ペット保険を取り扱っている会社には少額短期保険会社と損害保険会社の二種類があります。損害保険会社と比べて馴染みの薄い少額短期保険会社ですが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか?また、少額短期保険の安全性は大丈夫なのでしょうか?
少額短期保険とは
少額短期保険とは、2006年4月の改正保険業法施行によって登場した、一定の事業規模の範囲内で少額・短期の保険の引受のみを行う事業です。通称で「ミニ保険」とも呼ばれます。少額・短期の具体的な数字として、保険金額は1被保険者当たり1000万円まで、保険期間は損害保険で2年以内、生命保険や医療保険で1年以内と定められています。保険金額についてはさらに具体的に保険の区分ごとに上限が設けられています。
区分 | 保険金額の上限 |
---|---|
死亡保険 | 300万円 |
医療保険(傷害疾病保険) | 80万円 |
疾病等を原因とする重度障害保険 | 300万円 |
傷害を原因とする特定重度障害保険 | 600万円 |
傷害死亡保険 | 300万円 (調整規定付き傷害死亡保険の場合は、600万円) |
損害保険 | 1000万円 |
低発生率保険 | 1000万円 |
ペット保険のほか、賃貸用の火災保険、葬儀費用向けなど少額の死亡保険などで少額短期保険が販売されています。また、チケットのキャンセル代を補償する保険、弁護士への相談・依頼費用を補償する保険、スマホなどのモバイル端末が故障したときの修理費用を補償する保険などユニークな少額短期保険もあります。
少額短期保険と損害保険の違い
少額短期保険と損害保険の主な違いについて以下の表にまとめました。
少額短期保険 | 損害保険 | |
---|---|---|
参入規制 | 財務局による登録制 | 金融庁による免許制 |
最低資本金 | 1000万円 | 10億円 |
事業規模の制約 | 年間収受保険料が50億円以下 | 特になし |
生損保兼営 | 可 | 不可 |
取扱商品の制約 | 少額、短期、掛け捨てに限定 | 特になし |
保険契約者保護 | 保険契約者保護機構の対象外 ※営業保証金の供託制度あり | 保険契約者保護機構の対象 |
資産運用 | 預貯金(外貨建てを除く)、国債、地方債等に限定 | 原則自由 |
少額短期保険は名前の通り、保険金額が少額で保険期間が短期であることが特徴です。それゆえ、免許制ではなく登録制、最低資本金が損害保険の10億円に対して1000万円と新規参入のハードルが下げられています。なお、株式会社アイペットからアイペット損害保険株式会社、ペット&ファミリー少額短期保険株式会社からペット&ファミリー損害保険のように、少額短期保険会社から損害保険会社へと移行することもあります。
少額短期保険の安全性は大丈夫?
少額短期保険は参入ハードルが低く、また、保険契約者保護機構の対象外となっています。少額短期保険の安全性は大丈夫なのでしょうか?
まず、少額短期保険は参入ハードルは低いといっても財務局の登録審査を経て事業を開始しています。また、長期保険の禁止(最長2年まで)、補償金額の上限設定(1被保険者当たり1000万円まで)、保険料運用の規制(預貯金、国債、地方債等に限定)、掛け捨ての保険が基本などの規制措置で経営の安定化と契約者の保護を図っています。その他、保険業法による規制の下で運営を行っていますので過度な心配は不要です。
万が一破綻してしまったという場合においても、少額短期保険会社に義務付けられている供託金の中から補償を受けられます。少額短期保険は保険契約者保護機構の対象外ですが、業務開始時に最低1000万円、その後も前事業年度の年間収受保険料×5%+1000万円の営業保証金を法務局に供託することが義務付けられています。そのため、破綻時の保護が全くないわけではありません。
まとめ
少額短期保険はその名の通り、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額かつ保険期間が短期の保険の引受のみを行うことができる事業です。ペット保険のほかに、賃貸用の火災保険や葬儀費用目的などの少額の死亡保険などが販売されています。損害保険会社と比べて参入ハードルは低いですが、様々な規制の下で経営の安定化と契約者の保護を図っています。万が一破綻してしまったときにも少額短期保険会社に義務付けられている供託金の中から補償を受けられます。少額短期という名前をしていますが、過度の心配をする必要はありません。