まだ施行はされてはいませんが、ペットショップなどで販売する犬や猫にマイクロチップを埋め込むことを義務化する改正動物愛護管理法が2019年6月に可決されています。ペットにマイクロチップを埋め込むことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?また、何か注意点はあるのでしょうか?
目次
マイクロチップはどんなもの?
ペットに埋め込むマイクロチップは直径2㎜、長さ約8~12㎜の円筒形の電子標識器具で、内部はIC、コンデンサ、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスで覆われています。マイクロチップは電池の交換などの必要なく、一度埋め込めば生涯使い続けることができます。マイクロチップにはマイクロチップごとに異なる15桁の数字が記録されていて、この番号は専用のリーダーで読み取ることができます。データベースにマイクロチップの番号と飼い主の名前、住所、連絡先などのデータを登録することで、迷子になってしまったペットが保護されたときにペットが飼い主の元に返還されやすくなります。データベースの検索にはIDとパスワードが必要で、マイクロチップの番号を知った一般の人が個人情報を検索するということはありません。
データ管理を行っている団体は一つではありませんが、最もメジャーなのはAIPO(動物ID普及推進会議)です。AIPOは日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、日本獣医師会によって組織されています。AIPOしか存在を知らない人も多いので、AIPOに登録がない場合はAIPOへの登録をおすすめします。
マイクロチップ装着のメリット
迷子のときに戻ってきやすくなる
ペットにマイクロチップを装着してデータベースにマイクロチップの番号と飼い主の情報を登録しておけば、万が一ペットが迷子になってしまったときでも飼い主の元に返還されやすくなります。マイクロチップは体内に埋め込むものなので、迷子札のように外れてなくなってしまうということはありません。室内飼いで迷子の心配はないと思っていても、災害時や脱走などで迷子となってしまう可能性もあります。最近は自然災害による被害も増えてきているので、災害時の迷子対策としても重要でしょう。
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盗難時に自分が飼い主だと証明できる
ペットの盗難にあってしまった場合、その後にペットを見つけたとしても自分のペットだと証明するのは困難です。ただ似ているだけだと言い張られてしまった場合、それを覆すことができる証拠というのもなかなかありません。しかし、マイクロチップを装着してデータベースに登録してあれば、自分が飼い主だと証明することができます。
ペット保険の保険料が安くなる
ペット保険の中にはペットにマイクロチップを装着していることで保険料の割引を受けられるものもあります。ペットには公的医療保険がなく治療費が全額飼い主負担となるので、高額な治療費の支払いに備えるためにペット保険には加入しておきたいところです。すべての保険会社で割引を受けられるわけではなく、割引額もそれほど大きくはありませんが、少しでも割引を受けられるのはうれしいところでしょう。
遺棄の防止
社会的なメリットとしてですが、責任感のない飼い主がペットを捨ててしまうことを防ぐことができます。マイクロチップが装着されていればデータベースと照合して飼い主の氏名や連絡先を知ることができます。そのため、安易にペットを捨ててしまうのを思いとどまらせる効果があります。
マイクロチップの注意点
データベースに登録しなければ意味がない
マイクロチップに記録されているのは15桁の番号のみです。データベースに番号と飼い主の情報を登録しなければ意味がありません。東日本大震災の時などでもマイクロチップを装着していてもデータベースに登録していなくて飼い主が分からなかったという事例も発生しています。装着だけでなくデータベースへの登録もしっかりと行うようにしましょう。また、引っ越しをしたときなどは登録情報の更新を行いましょう。
参考:日本獣医師会
埋め込み時に痛みを伴う
マイクロチップは注射器のようなものでペットの体内に埋め込みます。そのため、埋め込みのときには少なからず痛みを伴うことになります。動物病院によっては希望により局所麻酔を行ってくれる場合もあります。また、麻酔下で手術を行う去勢・避妊手術のときに一緒に装着を行うこともあります。
費用がかかる
マイクロチップの装着やデータベースへの登録も無料ではありません。動物の診療は自由診療なのでマイクロチップの装着に決まった値段はありませんが、大体5,000円前後のところが多いようです。また、データベースへの登録も費用がかかります。しかしこちらは登録時に1,000円のみで更新料などはかかりません(AIPOの場合)。
マイクロチップ装着が義務化!?
2019年6月12日に犬・猫のマイクロチップ装着の義務化の内容を含んだ改正動物愛護管理法が成立しました。2022年6月までに施行されることになっています。施行後はペットショップなどの販売業者に対してマイクロチップの装着と所有者情報の登録が義務化されます。一般の飼い主については努力義務にとどめられています。つまり、知人からもらったり捨てられているのを拾ったりした場合やすでに飼っている犬や猫については完全に義務化されるわけではありません。ただし、災害などで万が一ペットと離れ離れになってしまったことを考えると装着することが望ましいでしょう。
まとめ
マイクロチップを装着して番号と飼い主の情報をデータベースに登録することで、ペットが迷子になってしまい保護された後に飼い主の元に戻ってくる可能性が高くなります。迷子札でも一定の効果はありますが、マイクロチップは体内に埋め込むので外れてなくなってしまうこともありません。また、販売業者に対してマイクロチップの装着を義務付ける法律も成立されています。今後はマイクロチップの装着率も上昇していくことになるでしょう。