犬も高齢になると認知症(高齢性認知機能不全)を発症する犬がいます。現代の犬は人間同様に高齢化が進み、平均寿命が延びています。原因ははっきりとわかっていませんが、日本犬は洋犬よりも認知症になりやすいことが分かっており、認知症になりやすい犬種に日本犬の代表である柴犬があげられることも多いです。犬の認知症とはどのような病気なのでしょうか。どんな犬もいずれは年老いて老犬となります。老化によって足腰が弱くなり、筋力の低下、認知機能が低下していきますが、愛犬が少しでも長く活発で元気な姿でいられるように犬の認知症予防方法について紹介します。
目次
犬の認知症の症状
犬の認知症の症状としてあげられる多くは、「トイレの失敗が増えた」「無駄吠えをするようになった」というものです。犬も認知症になります。犬の認知症は老化による脳神経細胞が衰え、それによって認知機能が低下していくことで起こります。さまざまな行動障害がみられるようになるため、それらの症状を総称して認知症(高齢性認知機能不全)と呼ばれています。
では、どのような行動障害がみられるようになるのか紹介します。
認知症の行動障害
犬の認知症の行動障害には、4つの特徴があげられます。
1-見当識障害
見当識障害とは、今いる場所や環境が分からなくなる症状です。
- いつもの散歩のルートが分からなくなる
- 自分の家が分からなくなる
- 慣れ親しんだ人や犬が分からなくなる
- 狭いところに入りたがる
- 障害物にぶつかるようになる
- こぼしたフードを見つけられない
2-無関心・無気力
人や他の動物に対する接し方や反応が変わってきます。これまでしていたことをしなくなったり、反応が鈍くなったりといった物事に興味がなくなり、無関心・無気力な状態となり寝てばかりいるようになります。また、無意味な行動をするようにもなります。目的なく同じ場所を歩き回る旋回行動が始まると認知症の症状が進行している状態です。
- 家族の帰宅を喜ばなくなった
- 撫でられても喜ばない
- 散歩に行きたがらなくなった
- 名前を呼んでも反応が鈍くなる
- 子供や同居の動物に攻撃的になった
- 同じ場所を行ったり来たりする
- あてもなくうろつき、歩き回る
3-睡眠時間と行動時間の変化
昼夜逆転するような生活になります。昼間の睡眠時間が増え、夜間は起きているようになり、これまでしなかった夜の夜鳴きが増えることも認知症の特徴の一つです。
- 昼間の睡眠時間が増え、夜間は起きているようになる
- 夜間の夜鳴きが増える
- 夜間に家の中を徘徊するようになる
4-トイレの失敗
認知症を発症すると家庭の中でのトイレを失敗することが増えます。学習能力と記憶力の低下、記憶の喪失により日常生活に支障が出てくるようになります。
- 決められたトイレの場所が分からなくなる
- トイレが我慢できなくなる
- 室内でトイレの粗相が増える
老化による認知症で排泄の失敗が増えてきたような場合には、おむつの使用をおすすめします。トイレの失敗で漏らしてしまうと後処理が大変ですし臭いも気になります。おむつを上手に活用するとよいでしょう。
認知症は何歳から始まる?
10歳を超えるあたりから認知症を発症する犬は増え始め、13歳くらいで急増している傾向がありあす。それぞれの犬種の平均的な寿命にもよりますが、12歳~17歳くらいまでの発症が多いです。ただし、全ての老犬が認知症になるというわけではありません。生涯、認知症とは無縁で寿命を全うする犬だっています。
認知症になりやすい年齢
12歳~17歳
認知症になりやすい犬種
- 柴犬
- 秋田犬
- 甲斐犬
- 紀州犬
- 北海道犬
- 日本犬とのミックス犬 など
日本犬が認知症を発症しやすい理由には、食生活が関係していると考えられています。日本は漁場に恵まれた国土で古くから魚を多く食べる文化の中で人々は暮らしてきました。日本犬も人と共に暮らす中で魚を多く摂取して暮らしてきたと考えられています。魚に含まれるEPAやDHAといった栄養素は脳神経細胞の働きをよくする効果があるとされています。しかし、そのような日本犬も肉類が中心のドッグフードを与える近代的な食生活に変わったことが日本犬に認知症が多い理由だという説があるのです。日本犬の食生活の変化を考えると洋犬にはあまり見られない犬の認知症が日本犬に多いのはそういった食生活の変化が関係していると考える説があることも理解できます。
日本犬が認知症になりやすい犬種であることは間違いありませんが、洋犬が認知症を発症しないわけではありません。日本犬に比べ発症例は少ないですが、洋犬でもシニアになると認知症を発症する心配はあります。愛犬が高齢期になると認知症を発症しないようにライフスタイルに気を付けてあげましょう。
認知症の原因は何?
上記で日本犬に認知症が多い理由について少し触れましたが、「認知症」はなぜ起こるのか?について紹介します。
犬の認知症はいわいる人でいうアルツハイマー型認知症になります。脳にアミロイドβやタウタンパクという異常なタンパク質がたまって神経細胞が損傷され、脳が委縮していくために起こります。人のアルツハイマー型の認知症では、アミロイドβやタウタンパクという異常なタンパク質の増加はこれまでのライフスタイルが影響することが大きいとされています。犬の認知症も人のアルツハイマー型の認知症と同じ病理学的変化がみられるということですから、同じような原理なのでしょう。
現在のところ、認知症は人間でも根本的な治療が確立されておらず、発症や症状を抑えるためにできることを行うという治療になります。人ですら根本的な治療法が分かっておらず、発症させないという予防の重要性がうたわれているところですから、犬も同様に認知症にならないように脳神経細胞の衰えを遅らせる生活が重要になります。
老化の予防法
健康的な食事
健康的なバランスのよい食事を与えることは重要ですが、シニア期の犬のフード選びには、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などがたくさん含まれたフードを与えるようにしましょう。抗酸化作用や抗炎症作用のある成分が含まれたサプリメントで補ったりすることも効果的です。認知力や記憶力などの向上が期待できます。
認知症を発症した犬への治療約としては、神経伝達物質を増加させるような薬を使用することもあります。
適度な運動
まず、老化予防には適度な運動が欠かせません。筋力維持を図るためにも意欲低下で散歩に行きたがらないようであれば、おやつで誘導するなどして適度な散歩を行ってあげることは大切です。散歩コースを定期的に変えたりすることも刺激になるでしょう。外出が好きな犬であれば、お出かけにも連れて行ってあげましょう。アウトレットモールやキャンプなどペットと一緒にお出かけができる場所も増えています。家の中でも日中の飼い主とのふれあいの時間を増やし、刺激が多い日常生活を送ることで脳の活性化につながり認知症の予防になります。
夜しっかり寝れるように昼間にしっかり活動することも生活のリズムを保つために重要です。規則正しい生活を心掛けることが老化の防止や認知症の予防につながります。
部屋の環境改善
シニア期になると筋力が低下していくのは犬も人も同じです。ケガ防止のために滑りにくい床に変えたり、物にぶつかったりしやすい部屋であれば物をどかしたり、ケガ防止となる部屋作りを工夫しましょう。ケガをしてしまい、動かなくなると筋力の低下も進んでしまい、認知症を発症させたり、症状を悪化させてしまったりする原因にもなってしまいます。
陽当たりのよい部屋で過ごせる空間も認知症予防に効果的です。陽のあたる窓の近くで外の様子を眺めたり、日中になるべく起きている環境を作ってあげることが夜にしっかり寝るためにもポイントとなります。
犬の認知症は、小型犬は10歳くらいから、大型犬は8歳くらいから日々の行動の変化を注意深く観察し、予防に気を付けてあげるようにしましょう。
予防開始年齢
・小型犬は10歳くらいから
・大型犬は8歳くらいから
認知症以外の病気の可能性も!?
犬は言葉で人とコミュニケーションをとることができません。シニアと呼ばれる年齢になった愛犬が普段と少し変わった行動をとっていた時に、病気からくる異変であるにもかかわらず、年齢による認知症の症状だと飼い主が判断してしまったことにより病気を見逃してしまうような心配があります。
犬も歳を重ねると病気になりやすくなります。認知症以外にも加齢に伴うさまざまな病気に気を付けてあげる必要があります。例えば、認知症の症状としてよく見られる下記のような変化は病気を患っている可能性もあります。
- 散歩に行きたがらない
認知症の症状でも見られる変化ですが、何か別の病気を患っているために散歩に行くことを拒んでいたり、ケガを負っていたりする場合があります。注意深く観察してあげましょう。 - 視力の低下、耳が遠くなる
認知症の症状で「名前を呼んでも反応が鈍くなった」といった症状が現れますが、高齢により視力が低下し耳が遠くなっているため反応が鈍くなっているの可能性が考えられます。高齢になると犬も白内障やその他の目の病気の心配もあります。高齢の犬は目や耳の細菌やウイルス感染の心配も高くなります。
ペット保険で医療費に備える!
犬には人間のような公的医療保険はないので、治療費は全額飼い主負担となってしまいます。そのため、長期間の通院が必要になったり入院や手術が必要になったりすると、治療費として数万円、数十万円とかかってしまうこともあります。十分な収入・貯蓄があるので問題なく払えるという場合はよいのですが、そうでないのであればペット保険の加入を検討しましょう。
ペット保険は、補償の対象となる診療についてその費用を限度額や一定割合の範囲内で補償してくれます。限度額は通院1日あたりいくら、年間いくらまで、手術1回あたりいくらまでというような形で決められていて、補償割合は50%や70%を選択肢として選べることが多いですが、中には80~100%の補償割合を選択することができるものもあります。
ペット保険は基本的に加入できる年齢に上限があり、多くは8歳~12歳で設定されています。また、人間の保険と同じように、病気になったらペット保険には加入しづらくなったりその部位の補償を受けられなくなったりしてしまいます。犬も高齢になると体の不調が出てくるようになり、動物病院へ受診するケースが増えてきます。認知症となると通院での治療が必要になるため定期的な医療費の心配も発生してくるでしょう。
ペットを飼育している人は家族として一生面倒をみることになりますが、必ず犬も年老いて高齢になります。高齢期に必要となる医療費について愛犬が若く健康なうちにペット保険の必要性について検討しておくようにしましょう。