ペットも人間同様に病気やケガをしてしまう事があります。ペットが病気やケガで動物病院を受診しても治療費は全額飼い主の自己負担です。病気やケガの内容によっては治療費が高額になってしまったり、長期の通院が必要になる事もあるでしょう。そんなペットの治療費に備えてペット保険に契約したにも関わらずペット保険から治療費が支払われなかったとトラブルとなるケースもあるようです。ここではそのようなトラブルを避けるためにペット保険の補償内容がどのようになっているかの基本や保険金が支払われない場合、トラブル防止のチェックポイントを紹介します。
目次
ペット保険で保険金を受け取れるのはどんな時?(基本補償)
ペット保険の補償内容は加入するプランによって違います。基本的な補償範囲となる「通院補償」「入院補償」「手術補償」を組み合わせて選択し、決められた補償割合でかかった医療費の補償を受けます。
①通院費用の補償 | 病気やケガなどにより獣医師の診察を受けた場合の診療費用・処置費・処方薬代など ※薬の処方代は、治療が目的の場合に補償対象となります。 |
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②入院費用の補償 | 病気やケガなどにより入院にかかった医療費用 |
③手術費用の補償 | 病気やケガで手術をしたときにかかった医療費用 |
医療費は補償割合で自己負担額が発生する!(補償割合)
ペット保険は、「通院補償」「入院補償」「手術補償」の基本補償から必要な補償の組み合わせを選択します。更に補償の対象となる治療費のうち何%を保険金として受け取り、何%を自己負担で支払うかというペット保険で補償を受ける割合を決めます。ペット保険では、この補償割合について確認不足である事があり治療費が支払われないと勘違いをしてトラブルとなるケースがありますのでペット保険加入時にしっかり確認し納得しておく事が大切です。
補償割合の計算例
治療費 | 補償割合 | 保険金 | 自己負担 | 保険料 |
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1万円 | 50% | 5,000円 | 5,000円 | 安い |
70% | 7,000円 | 3,000円 | ↑↓ | |
100% | 10,000円 | 0円 | 高い |
補償割合が高いほど受け取れる保険金は大きくなりますが、保険料も高くなってしまう点には注意が必要です。
支払限度額、免責金額があるとどうなる?(限度額、免責金額)
ペット保険には、通院や入院1日あたりに支払われる保険金や手術1回あたりに支払われる保険金、年間の合計の保険金に限度額が設定されていることが多くあります。
限度額が設定されている場合の医療費自己負担額例
治療費 | 補償割合 | 限度額 | 保険金 | 自己負担 |
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入院:3万円×10日 手術:50万円×1回 | 50% | 50万円/年 (1日・1回あたりの制限なし) | 合計:40万円 入院:1.5万円×10日 手術:25万円 | 40万円 |
70% | 入院:2万円/日 手術:10万円/回 | 合計:30万円 入院:2万円×10日 手術:10万円 | 50万円 | |
100% | 入院:1.2万円/日 手術:9万円/回 | 合計:21万円 入院:1.2万円×10日 手術:9万円 | 59万円 |
補償割合が大きくなるほど自己負担額が大きくなるような例となっていますが、補償割合が大きければ常に大きな保険金が支払われるというわけではないようです。表のように補償割合が大きくても入院や手術をした時の限度額の設定によって自己負担額は変わってくることが分かります。ペット保険を選ぶ際には限度額の確認も重要です。
また、免責金額の設定がある場合もあります。免責金額は、その設定された金額の分は自己負担しなければいけません。免責金額が設定されていれば、かかった医療費から設定された免責金額を差し引いて保険金の補償割合が計算されることになります。免責金額が5,000円で設定されている場合において、医療費が5,000円以下であれば保険金は支払われず、医療費が15,000円となったケースを例にしても(15,000円-5,000円)×補償割合のように計算されます(保険会社によって計算方法が異なる場合があります)。免責金額が設定されている場合、保険料が安いという特徴がありますが「保険金が支払われなかった、減らされた」と勘違いがないように補償内容を理解してペット保険を選択する必要があります。
ペット保険で支払われない主な費用
ペット保険で補償対象外となっている主な費用を紹介します。契約する保険会社によって異なる部分もあるため、詳細については各保険会社の約款などを確認しておくようにしましょう。動物病院で処置を受け発生する費用であってもペット保険では補償対象外となるものがあります。後に「保険金が支払われなかった」と勘違いの後悔をしないように確認しておきましょう。
既往症・先天性異常等 | 保険期間が始まる前からかかっていた病気やケガ、保険期間が始まる前にすでに獣医師の診断により発見されていた先天性異常 |
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ワクチン等の予防接種により予防できる病気 | 犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症、犬パラインフルエンザ感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型感染症、狂犬病、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ感染症、フィラリア感染症、猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫白血病ウイルス感染症 ※病気の発症日が予防措置の有効期間内である場合や獣医師の判断により予防措置を講じることができなかったと認められる場合は除く |
病気・ケガに当たらないもの | 妊娠・出産にかかわる費用、去勢・避妊手術等、乳歯遺残、臍ヘルニア、そけいヘルニア、歯石取り、歯切り、爪切り、耳掃除、肛門腺しぼり、断耳、断尾など ※ほかの傷病の治療の手段としてこれらの処置、これらに対する処置を行った場合は除く |
予防に関する費用 | 予防目的の際の初診料、再診料、予防のためのワクチン接種費用、フィラリア・ノミ・ダニ等の駆虫薬および薬剤投与等の処置に要する費用など |
検査費用 | 健康診断費用等、健康体に施す検査費用など |
健康食品・医薬部外品 | 動物病院で処方される療法食、獣医師が処方する医薬品以外のもの |
代替医療 | 中国医学(鍼灸は除く)、インド医学、ハーブ療法、アロマセラピー、ホメオパシー、温泉療法、酸素療法など |
治療費以外の費用 | シャンプー剤・イヤークリーナー等(治療の一環として動物病院で使用されるものは除く)、時間外診療費および往診加算料、ペットホテルおよび預かり料、散歩料、入浴費用、文書料、安楽死、遺体処置、マイクロチップの埋め込み費用など |
自然災害によるもの | 自身または噴火、これらによる津波、風水害等の自然災害によって被った傷病 |
保険契約者・被保険者の行為によるもの | 保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によって被った傷病など |
待機期間中の病気は治療費が支払われない?
ペット保険には待機期間が設けられており、ペットが待機期間中に病気になり治療を受けても治療費が支払われません。ペット保険の待機期間とは、病気をしても保険会社から保険金が支払われない、契約が開始してからの所定の期間のことを言います。この期間はペット保険契約前にかかった病気の潜伏期間を考慮し設定されています。待機期間は多くの場合契約から30日間と定められています。がんの場合は、諸検査に時間がかかることもありより長く120日間となっていることもあります。ケガについては待機期間なしに補償を受けられるケースが多いようです。この待機期間中に病気となってしまい医療費の補償を受けられず「保険金が支払われなかった」とトラブルになる事があります。待機期間について知っておきましょう。加入するペット保険の待機期間の設定はどのようになっているか、ペット保険加入前に確認しておく必要があります。
待機期間中にかかった病気は、待機期間が経過してから病院に行こう、と考える人も出てくると思いますが、待機期間中にかかった病気はその病気について待機期間終了後に病院に行っても医療費は補償対象外です。当然、ペット保険に加入前にかかっていた病気についても同様に、その治療については補償対象外となります。ペット保険加入には告知義務がありますのでペットの傷病歴や健康状態は正確に告知する必要があります。告知義務違反だと判断された場合には、保険金が支払われない恐れがありますので、誤解やトラブルを防止するためにもペットの情報は正確に告知しなければいけません。
ペット保険がいつまで更新できるかもチェックポイント
ペット保険は加入に年齢制限が設けられていることが多く1年更新で契約を更新していくことがほとんどです。ペットが若いときから契約しているペット保険でも更新できる年齢に上限があるペット保険も存在します。契約前に何歳まで継続可能か確認しておくことも高齢になったペットがペット保険の加入継続ができないといったトラブルを軽減できます。また、終身継続可能となっていても更新のたびに審査が必要なペット保険も存在します。健康状態が悪化していれば補償に条件がついたり、継続できないといったこともあるようです。後々のトラブルを防止するためにも加入を検討しているペット保険の補償内容は細かく確認しておくようにしましょう。疑問点などがある場合は保険会社に確認するとよいでしょう。
ペット保険が「支払われなかった!」トラブルを避けるために
これまで説明してきたように、ペット保険は将来必要となるかもしれないペットにかかる医療費を補填するために備えておく保険ですが、動物病院で支払う費用を全額補償してくれるものではありません。加入するペット保険の補償内容によって補償となる割合、補償とならない病気、補償されない期間など決められています。大切なペットのために契約するペット保険なので飼い主はペット保険の補償内容をしっかり理解しペットの医療費に備えましょう。トラブル防止策としてペット保険加入前にチェックしておくポイントについて紹介します。
ペット保険に加入する時にチェックするポイント
- ペット保険の補償割合を確認する
- ペット保険の限度額や免責金額
- ペット保険で補償対象外となる医療費等
- 待期期間がいつまでで設定されているか
- ペット保険の年齢制限といつまで更新できるか
ペットの健康状態と飼い主の経済状況に合わせたペット保険を選ぼう
ペット保険は、ペットが将来、病気やケガで必要になるかもしれない医療費に備えて加入しておく保険です。そのため、ペット保険に加入する時には健康な状態である事がベストです。ペットの種類によって一般的に言われる平均寿命やかかりやすい病気は異なるので自宅で飼っているペットがかかりやすいであろう病気や健康状態を事前に把握し将来のリスクを考えた上でペット保険のプランを選択することが大切です。
ただし、ペット保険に加入していてもペットにかかる医療費を全額補てんすることはできません。ペットの医療費に備えた現金はいくらか貯蓄で用意しておく必要があります。窓口清算ができない保険会社の場合は一度自分で全額治療費を支払う必要があるためなおさらです。ペット保険は掛け捨ての保険になるので、ペットがずっと健康であればその分保険料は手元から消えるだけという事を考えると貯蓄で十分賄えるという人もいるでしょう。可愛がっているペットの医療費に備えた保険ですが、全額補償となるわけではないので、補償内容を確認し保険料と家計の経済状況に合わせた自己負担分のバランスを考え選択するとよいでしょう。
まとめ
ペットは家族の一員ですが、人のような健康保険制度はありません。そのため飼い主がペットの健康維持のためのケアや病気やケガをした時の医療ケアについての責任があります。病気やケガで動物病院を受診した時の医療費は全額自己負担です。そのようなペットの医療費を軽減するために加入するペット保険ですが補償内容をしっかり理解して契約しなければ勘違いによるトラブルが発生しかねません。「ペット保険から支払われると思っていた医療費の保険金が支払われなかった」というトラブルを避けるためにも補償内容については事前にしっかり把握しておきましょう。