人はA型、B型、O型、AB型と4種類の血液型(ABO式)がありますが、犬や猫などの動物にも血液型はあるようです。犬や猫などの飼育スタイルも昔と現代では異なる事に加え、動物医療も進歩し、犬や猫などのペットがケガや病気で人間のような手術を動物病院で受けるような事も増えてきました。手術を行うとなると輸血が必要なこともあります。家族として一緒に暮らすペットのもしもの時のためにペットの血液型やペットの輸血について知っておきましょう。
ペットの血液型
人は、ABO式と呼ばれるA型、B型、O型、AB型と4種類の血液型に分けられます。更に輸血を行う上で重要とされるA型Rh(+)などRh式で細かく分けられますが、「私はA型」という風に4種類の血液型で浸透していると思います。動物の場合はどうなのでしょうか。
犬の場合
犬は人のようなABO式の血液型ではなく、DEA式(Dog Erythrocyte Antigen<犬の赤血球の抗原>の頭文字)という人とは違う分類方法を最もよく用いられています。犬の血液型少し複雑で人のようにはっきり分ける事は難しくいくつかの方法があるようです。
DEA式で犬の血液型は、DEA1.1、DEA1.2といったように分けられます。DEAの後に続く数字は8種類あるとされており、更に抗原を持っているかいないかで(+)(-)に分かれます。8種類はDEAの数であり、実際の血液型は13種類以上あると言われています。また、犬は1匹に対して複数の抗原を持つことができます。それは、人は1人に対して1つの血液型しか存在しませんが、1匹に対して複数の血液型が存在するという事です。
DEAの種類 | |||
---|---|---|---|
DEA1.1 | DEA1.2 | DEA3 | DEA4 |
DEA5 | DEA6 | DEA7 | DEA8 |
犬の血液型はたくさんあるようですが、輸血の際に重要となるのはDEA1.1です。複数ある抗原の中で最も抗原性が強く、DEA1.1の(+)(-)が一致していないと拒否反応を起こして重い副作用を起こす可能性があります。検査してみないと分からないため心配な人は動物病院で検査してもらいましょう。
検査方法
犬の血液検査は動物病院で行う事ができます。動物病院で人と同じように静脈から採血を行い検査キットを使用して血液型を調べます。犬の血液型については今だ全てが明らかになっているわけではなく、研究段階です。ただし、現在の動物医療で判断できる範囲でも愛犬の血液型を知っておくと診療の助けになるため飼い主として知っておいて損はないでしょう。
猫の場合
猫の血液型は、AB式という分類方法で分けられA型、B型、AB型の3種類の血液型があります。猫の血液型は父猫と母猫から受け継いだ血液型遺伝子の組み合わせによって決まります。ただし、猫の場合A型の遺伝子が最も強くその力関係から子猫の血液型が決まります。
子猫の血液型 | 両親の組み合わせ | 割合※ |
---|---|---|
A型 | A型+A型 | 70~90%程度 |
A型+B型 | ||
A型+AB型 | ||
B型 | B型+B型 | 10%未満 |
AB型 | AB型+B型 | 1%以下 |
AB型+AB型 |
※割合は猫全体の割合です。
猫の血液型の割合猫の血液型はA型が最も多く、B型、AB型と続くようです。AB型の猫はごくわずかだと言われているほど見かけません。描種によってもA型しか存在しないのではないかと言われている描種がいたり、猫が暮らしている国や地域によっても血液型の割合に特徴がみられるようです。ちなみに日本に住む猫もほとんどはA型でAB型の猫に出会う事はごく稀なようです。
猫種ごとの血液型の特徴
■「A型」のみだと言われている描種
- アメリカン・ショートヘア
- オリエンタル
- シャム
- トンキニーズ
- ノルウェージャン・フォレスト・キャット
- バーミーズ
- ベンガル
- メインクーン
■「B型」の割合が10%~25%程度、AB型も確認されている描種
- アビニシアン
- スコティッシュ・フォールド
- スフィンクス
- ソマリ
- バーマン
- バーミーズ
- ヒマラヤン
- ペルシャ
- ソマリ
■「B型」の割合が25%以上、AB型も確認されているいる描種
- エキゾチック・ショートヘア
- コーニッシュレックス
- ターキッシュアンゴラ
- ターキッシュバン
- デボンレックス
- ブリティッシュ・ショートヘア
- ラグドール
猫の多くはA型でAB型はごくわずかしかいないようです。ただし、愛猫がごく少数のAB型である可能性はゼロではありません。事前に愛猫の血液型を知っておくと、万が一、急に輸血が必要になった場合に備えることもできるため安心です。
検査方法
血液型を調べる猫血液型判定キットが販売されていますので、採血を行って動物病院で調べてもらうことができます。
ペットの輸血について
犬や猫などのような動物は人間のような血液センターの仕組みが確立されているわけではなく、日本には動物用の血液センターはありません。とはいえ、動物も動物病院で手術を受けるような場合に輸血が必要なこともあります。そのような場合に備え、大きな動物病院では、供血犬や供血猫を飼っていることが多く、ドナー犬やドナー猫として必要な時に血液を使うようにしているようです。また、健康な若い犬や猫の飼い主に呼び掛けて協力してもらったりしている病院もあります。ある動物病院では、同じ血液型の猫や犬を登録し輸血が必要になった時の協力体制が取れるような仕組みを作っていたりと各病院でオリジナルの対応を行っているところもあるようです。
日本獣医生命科学大学付属動物医療センターではホームページ上で犬と猫の献血ドナーの募集を行っています。年に2回の協力となるようですが、このような場所が飼い主同士で家族の一員であるペットの万が一のための仕組みとして全国に拠点があればいいですよね。献血ドナーとして登録した時には、無料で身体検査や血液検査、胸部レントゲン検査など受けられるようです。ペットの健康管理も一緒にできそうです。
万が一、愛犬や愛猫が珍しい血液型だった場合に輸血が必要となると不安ですよね。そういった場合は、かかり付けの動物病院の先生などに相談し、愛犬や愛猫の血液を健康な時に採取して保存しておくという方法もあります。自分の血液であれば拒絶反応などの心配もないため安心です。
ちなみに、アメリカではペット用の血液銀行も数箇所設立されているようです。日本でもそのような環境が整えばいいですね。
犬の場合
犬の場合、血液型が一致していなくても輸血が可能であり、あまり問題にならないと言われています。その理由は、初めて犬が輸血する際には他の型に対する抗体を持っていない場合も多いからです。
そうは言っても、輸血時には血液型のチェックは必要です。犬はDEA1.1(+)の犬にDEA1.1(-)の血液を輸血すると輸血後に体内で拒絶反応を引き起こしてしまう抗原抗体反応が出やすいとされています。最悪、命に関わる状態にまで陥ってしまうケースもあるため事前に血液型をチェックし輸血する血液が問題ないか確認することが拒絶反応へのリスク防止になります。愛犬の血液型を事前に飼い主が知っておくと輸血が必要となるような緊急時にも落ち着いて獣医師に説明できますし、安全な輸血を受けるために役立ちます。犬が輸血が必要となった時には抗原抗体反応を防ぐために交差適合試験という検査も行います。犬も輸血される側と輸血する側の血液が適合するかしっかり検査を行って輸血されているのが現状です。
また、初めての輸血でも過去に他の犬との咬傷経験があったりすると抗体が作られている可能性もあり、輸血前に輸血する血液との適合性を確認することが犬の輸血においてもベストです。
血液型DEA1.1(+)の犬にDEA1.1(-)の血液を輸血するのは危険を伴うという説明をしました。この抗原抗体反応は、犬の出産の場合にも関係します。「父犬がDEA1.1(+)×母犬がDEA1.1(-)」のような交配で産まれた子犬の血液型がDEA1.1(+)だった場合、母犬の初乳を飲む事で溶血反応を起こし死に至ってしまうような場合があります。愛犬の交配を考えている人は注意したい点です。
猫の場合
猫が輸血する場合には同じ血液型を輸血する必要があります。異なった血液を輸血してしまうと拒絶反応を起こします。特にB型の猫が持つ抗A抗体はとても強く、B型の猫にA型の血液を輸血すると強い拒絶反応を起こし命に関わる危険があります。猫の場合は同じ血液型の猫でなければ輸血ができないので、愛猫がB型やAB型の場合は、動物病院の獣医師と相談し輸血が必要になった時のための相談をしておきましょう。血液も長期保存が難しいものですから定期的に自分の猫の血液を採取して取っておくという方法をアドバイスされることもあるかもしれません。
多くの猫がA型という事が分かっていますが、B型やAB型の猫がいないわけではありません。ですから、自分の愛猫の血液型は一度検査しておくとよいでしょう。珍しい血液型だった場合は、獣医師とリスクに備える相談をしておきましょう。
猫の血液型はA型の遺伝子が最も強く顕性(優性)遺伝子です。「母猫B型×父猫A型」のような交配の場合、子猫はA型となり、A型の子猫がB型の母猫の初乳を飲む事で溶血反応を起こし数日で死に至ってしまうケースがあります。愛猫の血液型を事前に把握しておくと、このような組み合わせの交配を防ぐことができます。
ペットの血液型を検査しておくメリット
ペットの血液型を事前に検査しておくメリットはこれまで説明してきた中で説明してきた通りですが、主に下記が大きなメリットととして挙げられます。
人は血液型占いなどで性格を判断する事もありますが、血液型によって性格が変わるといったことはないようです。人の血液型による性格診断も科学的なデータは一切なく動物にもありません。ですから、愛犬や愛猫の血液型を調べて性格を知りたいといったような飼い主もいるかもしれませんが、そのようなことは難しく、愛犬や愛猫の血液型を事前に知っておく現実的なメリットを理解しておくとよいでしょう。
メリット
- 安全な輸血を受ける事ができる
- 珍しい血液型だった場合に事前の備えができる
- 不適切な交配を避け、子犬や子猫を新生児溶血リスクから守る事ができる
- 輸血用の血液を供給できる
ペットとペット保険
ペットを飼う人が増えていることから日本でもペット保険に入る人が増えています。犬や猫といった動物も人間と同じくケガをしてしまったり、病気になってしまったりすることがあります。そのような時には動物病院で治療を受けます。大きな手術が必要となる事もあるでしょう。ペットも人間同様に病院で治療を受けますが、負担となった医療費は飼い主の全額自己負担です。そのような場合に備えるためにペット保険はあります。
ペット保険とは、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や5割や7割などの一定割合の範囲内で補償する保険です。ペットには人間の公的医療保険のような制度はないため、治療にかかった費用は全額自己負担となってしまいます。治療内容によっては思わぬ高額な費用負担となってしまう可能性もあります。ペット保険に加入していれば、一定の費用については保険から補償を受けることができるのです。
愛犬や愛猫が大きなケガや手術を伴う病気になってしまった時には輸血が必要となるような事もあるでしょう。ペット保険に加入しているからと言ってペット保険が愛犬や愛猫の輸血に必要な血液の確保などの心配も補償してくれるわけではありませんが、ペットの医療費にペット保険で備えておく事を検討しておきましょう。医療費に備える事と同時に愛犬や愛猫の血液型について事前に検査しておく事も検討しておきましょう。