7月、8月になると各地で真夏日や猛暑日が増えてきます。気温が高くなると心配になるのが熱中症です。猫は暑さに強い動物ですが、梅雨が明けて暑い日が続くと人間と同様に熱中症になる可能性があります。そこで熱中症の対処法や防ぐための対策などを紹介します。
猫の熱中症
熱中症とは、暑い環境で過ごすことで体温の調節機能が働かなくなり体内に熱がこもってしまう状態です。熱中症によってさまざまな症状を起こすことがあり、後遺症が残る場合や最悪の場合は死に至ってしまうこともある怖い病気です。
気温が高いと熱中症になりやすいイメージがありますが、湿度の高さも熱中症に関係してきます。湿度が65%~70%を超えると蒸し暑く感じ熱中症の危険が高くなります。室内飼育の猫も温度と湿度に注意しましょう。
猫は人と比べて汗腺が発達していないため、汗をかいて体温調節を行うことが苦手です。冷たい床や家具に体を寄せたり、グルーミング(被毛をなめて毛づくろいする行為)で濡れた毛の気化熱を利用したりして体温調節を行っていますが、日本のような高温多湿の環境ではなかなかうまく調節できません。猫は体調の悪い時でもその様子を隠そうとする動物です。熱中症が進行すると後遺症が残ったり死に至ったりする事がありますので、飼い主が異変にいち早く気付くために熱中症の症状を確認しておきましょう。
症状
- 口で呼吸する
- ぐったりする
- ふらふらしている
- 嘔吐や下痢
犬は暑くなるとハアハアと口で呼吸をして体温調節をしますが、猫は鼻呼吸のためこの方法を取ることはあまりありません。猫が口で呼吸している時はかなり体温が高くなっている可能性があります。上記のサインを見つけたら動物病院を受診しましょう。
対処法
熱中症の疑いがある時は涼しい場所に移動させ体を冷やす応急処置をしてあげましょう。
体を冷やす
体温が高い場合は首や脇など太い血管が通っている箇所を冷やすことが効果的です。保冷剤や氷をタオルで包み、直接当たらないようにしてあげましょう。
水を飲ませる
猫の意識があり水を飲める場合は、少しずつ新鮮な水を飲ませることも体温を下げる効果があります。ぐったりしている時などは強引に飲ませようとすると誤嚥の危険性があるので、自分で水を飲みたがらない時は無理強いをしないことが大事です。
応急処置をした後はできるだけ早く動物病院を受診しましょう。場合によっては点滴や注射などの処置が行われます。重症であれば入院が必要になり、治療が長引くようなこともあるかもしれません。軽い熱中症で応急処置を行ったことにより元気になったとしても、熱中症による臓器への影響はないか検査してもらいましょう。
動物病院での治療が必要となると費用も掛かってしまいます。治療内容にもよりますが、5000円~1万円ほどかかることが多いようです。猫も飼い主も辛い思いをすることになってしまいますので、飼い主が熱中症予防に気を付けてあげることが一番の対策です。
熱中症になりやすい猫は?
- 短頭種の猫
(ペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなど) - 長毛種の猫
(メインクーン、ノルウェージャンフォレストなど) - 子猫
- 高齢の猫
- 肥満の猫
どの猫も熱中症には注意したいですが、鼻がつぶれていて呼吸しづらい短頭種の猫や、ふさふさの毛で熱がこもりやすい長毛種の猫は特に注意が必要です。他にも体温調節機能が低下した子猫や高齢の猫、脂肪で体内に熱がこもりやすい肥満の猫も熱中症になりやすいため気を付けましょう。
猫の暑さ対策
高温多湿な日本の夏で暮らす猫は暑さ対策が必須といえます。猫の健康を守るために必要な対策を紹介します。
室温の調節
猫にとって快適に過ごせる夏場の温度は28度前後、湿度は50~60%といわれています。個体によって適切な気温の差はありますが、人にとって少し暑いなと感じるくらいが猫にとっての適温になります。猫は自分で快適な環境を見つけるのが非常に上手なので、自分でより快適な環境を見つけて休むことができます。しかし猫自身で調整できる範囲は限られているので、猫が寒がっていないか暑がっていないかの様子を観察してあげましょう。
エアコンを使う際には温度を調節するとともに、風が猫に直接当たらないように風向きやベッド・キャットタワーの配置を調節するとよいでしょう。なお、万が一エアコンが止まると室温はどんどん高くなり40度近くになることもあります。リモコンは収納し、猫がリモコンを踏んで電源を切ってしまわないようにすることで思わぬ事故を防げます。また遮光カーテンなどを使用して直射日光を防ぎ、日陰を作れるように工夫するのもよいでしょう。
エアコンを嫌がる場合
エアコンを嫌がる場合は、扇風機やサーキュレーターを部屋の入口に置いて、エアコンのある部屋の冷たい空気と他の部屋の空気を循環するように使うのも良いでしょう。体が冷えすぎると嘔吐や下痢を引き起こしてしまうため、猫が寒いと感じたら別の部屋に移動できるようにし、エアコンの風を遮断できるようなキャットハウスやちぐらなどを活用するのも有効です。
水分補給
夏は水分が不足しやすく、脱水によって熱中症になってしまうこともあります。猫が水分を取れるように、こまめに新鮮な水に変え、水飲み場を複数設置して水分補給しやすい環境を整えてあげることが大切です。また猫は流れている水を好むので、流れる水の給水器を置いたり蛇口から水を飲ませてあげたりしてあげるのもよいでしょう。
水分をあまり摂取しないタイプの猫の場合は水分量の多いウェットフードや猫用のスープなどを活用する方法もあります。
ブラッシング
猫は厚い被毛を持っており、夏の高温多湿の環境では熱がこもりやすくなっています。猫は夏に近づくにつれて冬の防寒性が高い毛から、夏向きの毛に生え変わります。5月~6月ごろにかけて換毛期を迎えるので、この時期は意識してブラッシングしてあげましょう。余計な冬毛を取り除くことで通気性を高め、熱が逃げやすくなります。
一方で室内飼いの猫は換毛期に該当する期間がない場合もあります。ただ猫は換毛期ほどではないにしても、一年中毛が生え変わります。そのため抜け毛を取り除いてあげることで夏の暑さ対策になります。また猫は抜け毛を飲み込んで毛玉を吐き出す習性があります。適度に抜け毛を処理してあげることで抜け毛を飲み込むのを防ぐことができるので、こまめにブラッシングしてあげましょう。
暑さ対策グッズを活用
暑さ対策として、市販のひんやりマットなどのグッズを活用して快適に過ごせる環境を作るのもよいでしょう。
猫用のひんやりマットには大理石・アルミ・接触冷感生地・ジェルなど様々な素材が使われています。値段は高価ですが高級感のある大理石、冷たさがしっかりと伝わりひっかき傷がつきにくいアルミ、丸洗いできてキャリーケースにも敷ける接触冷感生地、程よい冷たさで冷えすぎないジェルなどそれぞれ特徴があります。
注意点として、猫はジェルマットを傷付けてしまうことがあります。ジェルマットには防腐剤など猫にとって安全でない成分が含まれているので、噛み癖がある猫には不向きです。猫や自身のライフスタイルに合わせたグッズを選びましょう。
まとめ
猫は体調が悪くても隠してしまう性質があるため、熱中症などの体調不良に気付いた時には症状が進んでしまっていることもあり得ます。飼い主が愛猫の様子を気にかけてあげて、少しでも「熱中症かも?」と感じた時にはすぐに動物病院を受診しましょう。
動物病院での医療費は飼い主の自己負担となるため、愛猫に少し異変を感じてもはっきりとした体調の悪化が見られないと動物病院への受診をためらってしまうこともあるかもしれません。ペット保険に加入していれば、かかった治療費を一定割合の範囲内で補償してもらう事ができます。愛猫に病気やケガの疑いがあった時にお金の心配をすることなくすぐに動物病院を受診できるようにペット保険があると心強いですね。
ペット保険とは
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。一定の限度額以内であれば保険対象の治療費の100%を補償するというプランもありますが、多くのペット保険では治療の70%や50%を補償するという形になっています。さらに、ペット保険は基本補償である「通院補償」「入院補償」「手術補償」の組み合わせで選択し加入します。
エアコンや暑さ対策グッズを活用して熱中症を予防し、愛猫と一緒に夏を乗り切りましょう。