ペットの治療費は全額飼い主負担となり、薬代も高額になってしまうことがあります。また、1回処方してもらえば終わりではなく、通院のたびに処方してもらわなければならないこともあります。こうした薬代がペット保険で補償を受けられれば助かるのですが、実際のところ補償対象となるのでしょうか?
補償対象となるかは薬の目的による
処方された薬がペット保険の補償対象となるかならないかは薬の目的によります。薬といっても病気を治療するためのものと病気を予防するためのものがありますが、治療目的の場合はペット保険の補償対象となり、予防目的の場合は補償の対象とはなりません。ペット保険は病気やケガの治療を受けた場合の費用について補償を受けることができるものなので、ワクチン接種やフィラリア予防薬、ダニ・ノミの駆虫薬など健康なペットが予防のために行うものの費用は補償対象とならないのです(駆虫薬を傷病の治療として使う場合は対象となります)。
また、継続的な治療で飼い主だけが動物病院に行って薬をもらうというようなケースでは治療目的の薬であっても補償対象とならないケースがあります。多くの場合、保険の対象のペットを動物病院に通わせていないということで通院には当たらず補償対象外となるのですが、一部のペット保険では飼い主のみが来院した場合も補償の対象となる場合もあります。どのような対応となるのかは保険会社によりますので、契約中あるいは契約予定の保険会社に確認してみるとよいでしょう。
ペット保険の補償対象とならない主なもの
ペット保険で何が補償の対象とならないのか主なものを紹介します。予防のためのもの以外には何があるのでしょうか。なお、契約する保険会社によって異なる部分もありますので、詳細については各保険会社の約款等をご確認ください。
既往症・先天性異常等 | 保険期間が始まる前からかかっていた病気やケガ、保険期間が始まる前にすでに獣医師の診断により発見されていた先天性異常 |
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ワクチン等の予防接種により予防できる病気 | 犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症、犬パラインフルエンザ感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型感染症、狂犬病、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ感染症、フィラリア感染症、猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫白血病ウイルス感染症 ※病気の発症日が予防措置の有効期間内である場合や獣医師の判断により予防措置を講じることができなかったと認められる場合は除く |
病気・ケガに当たらないもの | 妊娠・出産にかかわる費用、去勢・避妊手術等、乳歯遺残、臍ヘルニア、そけいヘルニア、歯石取り、歯切り、爪切り、耳掃除、肛門腺しぼり、断耳、断尾など ※ほかの傷病の治療の手段としてこれらの処置、これらに対する処置を行った場合は除く |
予防に関する費用 | 予防目的の際の初診料、再診料、予防のためのワクチン接種費用、フィラリア・ノミ・ダニ等の駆虫薬および薬剤投与等の処置に要する費用など |
検査費用 | 健康診断費用等、健康体に施す検査費用など |
健康食品・医薬部外品 | 動物病院で処方される療法食、獣医師が処方する医薬品以外のもの |
代替医療 | 中国医学(鍼灸は除く)、インド医学、ハーブ療法、アロマセラピー、ホメオパシー、温泉療法、酸素療法など |
治療費以外の費用 | シャンプー剤・イヤークリーナー等(治療の一環として動物病院で使用されるものは除く)、時間外診療費および往診加算料、ペットホテルおよび預かり料、散歩料、入浴費用、文書料、安楽死、遺体処置、マイクロチップの埋め込み費用など |
自然災害によるもの | 自身または噴火、これらによる津波、風水害等の自然災害によって被った傷病 |
保険契約者・被保険者の行為によるもの | 保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によって被った傷病など |
薬代がいくらかは動物病院次第
薬代がいくらかかるのかは実は動物病院次第なところがあります。人間の場合は保険の対象となる薬の価格は厚生労働省によってきめられていますが、動物の治療は自由診療なので各動物病院が自由に価格を設定することができます。そのため、同じ薬が動物病院Aでは1錠100円、動物病院Bでは1錠120円、動物病院Cでは1錠150円というように動物病院によって価格が異なることもあるのです。ちなみに人間が使うのと同じ薬を処方されることもありますが、薬価が公的に決められているのは人間に対して使う場合です。動物に対して使う場合は価格の決めはありません。
しかし、自分が通う動物病院の診療費が高いのか安いのか知りたいという気持ちもあると思います。そうした方は日本獣医師会の「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査(平成27年度)」を参考にしてみてください。個別の薬の代金についての調査ではありませんが、動物病院で行う各診療の料金がいくらなのか料金の分布や中央値を知ることができます。ただし、地代などは考慮されていないのでその点は注意してください。
まとめ
薬が治療目的のものであればペット保険の対象となりますが、予防目的の場合はペット保険の対象にはなりません。また、予防目的のもの以外でも既往症や治療費以外の費用、保険制度上病気・ケガに当たらないものなどではペット保険の補償対象となりません。どのような場合に補償対象となるのか、あるいはならないのかは保険会社によって異なる部分もありますので、詳しくは契約中または契約予定の保険会社に確認してみてください。