咽頭炎(いんとうえん)は犬がかかりやすい病気のひとつです。文字通り喉に炎症を起こす咽頭炎はどのような症状を発症するのでしょうか?言葉で不調を伝えることができない愛犬が咽頭炎で苦しむことがないように原因と予防法について確認しておきましょう。
犬の咽頭炎とは?
犬の咽頭炎は喉の部分にある咽頭(鼻部と喉頭部)の粘膜に炎症が起こっている状態です。犬の咽頭炎は突発的に起こる「急性咽頭炎」と慢性的に起こる「慢性咽頭炎」があります。
犬の「急性咽頭炎」
犬が咽頭炎を患ってしまう多くは急性咽頭炎だと言われています。急性咽頭炎は何らかの原因により突発的に起こる咽頭炎で一度完治すれば新たな原因となる出来事がない限り再発する事がない場合です。軽傷であれば比較的短期の1週間程度で改善します。
原因として考えられる多くは、ウイルスに感染して起こる感染症です。犬の感染症に「犬ジステンバーウイルス感染症」や「犬パラインフルエンザウイルス感染症」などがあります。これらの感染症は急性咽頭炎の原因として多いです。鼻の短い犬や小型犬に多い上気道炎から二次的に波及して生じることもあります。
その他にも誤飲や誤食によって喉を傷つけてしまったというような場合、殺虫剤などの薬品や有毒ガスを吸い込んでしまったような時も喉へのダメージで急性咽頭炎になってしまうことがあります。飼い主が吸うたばこの煙が原因で咽頭炎を発症したというケースもあるため飼い主の愛犬との暮らし方にも注意する必要があるかもしれません。
急性咽頭炎の主な原因
- ウイルス感染や細菌による感染症
- 上気道炎からの二次波及
- 誤飲、誤食による喉の損傷
- 薬品、有毒ガスの吸引
- 吠えすぎによる喉の損傷
- 首輪による刺激による喉への損傷
犬の「慢性咽頭炎」
慢性咽頭炎は、長期間に渡って症状の改善が見られず、治療を行っても完治の兆しがないものや一度完治しても慢性的に咽頭炎を再発するといった場合です。常に咽頭に炎症がある状態、または、持病のように咽頭炎を繰り返すといった原因が分からないことも多いようですが、他の病気に伴って起こる二次波及の疾患として起こっている場合が考えられます。
例えば、歯周病や口内炎、口腔内に腫瘍があるなど口腔内に基礎疾患があるような場合、口腔内細菌のバランスが崩れて慢性咽頭炎にもなってしまうことがあります。口腔内だけでなく体に不調があるとストレスを感じたり、食欲不振による栄養バランス、ホルモンバランスの異常などによって慢性咽頭炎になるといったこともあります。
慢性咽頭炎の主な原因
- 口腔内に基礎疾患がある
- 体に病気を患っている
犬の咽頭炎の症状について
咽頭炎を患うと喉の痛み、乾燥などの症状があるため、食欲が低下します。咳や発熱などの症状が出るため元気がなくなり呼吸がうまくでず、息苦しそうな様子があったり、吐き気や嘔吐の症状がある場合もあります。ひどい場合は、呼吸困難や呼吸不全を引き起こす場合もあるため愛犬が咳をしており、食欲不振で元気がない様子があれば動物病院を受診し異常がないか確認してもらうとよいでしょう。
咽頭炎の主な症状
- 喉の痛みや乾燥
- 咳
- 発熱
- 食欲低下
- 元気がない
- 下痢や嘔吐
- 呼吸がうまくできない、息苦しい
- 呼吸困難、呼吸不全
犬の咽頭炎の治療法
咽頭炎の検査・診断は触診によるリンパ節の腫れ具合を確認したり、麻酔を行って咽喉の視診で確認を行います。CTやMRIなどで確認することもできますが、CTやMRIでの確認は、動物病院の施設環境や獣医師の判断によるでしょう。
犬の咽頭炎の治療法は、原因を究明することから始まります。原因や症状によって治療方針は異なります。
抗生物質の投薬
ウイルス感染や細菌による感染症による咽頭炎であれば、抗生物質の投与で治療します。
ステロイド
ステロイドの投与で炎症を鎮静化させたり腫れを和らげる効果があります。
生活環境の改善
誤飲や誤食、薬品、有毒ガスの吸引といったことが原因と考えられる咽頭炎は生活環境の改善で愛犬が同じように誤飲や誤食、毒物の吸引を行ってしまうようなことがないように飼い主が気を付ける必要があります。飼い主がたばこを吸うような場合、愛犬の側では喫煙を行わないなど気を付ける事も考えましょう。
外科手術
咽頭炎の原因が基礎疾患による二次波及であった場合、原因となっている基礎疾患の治療が必要になります。歯周病や腫瘍などの場合は麻酔の上、手術が必要となる場合もあります。こうした場合は獣医師とよく相談し治療方針を決めていきましょう。
予防には
急性咽頭炎の多くは、ウイルスに感染して起こる感染症です。急性咽頭炎の原因となるウイルスに感染しないことが急性咽頭炎の予防になると言えるでしょう。犬の感染症である「犬ジステンバーウイルス感染症」や「犬パラインフルエンザウイルス感染症」は、ワクチンの接種により予防できる感染症です。飼い主が自主的に動物病院などで愛犬に接種させる単体のワクチン及び混合ワクチンがあります。多くの動物病院で混合ワクチンの接種を選択されることが多く、一般的な混合ワクチンには「犬ジステンパーウイルス感染症」や「犬パラインフルエンザウイルス感染症」が含まれています。
急性咽頭炎になってしまう原因に、誤飲や誤食、薬品、有毒ガスの吸引などといった理由もあります。誤飲や誤食、薬品、有毒ガスの吸引などは、咽頭炎だけでなくその他の病気への波及も心配であり、死に至ってしまうこともあるので十分注意する必要があります。誤飲・誤食は飼い主の躾によって予防する事ができます。また、犬が食べてはいけないものを犬が取れそうな場所には置いておかない、片付けを徹底する、家の中などで犬がフリーの時には愛犬が何をしているか目を離さないなどの対策で予防しましょう。
治療はペット保険の補償対象になる?
ペットの医療費は人にあるような健康保険制度がないため全額飼い主の自己負担です。ペットにかかる医療費を軽減するために飼い主がペット保険に加入する事でペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償を受ける事ができます。
ペット保険には、一定の限度額以内であれば保険対象の治療費の100%を補償するというプランもありますが、多くのペット保険では治療の70%や50%を補償するという形になっています。さらに、ペット保険は基本補償である「通院補償」「入院補償」「手術補償」の組み合わせで選択し加入します。ペット保険を販売する各保険会社は、保険料や補償内容が異なる多くの商品が販売されています。ペットの医療費自己負担が心配でペット保険加入を検討している人は、ペット保険を提供する保険会社の保険商品の中から補償内容を十分理解し加入するようにしましょう。
ワクチンで予防できる病気は補償対象外
犬のワクチン接種は、感染症の原因となる病原体に対抗する免疫を体に作るために接種する予防接種です。犬も犬がかかってしまう感染症から予防するためにワクチン接種を行います。急性咽頭炎の原因がワクチン接種で予防可能な感染症が原因だった場合、治療でかかった医療費がペット保険の補償対象外となってしまう可能性があります。ペット保険では、補償対象外となる疾病に起因する疾病も医療費の補償対象外とされていることがほとんどです。
補償対象外となる主な感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬ジステンパーウイルス感染症
- 犬パラインフルエンザ感染症
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス2型感染症
- 狂犬病
- 犬コロナウイルス感染症
- 犬レプトスピラ感染症
- フィラリア感染症