感染症の予防のために猫もワクチン接種が必要です。子猫は母猫から母乳を通して抗体を受け継ぎます。子猫でもワクチン接種は必要なのでしょうか?完全室内飼育の予定で子猫を迎い入れた場合のワクチン接種は必要でしょうか。また、ワクチン接種のタイミングや種類について紹介します。
目次
子猫は2~3回のワクチン接種が重要
子猫は生後数週間の間は、母猫から母乳を通して抗体をもらうことにより病気に対する抵抗力を得ます。母猫の抗体を引き継ぐことを移行抗体と言います。
移行抗体は、生後2~4か月でなくなってしまうため、病気に対する抵抗力は弱まってしまいます。子猫は十分な母乳を飲んで急激に成長し、活発に活動するようになります。移行抗体がなくなってしまうと自分の免疫力で病気に対抗していかなければいけませんが、活発に活動し始めると、行動の範囲も広くなり触れるものも増えていきます。移行抗体がなくなる生後50日~60日頃が特に感染症に感染するリスクが高くなってしまう時期となります。そのため、子猫を病気から守るためにもワクチン接種を行ってあげる必要があります。
また、猫がかかる感染症の中には人にも伝染する病気があります。猫と一緒に暮らす家族を守るためにも猫へのワクチン接種は重要です。
移行抗体(母猫から受け継ぐ抗体)は、生後2~4か月でなくなってしまう
室内飼育の子猫もワクチン接種を!
室内飼いの子猫であっても、外からウイルスが持ち込まれることによる感染のリスクがあります。飼い主が外出した際には、感染症やウイルス、細菌が家に持ち込まれてしまう可能性は少なくありません。その他にも子猫が外に出てしまった時に外のウイルスに感染してしまうことや他の猫と接触する事で病気を移されてしまう心配もあります。そのような心配を無くすためにも抗体が切れないように接種する必要があります。
子猫へのワクチン接種タイミング
ほとんどの子猫は、生後8週目頃(生後2か月)までには離乳します。母猫の母乳から引き継いだ移行抗体は、生後2~4か月でなくなっていくため、抗体が切れないようにワクチン接種を行ってあげる必要があります。
1回目のワクチン
一般的に1回目のワクチン接種は生後6~8週頃に行います。
ワクチン接種時に移行抗体が残っていると子猫自身でワクチン接種による抗体をつくる力の邪魔をしてしまいます。移行抗体がどれくらいあるのか獣医師と相談してワクチン接種のスケジュールを組みます。
2~3回目のワクチン
1回目のワクチン接種から3~4週間の間隔で2、3回目のワクチン接種を行います。
ワクチン接種を繰り返していくことで子猫自身が体内で抗体を作るようになっていきます。子猫によって移行抗体の有無が異なり接種回数などにも違いが生じますが、大体3~4週間の間隔を目安と考えておきましょう。
定期接種
成猫になってからも年に1回の定期ワクチン接種で感染症を予防しましょう。
猫の生活環境によって接種のタイミングは獣医師と相談になりますが、一般的には年に1回のワクチン接種を受けている猫が多いようです。
副作用に注意
ワクチンの接種は感染症予防に効果的ですが、副作用(副反応)のリスクについて注意しておく必要があります。ワクチンによるアレルギーを起こしてしまい軽い発熱や体を痒がったり、顔が腫れるなどの症状が見られる場合があります。一番怖いのは、重度のアナフィラキシーショックです。全身の血圧が低下し、意識を失ってしまうこともあります。このような重篤な副反応はワクチン接種後15分~30分以内に起きると言われています。緊急治療が必要になるためワクチン接種後しばらくは動物病院内にとどまり問題ないか様子を見るようにしましょう。
ワクチン接種の種類
猫のワクチンの種類は、対象ウイルスの数により識別されています。混合ワクチンは製造しているメーカーによって何種のものを取り扱っているか異なります。更に、各動物病院によってもどのメーカーのワクチンを採用しているかは異なります。猫の混合ワクチン接種で多いのは「3種」と「5種」です。
ワクチンの接種は、混合されているワクチンの数が多いほど体への負担は大きくなり明日。「3種」の混合ワクチンは伝染力が極めて強い急性感染症を予防します。子猫は成猫に比べまだ体も小さく成長段階のため初回のワクチン接種で「5種」の混合ワクチンを選択することは少ないです。
猫の混合ワクチンを販売しているメーカー(ゾエティス)の製品より紹介します。
感染症 | 特徴 | 3種 | 5種 |
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猫ウイルス性鼻気管炎 | 猫のヘルペスウイルスで、感染猫のくしゃみ、分泌液などから感染します。猫風邪と呼ばれています。 感染すると3~4日経過くらいから元気がなくなりくしゃみ、鼻水、軽度の発熱などの風邪によく似た症状が見られます。結膜炎や角膜炎が見られたり、症状が深刻になると死亡する場合もあります。 | ● | ● |
猫カリシウイルス感染症 | 猫カリシウイルスに感染している猫の排泄物などから感染します。 くしゃみ、鼻水、軽度の発熱、食欲不振など風邪によく似た症状がみられます。猫風邪と呼ばれる感染症です。更に、口の中や下に潰瘍ができると痛みでよだれが多くなり口臭が気になるようになります。肺炎や跛行が見られる場合もありますが、一般的には数日で回復します。 | ● | ● |
猫汎白血球減少症 | 猫パルボウイルスに感染することで発症する病気です。 発熱、下痢、嘔吐などの消化不良を起こします。子猫の場合であれば1日で死亡してしまったり、成猫も重篤になると死に至る事があります。 | ● | ● |
猫白血病ウイルス感染症 | 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染することで発症します。 初期には、発熱、元気消失、リンパ節の腫れ、貧血などが見られます。症状が1週間~数週間続き、その後回復する猫もいますが、完全な回復に至らなければ体内にウイルスが潜伏し続け、数年後に腫瘍性疾患を患ってしまう事もあります。 | ● | |
クラミドフィラ・ フェリス感染症 | 猫に結膜炎を引き起こす細菌で1歳未満の猫に多く見られます。猫同士の接触により感染します。感染すると結膜炎を発症します。 | ● |
リスクに応じてワクチン接種を検討したい感染症
子猫を保護した場合や生活環境などで獣医師と相談して接種するワクチンを選択しましょう。
感染症 | 特徴 |
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ボルデテラ症 | 猫の常在菌であるボルデテラ・ブロンヒゼプティカ菌が原因で発症する病気です。猫の免疫力の低下、他の病気との併発などで発症につながると考えられています。発熱、くしゃみ、鼻水などの症状を発症し、他の生猫に感染しても症状が出ないこともありますが、子猫が感染すると肺炎に発展し死に至ることもあります。 |
猫クラミジア感染症 | 猫が細菌のひとつであるクラミジアに感染すると鼻炎の症状や結膜炎の症状を発症します。猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスと並び猫風邪と呼ばれる1つです。生まれて間もない子猫が感染すると重度の肺炎になってしまうことがあります。 |
狂犬病 | 狂犬病はすべての哺乳類が感染する病気です。猫の発症事例も報告されています。 |
猫のワクチン接種とペット保険
ペットの医療費は完全に飼い主の自己負担です。将来、ペットの病気やケガで必要になるかもしれない医療費に備えて加入するペット保険は、加入条件が設けられているため、高齢のペットや持病があると加入し辛いという特徴があります。そのため、家族に迎えた子猫の時期にペット保険に加入をしたという人や加入を検討するという人は多いです。
ペット保険はペットが病気やケガをしてしまい動物病院での治療が必要になった時に、その医療費を限度額や一定割合の範囲内で補償する保険です。ですから、病気の予防のために行うワクチン接種は補償対象外です。その他、去勢・避妊手術費用、健康診断費用なども補償対象外で飼い主の自己負担になります。ですから、ペット保険に加入する前に子猫の感染症予防で摂取するワクチン代などは補償対象にならないことを理解しておきましょう。
注意しなければいけないのは、予防に関する費用がペット保険の補償対象外だからといってワクチン接種を行っていなかったことにより予防できる疾病にかかってしまった場合もその疾病に関する治療費はペット保険の補償対象外とされている点です。ワクチン接種などにより予防できる病気はペット保険の加入があってもその治療費は補償対象外とされていることがほとんどですので注意しましょう。愛猫のためにも事前に予防できる病気はワクチン接種をきちんと行い予防してあげる事が飼い主の責任です。
予防可能なため補償対象外となる主な病気
- 猫汎白血球減少症
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫白血病ウイルス感染症
子猫が感染すると死に至ってしまうような感染症も多いです。室内飼育の子猫であっても移行抗体がなくなる頃は、感染リスクが高くなるためワクチン接種の重要性が高いです。獣医師と相談の上、適切なワクチン接種を行ってあげましょう。
ペットの治療費にはペット保険で備える
ワクチン接種代などの予防費用やワクチン接種などを行う事により予防できる病気にかかってしまった時の医療費はペット保険で補償してもらう事はできませんが、ペットもペット保険で補償対象外となる病気だけでなくさまざまなケガや病気をしてしまう可能性があります。子猫の時期や高齢期ではケガや病気で医療費が嵩んでしまうリスクも高いです。
猫には人間のような公的医療保険はないので、ケガや病気による治療費は全額飼い主負担です。動物病院への長期間の通院が必要になったり入院や手術が必要になったりすると、治療費として数万円、数十万円とかかってしまうこともあります。ペット保険には加入条件が設けられており、年齢制限や病歴のあるペットは加入が難しくなってしまいます。ペット保険の加入はペットが若く健康なうちに検討しましょう。子猫を家族に迎い入れた時には、ペット保険加入の必要性について家族と相談するとよいでしょう。