愛猫が水をあまり飲まなくて心配…という飼い主さんも多くいるのではないでしょうか。猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、あまりにも飲まないのは病気につながってしまいます。猫が1日にどれくらいの水の量を必要とするのか、水を飲まないときにどうすればよいのか紹介します。
目次
一日のどれくらいの水分量が必要?
猫が一日に必要な水の量は体重によって変わりますが、簡易的な目安としては体重1kgあたり50mlほどです。もちろんすべての水を飲み水から取る必要はなく、フードから取る分も含まれています。キャットフードに含まれている水分量は、ドライフードの場合は10%前後、ウェットフードの場合は75%前後です。ウェットフードであれば水分補給しやすいですが、ドライフードであれば水を飲む量についてより意識する必要があります。
水を飲まないとかかりやすい病気
水を飲む量が少ないとかかりやすくなってしまう病気もあります。どのような病気にかかりやすくなるのか代表的なものを紹介します。
尿石症(尿路結石)
尿が体外に排せつされるまでの尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)に結石ができる病気です。膀胱炎や尿道閉塞の原因ともなるので早めの治療が大切です。あまり水を飲まずに濃度が濃い尿が常態化してしまうと膀胱内に結石ができやすくなってしまいます。結石ができると、結石が膀胱や尿道を傷つけるため、排尿時に痛がったり血尿が出たりします。症状が軽い場合は数回の通院で治療できますが、結石が大きくなると尿道が詰まって排尿できなくなり、毒素を体外に出せずに命の危険にかかわることにもなります。
慢性腎臓病
慢性腎臓病とは腎臓の機能が時間をかけて徐々に低下していく病気です。腎臓は血液の老廃物をろ過して尿を作る、水分の再吸収を行う、いくつかのホルモンを分泌するなどの役割を担っています。慢性腎臓病で腎臓の機能が低下するとこうした機能が衰えていき、最終的には機能しなくなります。
猫はもともと砂漠にすむ動物であったために少ない水分で生きられるように腎臓での尿の濃縮率が高く、そのために腎臓に負担がかかりやすく、慢性腎臓病になりやすいといわれています。水分が不足すると、腎臓がさらに濃い尿を作らなければならなくなり、腎臓の負担がより重くなってしまいます。壊れてしまった腎臓は元には戻らないので、適切な栄養摂取や水分摂取と定期的な健康診断が大切です。
水を多く飲んでいると心配な病気も
逆に、愛猫が普通よりも多く水を飲んでいる場合もいくつかの病気を疑う必要があります。慢性腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症、子宮蓄膿症などの病気の症状の1つに水の多飲多尿があります。いつもより多く水を飲んでいる、おしっこの回数が多いと感じたならば、重大な病気の症状かもしれませんので動物病院で診てもらうことをおすすめします。
上手に水を与えるポイント
猫が水を飲んでくれるのに大切なポイントを紹介します。愛猫が水を飲んでくれないという場合には参考にしてみてください。
器を変えてみる
ひげに物が触れると水を飲むのをやめてしまうことがあるので、ひげが当たらないような表面積の大きい器を使うようにしましょう。また、器の材質を変えることによって飲んでくれるようになることもあります。ガラスや陶器、プラスチックなどそれまでに使っていなかった材質のものに変えてみるのもよいかもしれません。多頭飼いをしているという場合では、他の猫が口を付けた器を嫌う場合もあるので、一匹ごとに異なる器を用意するようにしましょう。
設置場所を増やす
水を置く場所によっても水を飲むか否かが変わることがあります。猫がよくいる場所やよく通る場所に水を置くようにして水との接触機会を増やしましょう。また、トイレのそばだと臭いが気になって飲まなくなることもあるので、トイレのそばからは離して水を置くようにしましょう。
食事を工夫する
ドライフードからウェットフードに変更する、ドライフードを水でふやかしてから与えるなど、食事からとる水分量を増やしてみましょう。また、食事を小分けにして回数を増やした方が水を飲む量が増えることもあります。ただし、急に食べなれていないフードに切り替えると吐いてしまったり下痢をしたりする場合もあります。猫の状態を見ながら1~2週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やしていくようにしましょう。また、ウェットフードをメインに食べさせる時には完全栄養食か確認して与えるようにしましょう。
水を工夫する
猫は新鮮な水を好むことが多いので、こまめに新しい水に取り換えてあげるようにしましょう。水を換えるときは器もきれいに洗浄するようにしてください。また、流水を好む場合も多いです。水道の蛇口を少し緩めてぽたぽたと水を垂らした状態で水を飲むか試してみるのもよいでしょう。ほかに、カルキ臭を嫌って飲まないということもあるので、お湯を沸かして冷ます、木炭を入れるなどしてカルキ臭を消したりミネラルウォーター(軟水)を与えたりしてみましょう。ただし、硬水のミネラルウォーターは含まれるミネラルが尿石症の原因ともなるので避けるようにしてください。
それでも飲んでくれないときは?
いろいろ手を尽くしたけれども水を飲んでくれないという場合は動物病院に連れていき、獣医さんに相談しましょう。水分不足は放置しておいてよい問題ではなく、慢性腎臓病などの危険な病気につながることになります。脱水がひどいようであれば点滴を打ってもらえることもあります。家庭で強制的に飲ませることを考えなくてはならない場合は、スポイトや哺乳瓶などでやさしく水を挙げるようにしましょう。
まとめ
猫が一日に必要な水分量の簡易的な目安は体重1kgあたり50mlです。直接水を取る分だけでなく、フードから摂取する水分量も含まれています。取る水分量が少ないと尿石症や慢性腎臓病などの病気のリスクが上がります。器を変える、設置場所を増やす、フードをウェットフードに変えるなど食事からとれる水分量を増やす、水をこまめに変える、水のカルキ臭を消すなどの工夫を凝らして水を飲んでもらえるようにしましょう。また、どうしても飲んでくれない場合は動物病院に相談しましょう。