ノルウェージャン・フォレスト・キャットは日本でも人気の高い猫種の猫でその名の通り、ノルウェー、北欧が原産の大型の猫です。「森の妖精」とも呼ばれる美しい容姿でふわふわの被毛で長毛猫です。被毛カラーのバリエーションは豊富で同じ色味であっても個体によって濃淡が異なるためカラー選びも楽しめる人気の猫です。ノルウェージャン・フォレスト・キャットはフレンドリーで温厚な性格ため初心者にも飼いやすいと言われている猫です。寒さの厳しい地域が原産の猫で寒さをしのぐための被毛を持っているノルウェージャン・フォレスト・キャットがかかりやすい病気について紹介します。
目次
ノルウェージャン・フォレスト・キャットの特徴と病気について
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは古くから北欧に生息していた自然発生種の猫です。北ヨーロッパの森林地帯に主に生息していたため厳しい寒さの中で生きていくために発達した大きな体と長くふさふさした被毛を持っています。森の中で狩りを行い生活していたため筋肉質でがっちりとした骨太の体格で大きな体でありながら木に登ることも得意で運動量も豊富です。
自然発生種の猫で野生の中で暮らしていましたが、人懐っこく他のペットや人と関わることを好む性格のため飼いやすい猫と言われています。しかしながら、現代の日本で暮らすノルウェージャン・フォレスト・キャットは、古来から過ごしてきた豊かな森の中を離れて、家庭の中で飼育される家猫です。生活環境の変化で気を付けなければいけない病気もあります。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットの特徴
- 長毛猫
- 寒さに強い豊かな被毛がある
- 大型の猫
- 筋肉質でがっしりとした骨太の体格
身体的特徴による注意したい病気
毛球症
毛球症とは、毛づくろいで飲み込んだ自分の毛が胃の中に溜まってしまい、胃の中で絡まったり胃粘膜を刺激したりして小腸の出口をふさいでしまうなど、消化器官に排出されないで毛玉が溜ってしまう病気です。
毛球症の代表的な症状は嘔吐です。嘔吐したものの中に毛の塊が入っており、1回の嘔吐で胃の中に溜まった毛玉が出てすっきりする場合もありますが、何度も嘔吐を繰り返している場合は、注意が必要です。胃の中に溜まった毛玉が肥大化しており、自分の力で排出することが難しくなっている場合があります。毛玉が胃の中に溜まってしまっている状態なので食欲不振や便秘、下痢などの症状を発症することがあります。
毛球症の治療方法は、軽傷の場合は市販の毛玉除去剤でも対応できます。重症になると胃切開や腸切開による摘出が必要な場合もあります。胃の中に溜まった毛玉で腸閉塞を起している場合は緊急性が高いので愛猫に異変がある場合は動物病院で検査してもらい、獣医師に対応について相談するとよいでしょう。
予防方法
毛球症の予防はブラッシングが効果的です。ブラッシングやシャンプーで毛玉を減らすことができます。また、猫はストレスがあると過度なグルーミングをするようになるのでストレスのない環境を作ってあげることも大切です。牧草(猫草)などの繊維質を多めに与え、食事の時には新鮮な水を用意してあげましょう。水はいつでも飲める状態にしておきます。猫草や高繊維な食事は毛の便への排出を促してくれるため効果的です。
皮膚疾患
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは長毛猫のため皮膚病のリスクが高いです。短毛の猫よりも皮膚の通気性が悪く皮脂の分泌異常が起きてしまう可能性があります。また、菌の感染による「皮膚真菌症」になってしまうことも多いのが長毛の猫です。
愛猫に脱毛や脱毛箇所付近にフケやかさぶたがあるといった症状、痒みで罹患部をよくかいているなどの症状がある場合は動物病院を受診しましょう。
予防方法
定期的なブラッシングで皮膚の状態をケアすることで皮膚病の予防になります。ブラッシングで皮膚に刺激を与える事で皮膚も強くなります。猫は自分でグルーミングを行うため基本的にシャンプーは必要ないですが、長毛種のため数カ月に1回程度毛の中に溜まった汚れを落とすためにもシャンプーを行ってあげてもよいでしょう。
糖尿病
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは厳しい自然環境の中で狩りをして生活していました。ハンターの気質が高く、獲物を捕らえるための発達した筋肉と骨格で大きな体格をしています。自然界では運動することが当たり前の環境で暮らしていたため肥満になってしまうことはあまりなかったでしょう。しかし、家猫となった現代のノルウェージャン・フォレスト・キャットは運動量が減ると肥満になりやすく、肥満が原因でなりやすい糖尿病は現代のノルウェージャン・フォレスト・キャットがかかりやすく注意したい病気です。
猫の糖尿病は、膵臓でインスリンを出していますが、排出される量が不十分で十分な働きができていない状態となって起こる「Ⅱ型の糖尿病」である場合がほとんどで、ノルウェージャン・フォレスト・キャットが糖尿病になってしまうケースも生活習慣や肥満からくるものが原因であることが多いと考えられます。糖尿病と診断を受けるとインスリン注射や食事療法などの治療がスタートすることになります。
治療は、1日1回~2回のインスリン注射と食事療法を行います。猫の糖尿病は、インスリン注射を開始してから膵臓機能が回復し治ることがあります。しかし、治らない場合は一生涯インスリン注射が必要になります。
予防方法
ノルウェージャン・フォレスト・キャットの標準的な体重は、オスが約4.5~7㎏、メスが約3.5~5.5㎏です。猫のボディコンディションをチェックし理想的な体型を維持することが重要です。猫は適正体重の15~20%を上回ると肥満と言われています。猫のボディコンディションスコアも意識しておやつの与えすぎなどには十分注意しましょう。
もともと、ノルウェージャン・フォレスト・キャットは運動量の多い猫です。部屋の中でも適度に運動できる環境を整えてあげることで運動不足解消に努めましょう。猫はタンパク質を栄養源とする肉食動物です。炭水化物が多い食事をしていると太りやすくなります。エサやおやつは猫の特性を考えて与えましょう。
関節炎
猫の関節炎の多くは、関節が変形し痛みが出る変形性関節炎と呼ばれる症状です。猫の中でも大型の猫になるノルウェージャン・フォレスト・キャットは体格が大きく他の猫よりも体重があるために関節に負担がかかりやすく関節炎を発症しやすい猫種です。肥満である場合は通常よりもより関節に負担がかかってしまい関節炎になりやすいと考えられます。
関節炎による主な症状は、関節に急激な痛みを感じたり、慢性的な鈍痛があるといった関節に違和感を覚える疼痛です。このような症状があると痛みからジャンプをしなくなったりという風に運動量が減り、動かないことから肥満やその他の病気へのきっかけになってしまうので注意が必要です。
予防方法
関節炎は、加齢や肥満、外傷などが原因で起こることが多いです。予防は、体重管理と適度な運動、健康的な食事です。年齢を重ねても活発でいるためには健康的な生活習慣が重要です。また、関節サポート用サプリメントを食事と一緒に与えることもよいでしょう。猫用のサプリメントがペットショップなどで販売されているので活用することも予防になるでしょう。
熱中症
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは北欧エリア原産の寒い地域で暮らしていた猫です。寒さに耐えられるようにふわふわの被毛で長毛猫です。寒さには強い特徴がありますが、体温をなかなか逃がすことができず、体内で熱が高まりやすいという特徴もあり暑さには弱いです。湿気の多い熱い日本の夏の夏バテ、熱中症には十分注意する必要があります。
予防方法
夏場は、ノルウェージャン・フォレスト・キャットの生活するエリアは夏バテや熱中症にならないようにエアコンで調節するなど過ごしやすい温度で設定してあげるとよいでしょう。猫は自分で心地よく過ごせる場所を見つける能力が高い動物です。遮光カーテンや暑さ対策グッズ、もしくは別の部屋と自由に行き来できるよう環境を整えるだけでも効果的です。
注意したい病気
ノルウェージャン・フォレスト・キャットが発症しやすいとされている注意したい病気を紹介します。
肥大型心筋症
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは肥大型心筋症の発症例が多い猫です。猫の肥大型心筋症は遺伝的な要素が強いと言われており、発症要因は詳しく分かっていません。
肥大型心筋症は、心臓の構造に異常が生じることで血液を全身に送り出しにくくなる病気で猫で最もポピュラーな心臓病です。肥大型心筋症は、左心室の心筋が進行性に肥厚していく病気で初期にはほとんど症状が見られませんが、気づかないうちに症状が進行していると突然死や後駆麻痺などの劇的な症状が前触れなく訪れることがある怖い病気です。愛猫に呼吸や活動量、食欲が衰えてきた、咳をすることが増えたなどの症状があれば、動物病院に相談してみるとよいでしょう。また、定期的な健康診断を行うことで早期に発見できる可能性も高くなるでしょう。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
ピルビン酸キナーゼ欠損症は、猫の遺伝性疾患になります。赤血球に含まれるピルビン酸キナーゼという酵素が不足することで十分なエネルギーを生成することができず、赤血球が破壊されるため貧血の症状を起こす病気です。ノルウェージャン・フォレスト・キャットにも発症割合が多いとされている病気です。
ピルビン酸キナーゼ欠損症は、症状が軽度の場合は症状があまりみられないため分からないことも多いかもしれません。激しい運動を避け、激しい遊びなどで無理に運動させることを避ければ十分に通常通りの日常生活を送れるでしょう。貧血症状が重い重度の場合も激しい運動を避ける事が一番の対策になりますが、骨髄移植という手術の選択を選ぶことも可能です。ただし、手術の危険性や費用などを考えるとあまり現実的ではない選択肢となるでしょう。
進行性網膜萎縮
進行性網膜萎縮は、眼球の内側にある光を感じ取る網膜という部分が変形して薄くなってしまい、視力が低下していく病気です。徐々に視力が低下していき、最終的には失明してしまいます。進行性網膜萎縮も遺伝性の疾患と考えられておりノルウェージャン・フォレスト・キャットの発症リスクが高い病気です。ただし、犬では遺伝子の変異が確認されており、遺伝子検査を行うことが可能ですが、猫では稀な病気で遺伝子検査を行うことができず、後天的な要因も考えられると考えられています。
進行性網膜萎縮が後天的な原因であった場合、タウリン(アミノ酸)不足が考えられます。治療法としては、不足しているタウリンを補うことで症状の進行をストップさせる可能性があります。進行性網膜萎縮は、一度変異してしまった網膜を復元することは難しいため予防が肝心となります。後天的な原因で発症させないようタウリンの摂取も意識してあげるとよいでしょう。
猫の腎臓病
腎臓病は高齢の猫の大半が腎臓病になると言われているほど猫にとってはポピュラーな病気です。猫は、少ない水分摂取で生きていけるように腎臓の機能が強い動物です。しかし、腎臓が働きすぎるあまり、平均寿命が長くなっている現代の猫は年を取ると腎臓機能の低下とともに腎臓病になりやすいと考えられています。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットも例外ではなく、腎臓病には気を付ける必要があります。しかし、家猫となったノルウェージャン・フォレスト・キャットは、普段からの食生活で予防する事が可能です。腎臓病を発症しないために、幼少期からきちんとした食事管理、質の良いフードと水を与える事で腎臓病になるリスクを軽減することができます。
猫の治療費は全額飼い主負担
猫には人間のような公的医療保険はないので、治療費は全額飼い主負担となってしまいます。そのため、長期間の通院が必要になったり入院や手術が必要になったりすると、治療費として数万円、数十万円とかかってしまうこともあります。十分な収入・貯蓄があるので問題なく払えるという場合はよいのですが、そうでないのであればペット保険の加入を検討しましょう。
ペット保険に加入していれば、補償の対象となる診療についてその費用を限度額や一定割合の範囲内で補償する保険です。限度額は通院1日あたりいくら、年間いくらまで、手術1回あたりいくらまでというような形で決められていて、補償割合は50%や70%を選択肢として選べることが多いですが、中には80~100%の補償割合を選択することができるものもあります。例えば、補償割合が70%のペット保険に契約していて、治療費として10,000円かかった場合、保険金を請求することで7,000円受け取れるというような形です(免責金額の設定がある場合はこれより少なくなる場合があります)。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットのかかりやすい病気をカバーできるかチェック
ペット保険は保険会社によって補償対象となる病気・ケガの範囲が異なります。保険料だけで飛びつかずに、その保険がノルウェージャン・フレスト・キャットがかかりやすい病気をカバーしているのか確認が必要です。また、ペット保険の多くは通院・入院・手術を対象としていますが、多くの費用がかかる入院・手術のみを対象として保険料を安くしているペット保険もあります。猫種に関わらずなりやすい慢性腎臓病は多くの通院が必要となりますので、入院・手術のみのペット保険を加入する前に通院が多く必要となった時にその費用負担に耐えられるのかよく検討しておきましょう。ノルウェージャン・フォレスト・キャットがかかりやすい病気の中には遺伝性の疾患とされているものもあります。遺伝性の疾患は、場合によっては補償の対象とならない場合もあるため、ペット保険加入時には規約をしっかり確認しておくようにしましょう。
まとめ
ノルウェージャン・フォレスト・キャットの平均寿命は11~14歳と言われています。一般社団法人 ペットフード協会が発表している2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査 結果によると「家の外に出ない」猫の平均寿命は16.02歳とされています。猫全体の平均寿命と比較するとノルウェージャン・フォレスト・キャットの寿命は少し短いようです。
寿命よりも長く、いつまでも元気で健康にいられるようにノルウェージャン・フォレスト・キャットがかかりやすい病気には十分に気を付け、健康的な食事と適度な運動でストレスの少ない環境を作ってあけるようにしましょう。
猫は猫種によってかかりやすい病気が異なります。ノルウェージャン・フォレスト・キャットは遺伝的になりやすいとされている病気があったり、北欧の森の中で暮らしていたという特徴から家猫となったノルウェージャン・フォレスト・キャットが気を付けたい病気などもあります。生活習慣に気を付けていても病気になってしまうことがあります。そんな時、猫には公的医療保険がないので治療費は全額飼い主の負担となってしまいます。何度も通院が必要になったり、入院・手術が必要になったりした場合には数万円、数十万円といった額がかかることもあります。こうした負担に耐えられそうにないのであれば、ペット保険に加入して自己負担額を抑えることを検討しましょう。