストレスも増え、体を掻きすぎることによりできる掻き傷で出血を伴ったり免疫力の低下から違う病気を発症してしまう心配もあります。
マラセチアとは?
マラセチアとは、皮膚に常在している常在菌です。ヒトを含む恒温動物の皮膚に常在する真菌(カビ)で、健康な皮膚の状態では悪さをすることはありません。しかし、犬の皮脂に常在するマラセチア菌は、犬の皮脂をエサに生きており、犬の皮脂が過剰に分泌されるとマラセチアが増殖し皮膚炎を起こしてしまうのです。
マラセチア菌は、湿度の高い環境で増殖しやすいという特徴があります。そのため犬の皮膚の状態悪化により犬が皮膚を舐めたり掻いたりすると更に皮膚の湿度が高くなるためマラセチア菌の増殖が激しくなるといった悪循環に繋がります。
マラセチア性皮膚炎の症状
強い痒みを伴うため、犬が痒がることで痒い場所を掻く行動をとります。皮膚で過剰に皮脂が作られるため脂漏性(しろうせい)の臭気がするようになります。皮膚が油っぽい臭いでベタついており、皮脂が過剰に分泌しているため脂漏症を発症している状態です。
皮脂症により犬の皮脂をエサに常在しているマラセチアが増加してしまうため皮膚に強いかゆみが生じるようになります。かゆみから皮膚を掻くことで皮膚に出血を伴うほどの掻き傷ができたりすると傷から細菌感染を引き起こしてしまい症状の悪化や回復を遅らせてしまうこともあります。犬の皮膚は1番外側の角質層が人の1/3ほどしかなく刺激や乾燥に弱いといった特徴がありますが、皮膚の悪い状態が長く続くと正常な角質細胞が作られづらくなるため皮膚が分厚くなったりします。マラセチア性皮膚炎の症状が長く続くとメラニン色素が沈着し、皮膚が黒ずんでいくようになります。皮膚が硬くなりフケが増え毛艶がわるくなるため、見た目にも皮膚の状態が悪いことが分かるようになります。
皮膚は体外の異物や微生物から体を守る役割もあります。皮膚の状態が悪くなると正常な皮膚では増殖する事のない細菌や真菌(カビ)の働きが活発になり、新たな皮膚炎を引き起こす心配もあります。
【マラセチア性皮膚炎の悪化】
- 強い痒み
- 皮膚の赤み
- ベタつきのあるフケ
- 油っぽい臭気
- 出血を伴う掻き傷
- 皮膚が黒ずむ
- 皮膚が厚くなる
マラセチア性皮膚炎に伴う「脂漏症」
犬の皮脂症はマラセチア性皮膚炎の原因となる病気と言える皮脂が過剰分泌してしまう症状です。
犬の皮膚の機能が低下し状態が悪くなる事で犬の皮膚が脂っぽくなっていたり、乾燥しすぎていたりすることで皮脂が過剰に作られようになります。皮脂が過剰に分泌されることによりマラセチア性皮膚炎を発症してしまう場合や痒みで犬が引っ掻いたり、舐めたりしてしまうことによる二次的な症状に繋がることもあります。
マラセチア性皮膚炎の原因
前項で説明したマラセチア性皮膚炎の原因をまとめると犬の皮膚の状態が悪くなり皮脂が過剰に分泌されてしまう「皮脂症」の状態となると皮脂をエサにして犬の皮膚に常在しているマラセチア菌が増殖することが原因となります。
マラセチア菌は、皮脂症の他にも犬の皮膚の状態が悪く他の症状で皮膚の状態が悪いときに発症することがあります。皮脂症が悪化してマラセチア性皮膚炎を発症してしまうようにマラセチア性皮膚炎は二次感染として発症してしまうことが多いです。
犬の皮膚病も犬のアトピー性皮膚炎やマラセチア菌以外の真菌による皮膚炎などもあります。犬は皮膚炎になりやすい動物で最初にかかった症状による皮膚のかゆみから掻くことで症状が治りづらく悪化してしまったり、二次感染を発症させてしまうことも多いです。
【マラセチアの原因となる皮膚炎】
- 脂漏症
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー性皮膚炎
- 皮膚糸状菌症 など
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マラセチア性皮膚炎になりやすい犬種
マラセチア菌は皮脂をエサにしているため皮脂の分泌が多く皮膚炎になりやすい犬種はマラセチア性皮膚炎にかかりやすいです。マラセチア菌は湿度の高い状態を好むため日本で犬を飼育している場合には梅雨のシーズンにマラセチア性皮膚炎にかかる犬が増えると言われています。
また、発症しやすい部位には、口回りや耳、顎、太もも、脇、足先などがあります。耳はたち耳の犬よりもたれ耳の犬の方が耳がふさがれていることにより湿度が高い状態になりやすいためマラセチア菌が増殖しやすくマラセチア菌の増殖による外耳炎といった症状を発症しやすいです。
【マラセチア性皮膚炎になりやすい犬種】
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- シー・ズー
- シェットランド・シープドッグ
- 柴犬
- ダックスフンド
- パグ
- フレンチ・ブルドッグ
- ブルドッグ
- プードル
【発症しやすい部位】
- 口回り
- 耳
- 顎
- 太もも
- 脇
- 足先 など
マラセチア性皮膚炎の治療法
愛犬が体を頻繁に搔いている、被毛がベタついておりフケが増えた、油っぽい臭気がするといったような症状があれば早めに動物病院を受診し状態が悪化する前に治療を開始する事が大切です。
動物病院では、皮膚の一部を採取し顕微鏡でマラセチア菌の異常繁殖を確認するとマラセチア性皮膚炎と確認されます。早い段階で動物病院を受診しマラセチア菌の異常繁殖で皮膚炎を発症している範囲が狭い場合は抗真菌の塗り薬で対応することもありますが、基本的には抗真菌の飲み薬で治療をしていくことになります。
マラセチア性皮膚炎は他の皮膚炎に感染していることも多い病気です。他の皮膚炎からマラセチア性皮膚炎を二次感染することも多いことが分かっています。そのため、他の皮膚炎の症状がないかも確認し、症状にあった薬の投与で根本となっている原因を治療していくことも必要になります。
マラセチア性皮膚炎の予防法
マラセチア性皮膚炎の予防で重要なことはマラセチア菌の異常増殖をさせないことです。マラセチア菌を異常増殖させないためには、犬の皮膚の状態を良好に保っておくことが大切です。皮膚の状態を良好に保ち、マラセチア菌を増殖させてしまう原因となる他の皮膚炎の発症を予防することが必要になります。
皮膚の状態を良好に保つには、バランスの良い食事を心掛け皮膚の健康をサポートする事が大切です。アレルギーがある犬の場合はアレルギー物質を避ける事が必要になるでしょう。バランスの良い食事と適度な運動と快適な生活環境でストレスのない日々を送ることが免疫力のアップに重要です。免疫のバランスをサポートするために犬用のサプリメントや漢方なども販売されています。動物病院で紹介される場合もありますので利用してみるのもよいでしょう。
また、犬は室外を散歩します。ノミやダニの予防は定期的に行ってあげることも必要です。定期的なケアでは、ブラッシングやシャンプーも皮膚をより良い状態に保つことに役立ちます。犬用の薬用のシャンプーなども販売されていますのでマラセチア性皮膚炎になりやすい犬種を飼っている人は特に意識してみるとよいでしょう。
マラセチア性皮膚炎とペット保険
犬には人間のような公的医療保険制度がありません。そのため、愛犬が皮膚の異常で動物病院で治療を受けたり、通院が必要になったりした場合、その治療費や薬代は飼い主の全額自己負担となります。しかし、ペット保険への加入があれば、皮膚病の治療費は補償対象となるためかかった治療費を限度額や一定割合の範囲内で補償してもらう事ができます。
マラセチア性皮膚炎で通院が必要になったとき、通院毎の治療費や薬代は飼い主にとって予期せぬ出費になってしまうこともあります。ペット保険はペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償するもので基本補償である「通院補償」「入院補償」「手術補償」の組み合わせで選択し加入します。通院が必要になることの多いマラセチア性皮膚炎ではペット保険の通院補償の補償があれば通院でかかった医療費や薬代をペット保険でカバーすることができます。犬は皮膚病になりやすい動物です。また、愛犬が突然入院や手術が必要な病気やケガを負ってしまうかもしれない医療費についても考えておく必要があります。飼い主は、愛犬が病気やけがをしてしまった時の医療費にペット保険が必要かどうかについて検討しておくとよいでしょう。