犬がいつもよりも水を多く飲んでいるような時にはどんな病気が考えられるのでしょうか?水を飲みすぎていると感じたら病院に連れていくタイミングはいつなのか、予防や対処法などについて紹介します。
目次
犬が1日に飲む水の量はどのくらい?
犬が1日に必要な水分量(飲む水の量)は、運動量や気温などによっても異なりますが、正常な水の摂取量目安を紹介します。(公益社団法人_埼玉県獣医師会より)
体重1kgあたり20~90ml
体重 | 摂取水分量(目安) |
---|---|
3kg | 60~270ml |
5kg | 100~450ml |
8kg | 160~720ml |
10kg | 200~900ml |
13kg | 260~1170ml |
15kg | 300~1350ml |
20kg | 400~1800ml |
犬の体質によって通常時に飲む水の量は個体それぞれ異なります。飼い主は、愛犬が日々どのくらい水を飲んでいるのか観察し正常時に飲む水の量を把握しておきましょう。
一般的に1日に飲む水の量が体重1kgあたり100mlを超える場合は異常と考えられます。飲む水の量が増えれば、当然、排尿の量も増えます。犬の1日の正常な尿量の目安は下記です。
体重1kgあたり20~45ml
体重 | 尿量(目安) |
---|---|
3kg | 60~135ml |
5kg | 100~225ml |
8kg | 160~360ml |
10kg | 200~450ml |
13kg | 260~585ml |
15kg | 300~675ml |
20kg | 400~900ml |
一般的に、排尿の量は1kgあたり60mlを超えたら通常より多いと考えましょう。
このようにたくさん水を飲み、尿量が増える事を多飲・多尿と言います。多飲・多尿の症状がしばらく続く場合には次項で紹介するような病気が考えられます。
アドバイス
多飲・多尿で考えられる主な病気
多飲・多尿の症状が見られたために発見される病気は完治が難しい病気が多いです。愛犬が下記で紹介する病気になってしまわないように日ごろから予防について意識しておくとよいでしょう。
1.糖尿病
多飲・多尿の症状で代表的な病気に糖尿病があります。犬の場合は、7歳をこえたあたりの中高齢での発症が多くオスよりもメスの方が糖尿病になりやすいと言われています。腎臓がインスリンを作る事ができなくなる病気で先天的な要因が大きいとされていますが、7歳ごろからの中高齢での発症が多いことから発症させないように飼い主が犬の健康に日ごろから気を付けてあげる事が予防になります。
多飲・多尿以外に下記の症状がみられる場合は早めに動物病院を受診しましょう。
【その他の主な症状】
- 尿の臭いがいつもと違う
- 体重減少
- 食欲増加
- 食欲不振
- 元気がない
- 脱水
- 嘔吐
- 下痢
- 毛づやが悪くなった
予防法
- 肥満予防と体重管理
- 適度な運動
- ストレスを与えない
- 出産予定のないメス犬は避妊手術をする
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2.クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群の症状にも多飲・多尿があります。クッシング症候群は、副腎(腎臓の側にあるホルモンを分泌する臓器)から分泌されるコルチゾール(肝臓での糖の新生、筋肉でのタンパク質代謝、脂肪組織での脂肪分解などの代謝促進、抗炎症および免疫抑制などの役割を果たしている必要不可欠なホルモンの1つ)の作用が過剰になる事でさまざまな身体的負担を発症する病気です。
犬のクッシング症候群は8歳以上の高齢犬がかかりやすいと言われています。更に、クッシング症候群を発症すると糖尿病になりやすくなったりと合併症が心配な病気でもあります。現在、クッシング症候群の予防方法は見つかっていませんが、定期的な健康診断を行う事で早期発見・早期治療を可能にすることができます。早期治療が可能となれば、症状の緩和や合併症の予防も可能となり、元気で過ごしていける可能性も高くなります。
【その他の主な症状】
- お腹の垂れ
- 皮膚のトラブル(毛が薄くなる、感染症、脱毛など)
- お腹の垂れ(丸みを帯びている)
- 呼吸の乱れ(パンティング)
- 歩行障害(歩きたがらない)など
現在、クッシング症候群の予防法は見つかっていません。
しかし、定期的な健康診断などを行う事で早期発見・早期治療が可能となり、症状の緩和や治療を継続しながら元気に過ごしていける可能性も高くなります。
犬のクッシング症候群とはどんな病気?
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3.慢性腎臓病
腎臓病には慢性的なものと急性的なものがあります。慢性腎臓病は慢性的な腎臓の炎症が原因で、腎臓が数ヶ月から数年かけて徐々に機能低下を起し腎臓の働きが悪くなる病気です。長い期間をかけて徐々に機能低下を起していくため初期症状はほとんどなく、一度悪くなってしまった腎臓はもとに戻る事はありません。
慢性腎臓病も長い時間をかけて病状が悪化していく病気のため、高齢の犬の発症率が高いです。一度悪くなってしまった腎臓を治すことは難しく腎臓病と診断をうければ内服薬や食事制限で一生治療を継続していくことになります。慢性腎臓病は慢性的な腎臓の炎症が原因で起こるため、定期的な健康診断などで腎臓の数値を測り、腎臓の悪化が疑われるようであれば早期に対策を講じることが将来の腎臓病予防に重要です。
【その他の主な症状】
- 体重減少
- 食欲低下
- 元気がない
- 嘔吐
- 便秘
- 口臭がきつい
- 毛づやが悪くなった
慢性腎臓病は慢性的な腎臓への負担による蓄積で腎臓が機能低下していく病気のため、日ごろからの塩分を控えた栄養バランスの取れた食事が重要になります。おやつなどをあげすぎたりせず、愛犬にあった栄養バランスのよい食事と新鮮な水がいつでも飲めるような環境で健康に気を付けた食生活をおくる事が予防になります。
子宮蓄膿症
犬の子宮蓄膿症は、犬の婦人科の代表的な病気で避妊を行っていない中高齢の雌(メス)の犬がかかりやすい病気です。子宮蓄膿症は正常な子宮と比べ子宮内部に膿が貯まるため子宮が何倍もの大きさになってしまい緊急を要する注意が必要な病気です。
犬の子宮は左右に子宮角を持ちY字をしている双角子宮といいます。子宮蓄膿症は、この子宮内に細菌が侵入し増殖してしまうことで発症します。高齢になると免疫力が低下し通常であれば免疫の働きで撃退できる細菌でも免疫力の低下で子宮内に侵入した細菌が増殖してしまう事があり、重度になると死に至ってしまう事もあるため気を付けたい病気です。
【その他の主な症状】
- 食欲低下
- 元気がない
- 嘔吐(吐き気)
- お腹の腫れ
- 陰部の腫れ
- 膿の排出
繁殖を望んでいないのであれば、避妊手術を受ける事が予防になります。避妊手術を受けていない犬も定期的な健康診断で早期発見・早期治療が可能になります。
多飲・多尿で考えられる病気以外の変化
病気以外にも犬がいつもより多量に水をのんでいる時があるかもしれません。お出かけをしたり、いつもより長めの距離の散歩を行ったりなどで喉が渇いているだけという場合もあれば、食事の変化やストレスなど病気以外の理由でも飲む水の量が多くなっている場合があります。
フードの変化
水分の多いウェットフードからドライフードに変更したといったような食事の変化でも犬が水を飲む量が変わります。犬がいつもよりも多く水を飲んでいたら、フードを変えたりしていないか考えてみましょう。
ストレス
犬はストレスがたまっていることが原因で水をたくさん飲んでいる場合があります。犬は人が考える以上に繊細な動物で環境の変化などを敏感に感じ取ります。飼い主との信頼関係の構築が犬の精神状態には重要です。犬もそれぞれ性格が異なりますから、愛犬の性格をよく理解し、ストレスのない環境を作ってあげる事が大切です。
ストレスによる水の飲みすぎから病気に繋がってしまう事もあるため気を付けましょう。
脱水
熱い時期や湿度が高いといった気温の変化でも犬は脱水による症状で水をたくさん飲んでいることがあります。犬は基本的に暑さに弱い生き物です。気温が26度、湿度60%を超えると熱中症の危険性が高まります。気温や湿度が高くなってきた時期には犬が生活しやすい環境に整えてあげましょう。
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水の飲みすぎで起こる危険な病気
水の飲みすぎで病気を引き起こしてしまう事もあります。
水の飲みすぎで起こる「水中毒(低ナトリウム血症)」に注意
犬は水の飲みすぎにより「水中毒」になってしまう事があります。水中毒は水を短期間で大量に摂取することで体内のナトリウムが大量の水によって薄まってしまい低ナトリウム血症になってしまう症状です。水の飲みすぎにより体内の塩分濃度のバランスが崩れる事で低ナトリウム血症(水中毒)になってしまうと神経や筋肉などの様々な細胞の働きが正常に動かなくなります。
重度の場合は命に関わる場合もあるため、元気な愛犬が急に大量の水を摂取しているような場合には注意しましょう。異変があればすぐに動物病院を受診しナトリウム補充などの対策を行う必要があります。
【症状】
- 元気がない
- 歩行困難(ふらつき)
- 痙攣している
- 呼吸困難
- 意識低下
- 昏睡状態
水中毒(低ナトリウム血症)の原因は急に大量の水を摂取したことで起こります。多くは長時間の水遊びをした後などに起こる事が多いです。水遊び中に大量の水も一緒に摂取しているためと考えられます。水遊びが好きな犬は時間を決めて遊ばせるようにしましょう。また、運動した後や遊んだ後、散歩の後などに水を与える場合も量を決めて与える、水と一緒に塩分も与えるなど水中毒にならないように飼い主が気を付けてあげる事が予防になります。
大型犬の水の飲みすぎは「胃捻転」に注意
大型犬だけが起こる病気ではありませんが、特に大型犬の多量の水の摂取の場合に気を付けたいのは「胃捻転」です。大型犬は小型犬や中型犬よりも胸部分が深い構造をしているため、多量の水を一度に接種すると胃捻転を起すリスクが高いです。胃捻転は胃捻転症候群と言い、胃が捻転してしまう症状です。空気が犬の胃から排出されなくなってしまい胃に空気が貯まって膨張することで短時間で死に至ってしまう危険性がある怖い病気です。
多量の水の摂取が影響で胃が捻転してしまわないように水の飲みすぎには注意しましょう。特に大型犬は小型犬や中型犬に比べ一度に水を飲む量も多くなりがちです。犬に水を飲ませる時には量を測ってこまめに与える事も胃捻転リスクを防ぐために良い方法です。
犬の病気とペット保険
犬には人間のような公的医療保険制度がありません。そのため、愛犬が動物病院で治療を受けたり、通院が必要になったりした場合、その治療費や薬代は飼い主の全額自己負担となります。しかし、ペット保険への加入があれば、緊急で動物病院への受診が必要になった場合でも、動物病院にかかった治療費を限度額や一定割合の範囲内で補償してもらう事ができます。
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。ペット保険に加入していれば、一定の費用については保険から補償が受けられるため急なペットの体調不良でも医療費負担を軽減することができます。ペット保険は民間の保険会社が販売しているものなので、加入に条件が設けられています。犬も高齢になると病気になるリスクが高くなります。高年齢になってから病気による医療費に備えたいとペット保険への加入を希望してもペット保険の加入条件が7歳から8歳程度までで設けられていることが多く加入できない場合があります。ですから、犬を家族に迎え入れたら愛犬の生活環境を準備するのと同時にペット保険の加入についても検討するとよいでしょう。