猫に薬を与えるのに苦労したという飼い主も多いと思います。嫌がって飲んでくれなかったり、吐き出したり、工夫して与えても残してしまったりする猫もいます。しかし、ケガや病気の治療で投薬が必要になった時、猫の健康のためにも決まった量をしっかり与える事が重要です。猫に上手に薬を与える方法について紹介します。
目次
猫の薬の種類と飲ませ方
猫の薬にも複数の形状のものが存在します。薬を好んで飲んでくれる猫はなかなかいませんから、薬の形状に合わせて与え方を工夫します。猫が薬を飲んでくれない理由には薬に対する恐怖心や薬の味が苦手であったり、見慣れないものに対する警戒心などがあるためだと思われます。ですから、愛猫の性格や薬に対する反応をみて愛猫にあった与え方を工夫しましょう。
薬の種類
錠剤・カプセル
錠剤は、薬剤を圧縮して固めたものです。カプセルは、粉材や液剤をカプセルに入れたものです。溶け出す時間の調整が必要な薬に多く用いられています。
錠剤を猫に与える時には砕いて与えて問題ありません。猫の場合、粒が大きいと飲みきれません。細かくして与えるとよいでしょう。
粉剤
薬剤を粉状や粒状にしたものです。量の調整がしやすくウェットフードにまざりやすいため錠剤やカプセルより楽に与えられることが多いです。粉剤は、すぐに吸収されるため薬の効果が表れるのが早いです。
液剤(シロップ)
液剤は、精製水やシロップなどの液体に薬剤の成分を溶かして作られた薬です。甘味がついていることが多いので、薬と思わずにそのまま飲んでくれる猫も多く比較的飲ませやすい薬です。味や臭いに敏感な猫だと違和感を感じて飲んでくれない場合もあり、その場合は別の方法で飲ませます。
ワンポイントアドバイス
猫が缶詰などのウェットフードに混ぜた薬を警戒することなく食べてくれることが飼い主にとって楽な方法です。ですが、愛猫に与えるフードをドライフードに限定していたりすると薬を与えなければいけない時に普段と違うフードを食べてくれないといった猫は多いです。猫のフードは固形のドライフードや缶詰やバウチタイプのウェットフード、液体となっている猫用のスープなど多種多様な種類のものが販売されています。子猫のうちから様々な種類のフードやおやつを食べ慣れている猫の方が薬を与える時にも違和感なく薬を口にしてくれる場合が多いです。愛猫にアレルギーなどがない場合はいろんな種類のフードを食べ慣れさせておくと薬を飲ませなくてはならなくなった時も比較的楽に投薬できる可能性が高いです。
薬の与え方
パターン1:毎日の食事(キャットフード)と一緒に与える方法
普段食べている食事に混ぜて与える方法があります。薬を与える時に混ぜる食事は缶詰などのウェットフードに混ぜて食べさせる方法です。
猫は警戒心が強い動物です。毎日の食事と一緒に薬を与える方法では、薬を食事に混ぜているところは見せないようにします。最初から目にしてしまうと何かいつもと違うものが混ざっているという事を察知します。また敏感でもある猫は、毎日食べているフードの味に違和感を感じると次から警戒して食べてくれなくなったりします。薬の入ったフードを食べてくれない場合は、別の方法を試すしかありません。
ウェットフードは、細かくした錠剤や粉剤を与える時に混ぜると便利です。また、その他形状の種類の場合もフードに混ぜて食べてくれればこの方法で問題ありません。
パターン2:投薬補助食品を利用する
いつも与えているウェットフードに混ぜる方法で薬を投与できない場合、投薬補助食品を利用するという方法があります。薬を分からないようにしてくれる投薬補助食品は猫の好みの味に作られています。ペースト状になっているおやつタイプのものに薬を混ぜたり、薬をしっかりくるめるようなボール状になっているものから多くの種類が販売されています。薬の臭いや味に敏感な猫はこのような投薬補助食品を利用して試してみてもよいでしょう。
また、投薬補助食品は、食欲が落ちている猫にも嗜好性が高くなるように工夫されていたり、腎臓病の猫にも優しい作りになっているものもあります。パターン1のような与え方や投薬補助食品を利用した薬の与え方は猫にとってもストレスなく薬を摂取できる方法と言えます。
錠剤、カプセルなどの薬を隠しておやつのようにおいしく食べられるようになっているので便利です。ペースト状の投薬補助食品に細かくした錠剤や粉剤を混ぜて与えることも可能です。
パターン3:飼い主が薬を直接口の中に入れる
警戒心が強くパターン1やパターン2の方法が難しい場合は直接口の中に投薬する方法で薬を飲ませます。猫が嫌がって暴れてしまうような時は、大きなタオルで体を包み顔だけ出すようにして体を支えてくれる人がいると短時間で薬を与える事ができます。
<飲ませ方>
- 猫の頭を上から持ち、上を向かせるようにします。
- 口が開きやすくなるので、開いた口に錠剤やカプセルを喉の奥に置きます。
- 猫の口を閉じ、鼻先を向かせます。
- 口が開かないように固定し、喉元をなでて飲み込ませます。
- 薬が食道に残らないように水を飲ませます。
※水はシリンジやスポイトなどで飲ませるとよいでしょう。
錠剤、カプセルの場合で飼い主が直接口の中に薬を入れて飲ませる場合の方法です。
パターン4:シリンジ(スポイト)を使用して飲ませる
粉剤や液剤のような薬を水に溶いてシリンジで与える方法があります。こちらも嫌がる場合は猫を支える人の協力があるとスムーズです。
<飲ませ方>
- シリンジやスポイトに薬を溶いた液体を入れます。
- 猫の頭を上から持ち、上を向かせるようにします。
- くちびるの端にスポイトやシリンジを差し込み少しずつ飲ませます。
- しっかり飲み込むように上向きのまま少し固定します。
粉剤の薬を水に溶かして液状にしたり、液状の薬を飲ませる時にシリンジやスポイトを利用すると飲ませやすいです。
ワンポイントアドバイス
子猫のうちからパターン3やパターン4の方法で普段のフードを与えてみたりと投薬の練習をしておくと実際に投薬が必要になった時に嫌がる事なく薬を直接飲ませる事ができるようになるでしょう。
よくある猫に薬を飲ませる時の疑問
吐き出してしまった薬は再度与えても大丈夫?
飲んですぐに薬を吐き出してしまうようなケースにおいて、錠剤などの薬の形が残っているものは再度与えても問題ありません。しかし、時間が経過してから吐き出し、薬の形状が残っていないような場合は薬の処方を受けた獣医師に相談しましょう。
シロップタイプは水に混ぜても大丈夫?
少量の水で薄める程度であれば問題ありません。ただし、飲み水に入れてしまうと処方された量をしっかり飲んでいるか、分からなくなってしまうため行わない方がよいでしょう。
粉剤、液剤を水に溶かしてシリンジやスポイトで与える場合は、少量の水で行うとよいでしょう。
薬を飲んだ後に吐いてしまい、下痢もしているけど大丈夫?
薬を飲んで嘔吐や下痢をしている場合は、投薬を中止し薬の処方を受けた獣医師に相談しましょう。薬が愛猫に合っておらず、嘔吐や下痢などを引き起こしているといったことが考えられます。そういった時は別の種類の薬を処方してもらうことができますので状況を獣医師に相談しましょう。
愛猫の医療費はペット保険で備えよう
現代では、猫に限らずペットは家族の一員として飼育されていることが多いです。家族の一員である動物も人と同じくケガをしてしまったり、病気になってしまう事があります。人と同じように動物病院で診察を受け、病気の改善のためや悪化防止、進行を遅らせるためなどに薬が処方されることがあります。
動物は人のような健康保険制度がありません。そのため、ケガや病気になってしまった時の医療費は飼い主の全額自己負担です。長期で通院が必要になったり薬の服用が必要になった時、または手術や入院で高額な医療費を負担しなければいけないようなこともあります。そのような時のペットの医療費負担を軽減することができるのがペット保険です。
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。ペット保険に加入していれば、一定の費用については保険から補償が受けられるため急なペットの体調不良でも医療費負担を軽減することができます。ペット保険は民間の保険会社が販売しているものなので、加入に条件が設けられています。ペット保険の年齢条件では、病気やケガのリスクが高くなる高齢のペットは加入できない場合が多いです。ですから、ペットが若く元気なうちに将来の医療費に備えたペット保険の加入を検討しておくとよいでしょう。
ペット保険は薬代も補償対象になる?
ペット保険では、処方された薬がペット保険の補償の対象となるかどうかは処方された「薬の目的」で決まります。基本的には、治療目的の場合はペット保険の対象となり、フィラリア予防やノミ・ダニ駆除薬などの予防のために処方された薬はペット保険の補償対象外です。
■治療が目的の場合:ペット保険の補償対象
■予防が目的の場合:ペット保険の補償対象外
ペット保険では薬代も補償対象となる?
ペットの治療費は全額飼い主負担となり、薬代も高額になってしまうことがあります。また、1回処方してもらえば終わりではなく、通院のたびに処方してもらわなければならな ...
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まとめ
猫は警戒心が強く投薬が難しい動物です。好んで薬を飲んでくれる猫はあまりいません。もともと警戒心が強い動物ですから薬の投薬が必要になった時のために健康なうちからフードで投薬が必要になった時の訓練をしておくとよいかもしれません。普段から飼い主とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係が厚い程、薬の投与もスムーズにいくでしょう。投薬は獣医師から指示を受けた決まった量をきちんと与える事が大切です。愛猫に合わせてできるだけストレスのない投薬を目指しましょう。
また、病気やケガになってしまう前にペットの医療費が心配だという人はペット保険で備える事も考えておくとよいでしょう。ペット保険は治療が目的の薬代は補償対象となっています。大きな病気やケガだけでなく、通院や薬の投与で治療費がかさむ場合もあります。そのような時にもペット保険の補償があると安心です。
猫の飼育ポイント
・健康な時から普段のフードで飼い主が直接口を開けてフードを飲ませる練習をしておく