猫には換毛期がありますが、毛が大量に抜けると心配になりますよね。地肌が見えるほど脱毛したり、体の一部分だけ毛が抜けたりしている時には病気などのサインかもしれません。猫が脱毛した時に注意したい点を確認しておきましょう。
脱毛の原因
猫は定期的に毛が生え替わり、特に換毛期には大量に毛が抜けることがあります。普通は新しい毛が生えてくるため心配いりませんが、病気が隠れていることもあります。
換毛期
普段生活している中でも毛が抜けることがありますが、特に毛が抜けて夏毛や冬毛に生え替わる時期を換毛期といいます。換毛期は春(5~7月頃)と秋(9~11月頃)の年2回あります。なお、室内飼いで温度が一定に保たれた環境で過ごしている場合は換毛期がずれたり、換毛が中途半端になってしまったりすることもあるようです。
換毛期があるのはダブルコートの猫で、アメリカン・ショートヘア、スコティッシュ・フォールド、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、ペルシャなどが代表的です。換毛期の際は多くの毛が抜けるため、部屋中が猫の毛だらけになり掃除に追われることも少なくありません。
逆にシングルコートの猫には換毛期がないため抜け毛が少ないといわれています。シングルコートの主な猫としてはシャム、シンガプーラ、ベンガル、メインクーンなどです。
また、抜け毛をそのままにするとダニやカビの温床となるだけでなく、猫が毛を飲み込んで体内で毛玉になる可能性もあります。換毛期を迎えたらこまめにブラッシングや掃除をしてあげましょう。
栄養不足
食事で十分な栄養が摂れていないと毛が抜けてしまうことがあります。毛を作るにはタンパク質が必要ですが、食事によって十分なタンパク質が摂れない場合は毛が細くなり抜け毛につながることもあります。タンパク質の他にもビタミンAなどの栄養素も皮膚の健康を保つために必要です。栄養バランスのよいフードを与えるようにしましょう。
ストレス
猫がストレスを感じると過度にグルーミング(毛づくろい)をして毛が抜けてしまうことがあります。特に舐めやすい前肢や体の側面、お腹が脱毛しやすいのが特徴です。ストレスの原因は長時間のお留守番、工事などの大きな音、引っ越し、同居のペットが増えることなどによる環境の変化等様々です。猫は環境の変化に弱く、少しの変化でもストレスを感じやすい動物です。愛猫が落ち着いて過ごせるような環境を整えてあげましょう。
注意したい抜け毛の症状
換毛期は体全体の毛が生え替わりますが、体の一部分だけ毛が抜ける場合や換毛期以外に大量に毛が抜ける場合は病気の可能性があります。以下のような症状が出ている時は特に注意が必要です。
- 皮膚が見えるほど脱毛している
- 体の一部分だけ脱毛している
- 皮膚に赤みがある
- フケが出ている
- かゆがっている
換毛期でもかゆがることはありますが、皮膚を激しく搔きむしる場合や特定の部位だけ脱毛している場合は病気のサインかもしれません。日頃のブラッシングやスキンシップで皮膚の状態をチェックし、抜け毛の症状に気付けるようにしておきたいですね。
抜け毛の原因となる病気は?
抜け毛が原因となる病気は、感染症やアレルギーなどがあります。皮膚炎になるとかゆみを伴うため、猫が皮膚をかいて抜け毛が出たりしきりに舐めて毛が切れて薄くなったりすることもあります。病気によって治療法も異なるため、愛猫の様子に気になるところがあれば動物病院を受診しましょう。
感染症
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニが皮膚に寄生すると激しいかゆみを引き起こし、耳や顔、頭に広がります。強く掻きむしるため、皮膚炎や脱毛、かさぶたが見られることがあります。ヒゼンダニは他の猫や人間にもうつることがあるため、駆虫薬を使ってダニを完全に駆除する必要があります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌というカビが皮膚や爪、毛などに侵入し増殖することでフケや脱毛、皮膚の赤みなどの症状が出ます。子猫や老猫など免疫が低い時に感染しやすいです。皮膚の深部までカビが侵入して炎症が慢性化している場合は抗真菌薬や抗生剤で治療します。感染部位に接触すると他の犬や猫、人にも感染する可能性があります。抜け毛やフケからも感染するので部屋をきれいに保つことも大事になります。
マラセチア皮膚炎
マラセチアというカビが過剰に増えると、皮膚の赤みや痒みなどの症状が出ます。猫では耳に感染することが多く外耳炎の原因となっています。強い痒みで患部を掻くと脱毛してしまうケースもあります。マラセチアは皮脂をエサにしているため、高温多湿な環境や脂っぽい皮膚の猫に起こりやすいです。殺菌作用のある薬用シャンプーや塗り薬を治療に使用することもあります。
アレルギー性疾患
食物アレルギー
食物アレルギーは食物中の主にタンパク質に対して過剰な免疫反応が起こり、皮膚に痒みを感じて体を掻く、舐める、噛むといった行動が出るのが特徴です。強い痒みで脱毛することや、下痢や嘔吐などの症状が出ることもあります。食物アレルギーの原因となる食べ物を特定し、除去食を与えていくことで対処していきます。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎はダニやハウスダスト、花粉、特定の食べ物などの環境中のアレルゲン(抗原)に対する過剰な免疫反応が原因で皮膚に痒みが生じます。猫ではヒマラヤン、アビシニヤンなどが発症する事が多いといわれています。強い痒みから皮膚を掻きむしったり、痒い場所を舐めたりすることで皮膚に炎症や脱毛などの症状が出ます。
毛球症に注意!
換毛期等で猫の抜け毛が気になる時には毛球症にも注意しましょう。毛球症とは、猫がグルーミングをする際に飲み込んだ毛が胃や腸に溜まってしまい大きな塊となる状態です。通常の場合はグルーミングで毛を飲み込んでも便として排出されますし、もし胃の中に毛玉が出来ても吐き出すことが多いです。しかし毛玉が大きくなりすぎると食欲不振や嘔吐を繰り返す場合や、腸に詰まって腸閉塞を引き起こす可能性があります。重症の場合は手術で毛玉を取り出すこともありますので、放置せずに動物病院を受診することが大切です。
ペルシャやヒマラヤンなどの長毛種の猫は毛玉ができやすく毛球症になりやすいです。飼い主がブラッシングをしてあげることで、猫がグルーミングをする時に飲み込んでしまう毛の量を抑えることができます。
まとめ
一口に脱毛といってもその原因はストレスや感染症、アレルギーなど様々です。換毛期が終わっても抜け毛が多い、体の一部分だけ抜ける、過剰に毛づくろいをする様子がみられる場合は病気の可能性が考えられます。原因を突き止めて治療するには飼い主の判断だけでは難しいため、愛猫に気になる様子があったらかかりつけの獣医さんに相談しましょう。
病気の原因によっては手術や通院で治療をする必要があります。愛猫の治療費は全て飼い主の自己負担となります。毛づくろいの際に毛を飲み込み、毛玉が詰まって腸閉塞になった場合は手術代が10万円以上もかかることもあります。このように治療によっては高額になる可能性があるため、金銭面の負担を減らしたい場合はペット保険の加入を検討してみましょう。
ペット保険とは
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。一定の限度額以内であれば保険対象の治療費の100%を補償するというプランもありますが、多くのペット保険では治療の70%や50%を補償するという形になっています。さらに、ペット保険は基本補償である「通院補償」「入院補償」「手術補償」の組み合わせで選択し加入します。