飼い猫の平均寿命は年々延びており2020年の調査では15.66歳です(一般社団法人 ペットフード協会_令和3年全国犬猫飼育実態調査より)。完全室内飼いの飼い猫と外にも行き来が可能な飼育スタイルで飼われている猫を比較すると外に出る猫は交通事故や病気のリスクが高く完全室内飼いの猫より平均寿命は短い傾向にあります。また、猫の寿命は病気などの要因も大きく影響します。猫の病気予防には適正な体重で健康的な体型を保つことが重要なポイントになります。愛猫が健康で幸せな生活を長く維持できるように猫の適正な体重は何キロくらいなのか確認しておきましょう。
猫の適正体重
犬はチワワのような小型犬とゴールデンレトリバーのような大型犬を比べても大きく体重が異なるように体格が異なる犬種によって平均体重も大きく幅があります。一方、猫は犬程大きな体重差が猫種によって異なるわけではなくその幅はあまり大きくありません。特定の品種以外にもミックス(雑種)や保護猫なども含めると猫の一般的な平均体重は3.5kg~4.5kg程度です。とはいえ、猫にも猫種によって小型・中型・大型の猫がおり、その猫種によって平均体重は異なります。性別や個体差でも異なるためあくまでも目安とし肉付きなどから愛猫のボディコンディションをチェックし理想的な体型を維持することが重要です。
代表的な猫種ごとの平均体重
代表的な猫種ごとの平均体重を紹介します。下記は一般財団法人ペットフード協会令和2年全国犬猫飼育実態調査の表(p.55)に記載のある飼育頭数が多い純血の猫種(※)と代表的な猫種の一般的な平均体重を紹介します。紹介する平均体重は成猫の場合です。
猫種 | 特徴 | 平均体重 | |
---|---|---|---|
アビニシアン(※) | 小型 スリムな体型 | オス | 3~4kg |
メス | 3~5kg | ||
アメリカン・カール | 小型 細身だが骨格が太くがっちり体型 | オス | 2.5~4.5kg |
メス | 2.5~3.5kg | ||
アメリカン・ショートヘアー(※) | 中型 30~40cm程度の大きさ | オス | 4~6kg |
メス | 3~5kg | ||
エキゾチック・ショートヘアー | 中型 筋肉質で体つきがしっかりしている | オス | 4~7kg |
メス | 3.1~5.5kg | ||
サイベリアン | 大型 しっかりとした骨格、たくましい筋肉、適度な脂肪 | オス | 7~12kg |
メス | 6~10kg | ||
シャム(※) | 中型 25~27㎝程度で一般的な猫の大きさ | オス | 3~4kg |
メス | 2~4kg | ||
シンガプーラ | 小型(純血種の中で一番小さい) 華奢で筋肉質な体つきで運動能力が高い | オス | 2.5~3kg |
メス | 2kg~3kg | ||
スコティッシュ・フォールド(※) | 中型 比較的運動量が少なくおとなしい猫のため太りやすい | オス | 3~6kg |
メス | 3~5kg | ||
ソマリ | 小型 35~45㎝程度の大きさと一般的な猫より小さめ | オス | 3~5kg |
メス | 2.5~4kg | ||
ノルウェージャン・フォレスト・キャット(※) | 大型 40㎝程度の大きさでしっかりとした骨格 | オス | 4.5~7kg |
メス | 3.5~5.5kg | ||
ヒマラヤン | 中型 短頭種の猫で運動量が少なくずんぐり体型 | オス | 3~5.5kg |
メス | 3~5kg | ||
ブリティッシュ・ショートヘアー | 大型 40~50㎝程度の大きさで強い脚と広い胸を持ち強靭な体格 | オス | 4~8kg |
メス | 3~6kg | ||
ペルシャ(チンチラ)(※) | 中型 胴や脚、尻尾などが短めでずんぐり体型 | オス | 3~5.5kg |
メス | 3~5kg | ||
ベンガル | 大型 野性的で運動量が多くすらっとしなやかなボディライン | オス | 5~8kg |
メス | 4~6kg | ||
ボンベイ | 中型 バランスの良い筋肉質な体つき | オス | 4~5.5kg |
メス | 3~4kg | ||
マンチカン(※) | 中型 特徴的な短い脚は筋肉が発達しており頑丈でがっちり体型 | オス | 3~5kg |
メス | 2~4kg | ||
ミヌエット | 小型 丸みがある体つきで短足、首は太く筋肉質 | オス | 3~4kg |
メス | 2~3kg | ||
メイン・クーン(※) | 大型 成長期が長くギネス記録にも載ったことがあるほど大きな猫 | オス | 6~8kg |
メス | 4~6kg | ||
ラガマフィン | 大型 幅広で丸みのある頭部、全体的に丸みを帯びたボディでラグドールに似ている | オス | 6.5~9kg |
メス | 4.5~7kg | ||
ラグドール | 大型 長めのボディで骨格が太くしっかりとした体形で大型の猫 | オス | 5~7kg |
メス | 4~5kg | ||
ロシアンブルー(※) | 小型 筋肉質でスリムなボディライン、手足が長くスタイルが良い | オス | 4~5.5kg |
メス | 2.5~4kg |
愛猫のボディコンディショニングチェック
愛猫が健康的な体型で健やかな一生を送れるように飼い主が適正な体重管理のための食事分量に注意する必要があります。猫は適正体重の15~20%を上回ると肥満と言わています。肥満は心臓や関節に余分な負担をかけるだけではなく、糖尿病や高血圧などの病気の原因にもなります。痩せすぎも病気に対する抵抗力を低下させてしまったり、体力がなくケガをしやすかったりするため肥満防止のために食事量を少なくすればいいというわけではありません。適正な体重を維持できるような適正な食事量が重要になります。
太りやすい猫の特徴
猫それぞれの個体によって猫種、性別、年齢、飼育環境など猫の体重に影響を与える要素は多岐に渡ります。その猫に合ったベストな体型を維持できるように飼い主が管理してあげることが猫が幸せで豊かに暮らしていける環境になります。どのような猫が太りやすいのか、太りやすいと言われている代表例を紹介します。
避妊・去勢手術を受けた猫
避妊や去勢手術を受けた猫は活動量が減るため消費エネルギーが減ります。そのため、避妊・去勢を受けた猫は太りやすいです。避妊・去勢後の食事は専用のキャットフードなども多く販売されていますので適切なキャットフードを選んであげるようにしましょう。
フードを好きな時に自由に食べられる環境にいる猫
置きエサスタイルでエサが無くなれば継ぎ足しするなどフードを自由に食べられる環境で飼育されている猫は一日にどれだけエサを食べたか分からなくなりカロリーオーバーで肥満になるリスクが高いです。
運動や遊びが制限される環境で飼育されている猫
一日中ケージの中にいるなど運動が制限される環境で飼育されている猫は活動量が少ないため肥満のリスクが高くなります。毎日十分な遊びの時間を設けるなど適度な運動が必要になります。
中高齢期を迎えた猫
7歳を超えたあたりから猫も中高齢期を迎えます。活動レベルがこれまでより下がり太りやすくなるため食事量には注意しましょう。
猫のボディコンディションスコア
猫のボディコンディションスコア(BCS)は見た目と触れた状態から体型を評価します。肉付きから判断する9段階の評価方法と5段階の評価方法がありますが自宅で愛猫のボディコンディションをチェックするには5段階評価が分かりやすいので5段階の評価方法を紹介します。飼い主の日々のチェックは重要ですが定期的に獣医師の診断も行ってもらうとよいでしょう。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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やせすぎ | やせ気味 | 理想体重 | 太り気味 | 太りすぎ | |
体脂肪(%) | ≦5 | 6~14 | 15~24 | 25~34 | 35≦ |
肋骨 | 脂肪で覆われておらず、目で見て肋骨と分かる | 薄い脂肪で覆われている程度で触れなくても肋骨が分かる | 肋骨は触れると分かるが見た目には分からない | 肋骨に触れることが難しい | 肋骨、背骨が厚い脂肪で覆われている |
腰 | 腰が深くくびれている | 腰のくびれが最少 | 肋骨の後ろにくびれが分かり腹部に吊り上がりがある | 腹部の吊り上がりがやや丸くなっている | 腰のくびれは見られない |
体型 | 脂肪がなく骨の突起も見た目で分かる | 脂肪がほぼなく痩せていると感じる | 脇部にひだがあり、全体的に薄い脂肪で覆われている | 脂肪が厚く脇部のひだが垂れ下がっている | 厚い脂肪で覆われており、脇部のひだが目立つ |
体重の測り方
愛猫の自宅での定期的な体重測定は人間用の体重計で測る事ができます。自宅でも定期的な体重測定を行い愛猫の適正な体重管理を行ってあげましょう。猫も人間同様に太るよりも痩せる方が難しいです。肥満気味な猫のダイエットは猫のストレスにもなりますし、猫はなぜ食事量が減ったのか、痩せなければならないのかということを理解することはできません。太らないように適正な体重を維持し続けることが大切です。
- 飼い主が猫を抱っこして体重計に乗って重さを測る
- 飼い主だけが体重計に乗って自分の体重を測る
- 猫を抱っこして計った体重から自分の体重を引いて猫の体重を計算
肥満が原因でかかりやすい病気
肥満は病気の原因になることもあり、肥満が原因で起こる病気だけでなく、さまざまな健康上のリスクを抱えることとなります。健康だけでなく生活の質、身体機能に悪影響となりますので適正体重を維持し肥満予防に努めることが重要です。
肥満はさまざまな病気の原因となることがありますが、肥満が原因でかかりやすい病気の一部を紹介します。どれも異変に気付きにくい病気ばかりですから愛猫が太り気味だという場合は定期的な健康診断を心掛けてあげましょう。また、ダイエットも考えてあげるとよいでしょう。
脂肪肝・肝硬変 | 過剰な脂肪が肝細胞の内部まで浸透し肝細胞が脂肪に置き換わってしまう病気です。 |
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心筋症 | 過剰な脂肪は心臓に負担をかけます。心筋症は心不全の症状が出現する怖い病気です。 |
糖尿病 | 猫はインスリンでの血糖コントロールが難しいため多くの猫はインスリンを必要としてから数年で亡くなる猫エイズより怖い病気です。 |
呼吸器疾患 | 過剰な脂肪が肺活動に負担をかけることで呼吸器へ悪影響を及ぼすリスクがあります。 |
椎間板ヘルニア | 過剰な脂肪は背骨への負担も増加し椎間板ヘルニアのリスクが高くなります。 |
膀胱炎・尿結石 | 肥満により活動量が減りトイレに行く回数も減るなどの行動の変化から膀胱炎や尿結石のリスクが高くなります。 |
猫の医療費にも備えておこう
愛猫が家族となってから健やかで豊かな生涯をおくれるように適正な体重を心掛けてあげることは健康面において重要なことです。人に飼われる猫は、飼い主の適正な体重管理が猫のウェルビーイング(身体的・健康的・社会的に良好な状態)にとって不可欠です。猫種、性別、年齢、飼育環境などによって猫の体重は個体差があり一概に猫の体重が何キロであれば理想的な体型なのかという事をはっきりと言えません。しかし、愛猫が寿命で亡くなる日まで健康で病気などとは無縁の生涯を送れるように平均体重やコンディションスコアなどを確認しながら日々の適正体重の維持、体調管理に気を使ってあげましょう。
それでも、猫も生きている動物ですから病気やケガを負ってしまう事はあります。猫には猫のかかりやすい病気もあり、思わぬケガをしてしまう場合もあります。そのような時にペットが動物病院で診察を受ける治療費についてペットは人のような健康保険制度がないため全額飼い主の自己負担となることを理解しておかなければいけません。手術や長期入院が必要となり高額な医療費がかかってしまう場合もあります。そこで、そのようなリスクに備えるためにはペット保険に加入しておくという方法があります。
ペット保険は、ペットが病気やケガで治療を受けた場合にかかった費用を限度額や一定割合の範囲で補償する保険です。ペット保険に加入していれば、一定の費用については保険から補償が受けられるため急なペットの体調不良でも医療費負担を軽減することができます。猫も家族の一員ですからケガや病気になってしまったらどのように対応するかという事を考えておきましょう。その上で、日々の健康管理をしっかり行う事が愛猫と健康的で安心できる日々を送る秘訣となるでしょう。